70話【昨夜の出来事~ロヴァルト伯爵邸~】
◇昨夜の出来事~ロヴァルト伯爵
~昨日の
【
エミリアとアルベールの兄妹は、父アーノルドに呼ばれて
エミリアはソファーに座り、紅茶を飲んでいる。
が、隣に座る兄アルベールは落ち着かない様子だ、ソワソワと小声でエミリアに話しかける。
「お前何やったんだよ……」
またエミリアが何かしでかしたのではないかと
「……何にもしてないけど」
「
俺を巻き込むなと言いたそうに、自分もソワソワしているアルベールはエミリアのおでこを小突く。
「いたっ……知らないよ。私に身に覚えはないけど、兄さんだって呼ばれたんでしょ?
エミリアは父から見えない角度で、アルベールの足を
ブーツのヒールで。
「――いっでぇ!!」
「……どうした。アルベール」
「い、いえっ……なんでもありません、ちょっと虫に食われたようで」
その息子は、
(虫って私のことっ!?)
(他が
二人は、父の目を何度も
「全く、もうそんな時期か……」
ソファーで待機する二人の子の前に座る。そして、テーブルの上に一枚の手紙を置いた。
「父様、これは……?」
エミリアは、置かれた手紙の
つまりこの国、【リフベイン聖王国】の
「王家からの手紙……ですか。これは兄さんに?」
しかし、アーノルドはため息を
「――違うのだよエミリア。その手紙はお前
「エミリアに?」
「――わ、私に……?」
兄妹は口を
何せ思い当たる
「読んでみなさい」
父は兄妹に、手紙を読めと
「失礼します……」
手紙をとったのはアルベール。
アーノルドによって一度破られた開け口から、一枚の手紙を取り出して、読み始める。
「……」
「な、何が書いてあるの?兄さん」
「……」
アルベールは口に出して読んではいない。
目線だけで手紙を読み終えると、無言のままエミリアに渡し、ため息を
父と一緒のタイミングで。
「――な、何よ……もう」
手紙を受け取ったエミリアは、何が何だか分からないままに、声に出して読み始める。
そして、その内容に
「えっと……
長文を読み終え、エミリアは
「えっ!はぁ?……はぁぁぁぁぁっ!?」
自分でも意味が分からずに、
「い、いや……私も何が何だか」
「本当か……?」
兄の
「ほ、本当だよ……ローマリア
「ああ、そうだね。わざわざ王家の
「と、父様……申し訳ありませんが、本当に身に覚えが無いのです、私には」
ちらりと兄を見る。
「俺にもないですね……エミリアも、まるで俺が身に覚えがあるように見るなよ」
父の
しかし、エミリアには本当にわからないのだからどうしようもない。
「仕方が無い……
期日が決められている上、公爵
王家の
ロヴァルト伯爵家は、【
断るようなことをしたら、
「……分かりました、エミリアもいいな。準備しておけよ?」
「……はい」
|
これ以上、父の
「では、失礼します」
「失礼します」
兄妹は父に頭を下げて
パタリと扉を閉じた瞬間、二人して盛大なため息を
「はぁぁぁぁぁ……」
「は~~~~~……」
「お前、本当に心当たりないのか?王族だぞ?」
「ないってば……兄さんこそ、【聖騎士】関連じゃないの?」
「俺には別で届いてるんだよっ!確実にお・ま・え・だ!」
アルベールは数日前、正式に王城で第一王女セルエリスと、第二王女スィーティア、【聖騎士団・団長】と対面している。
副団長のオーデインから、
「……うぅっ」
アルベールはエミリアの
王族などについて心当たりは本当にない。
だが、騎士学校の同窓生リューグネルト・ジャルバンの一件や、エドガーが“召喚”した異世界人の事など、王家に知られたくないことは沢山あるエミリア。
(なんだか不安になってきたよ~……エドぉ、助けて~!)
本来なら今日もエドガーの家に行って、サクラが
まさか王家に
持ち前の元気がそうは見せていなかっただけかもしれない。
「アルベール様、【カルベルルン子爵】がお着きになりましたが」
「――フィルウェインか……どこだ?」
「
「そうか、
アルベールは身を
そんなアルベールを見送るフィルウェインと、いきなり
「カルベルルン子爵は何をしに?」
エミリアはアルベールに頭を下げるフィルウェインに聞く。
「子爵のご
「うん、知ってるけど……」
「ではそういうことですよお嬢様。申し訳ありませんが、失礼しますね」
今は
ぞんざいな
他のメイドに同じ質問をしても、今に
それだけ、今のロヴァルト家はごたごたしていると言う事だ。
「……部屋に戻ろ」
◇
夜の事を考えると
「――な、何やってんの……ナスタージャ」
「ふぁっ!お、お嬢様っ!?どうし――んぐっ!ゲホッゴホッ!!」
突然の
「まったく……何やってるんだか」
どうせサボりだろう確信して、深くは
ナスタージャが座るソファーに近づいて、ナスタージャの背を
いきなりクイズを出されて「どちらが主人でしょう」と聞かれたら、メイド服を着ているのにも
「ず、ずびばぜん……おじょぼざばぁ」
涙目でエミリアに謝るナスタージャの口元には、急いで食べようとしたのだろうアップルパイの
「はは……ほら、いいから
服のポケットからハンカチを出して、ナスタージャの口元を
「……それじゃあ、説明してくれる?」
「は、はぃ」
ナスタージャは正座させられ、ソファーに座るエミリアの腰元を見ながら顔を青くしている。
エミリアは格別怒ってはいない。ただ夜のことがあるので、少し気分が良くないだけだ。
人によっては怒っているとも言うが。
「朝からお嬢様を探していたのですが……中々見つからず、お嬢様のお部屋で待っていればいずれ来るかなぁ……なんて」
「なのにあんたは、今日のおやつのはずのアップルパイを、ガッツリつまみ食いしていたわけね」
空になったバスケットを見てから、エミリアはナスタージャに
「……
土下座に近い
見つけたのがエミリアだったからよかったものの、もし他のメイドに見つかっていたら、確実に首が飛んでいたところだ。
「はぁ……まあいいよ、別に。いつものことだし……」
このエミリアの
何度も失敗しているし、首になりかけたことも多々ある。
その度にエミリアが助けては、
甘いと他のメイドに
だからエミリアはナスタージャを手放さないのだ、本人が
「ほら、泣き止んだら準備手伝って。夜にはここを出るんだから」
「え……とうとう
「なんでよっ」
「だってお嬢様が、出るなんて言うから」
確かに
そして、ナスタージャと一緒に
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