69話【世界観の違い】
◇
ローザとサクヤは、急いで【福音のマリス】へと戻ってきた。
そこで待っていたのは、フラフラと立ち上がってどこかへ行こうとするエドガーと、それを
どこか
ぐらりと
ローザとサクヤが
「
「何をしているの!エドガー!」
「ローザさん……【忍者】ぁ……」
うっすらと涙目で二人を見返すサクラ。
(なるほどね……)
サクラの【心通話】が
ローザの
(この子が混乱すればするほど、【心通話】は使えなくなるわけね……だからあの時もいきなり使えなくなったという事……)
【
今も、エドガーが必死になっている姿に
「大丈夫よ……取り
「――ぐぅっ」
ローザに引っ張られて、あっけなくダウンするエドガー。
「なぁサクラよ……いったい
ダウンするエドガーを心配しつつ、サクヤはサクラに何があったかを聞く。
ローザもサクラを見ている。
「えっと……それは」
言い
すると、フィルウェインが前に出てきて深く
「申し訳ありませんローザ様……説明は私がさせて頂きます」
「……?」
頭を下げるフィルウェインに、ローザは理解を
「分かったわ。でもその前にエドガーをベッドに。そのくらいの
「……はい、かしこまりました」
フィルウェインはエドガーを
「――ダメよ。その身体でどうするつもりなの」
エドガーがここまで必死になっているという事は、だ。
エドガーの大切な関係性を持つ、エミリアかアルベールのどちらかが、何か
ましてや、二人の専属メイドであるナスタージャとフィルウェインがここに来ているのだ、
「ローザ……僕は、僕は……」
苦しそうな顔をして、
(まだ全然回復していないじゃない……私だって、魔力は全然回復していないのに……このタイミングでまた……?)
エドガーの周囲の
「とにかく部屋へ。私とサクヤも話を聞くから、エドガーを落ち着かせてくれる?」
(……それでも、こんなに必死に行動しようとしているのね、エドガー)
「
ローザはフィルウェインへ
「……ふぅ――さてサクラ。一体何があったら、【心通話】が出来なくなるくらい混乱しちゃうのかしら。私もサクヤも、
「い、いや……その、あたし」
振り返るローザは、明らかに
サクラもサクヤも、ローザの
「ロ、ローザ殿……まずは食堂に行かないか?」
フィルウェインが、ナスタージャを
サクヤとサクラは、異様な
そんなビビるサクヤの一言に、ローザは。
「――そうね。お腹も減っているし……食事をしながら話を聞きましょう」
そう言ってローザは、ロビーから移動を開始する。
ローザの怒りを
サクラは
かなりのオーバーアクションのため、わざとらしさが身から出ていた。
(ちょっと【忍者】!わざとらしいって、ローザさんにバ――ひぃっ!)
サクヤの変なリアクションに
移動を開始しようとしていたローザが、ちらりとこちらを見ていることに気づき、ゾッとする。
「――さ、さぁ食堂に行きましょう!あたしもお腹すいてたんですよね~あははっ」
「そう」
ローザは軽く返事をして食堂へと歩いていき、サクラはガックリと肩を落としてため息を
「……はぁぁぁぁ、疲れる」
エドガーの
サクラは、元から誰にでも気を
まだ出会ってからそんなに
別世界の同一人物であるサクヤには、
まだまだ、異世界での生活で
「サ、サクラ……すまぬ、何かしたのだろうな……わたしが」
サクラの
「分かってんなら少しは……はぁ、まあいいや。あんたは気にしなくてもいいよ」
他人に気を回すと、サクヤは自分の実力を出せないと思う。そんな気がして、サクラは
「……な、何か言うのだっ!何か言え~!サクラぁぁ!」
それでも、サクラの前にはローザがいるので、それ以上言葉を出すことはしないサクヤであった。
◇
宿の食堂は、異世界人を
現在ローザ達三人の異世界人は、
サクラがフィルウェインを手伝おうとしたら、「私達には気を
(ま、気にしぃなのバレてるって事よね)
こうしていると、とてもやさぐれているように見えて、普段のいい子っぷりが
「
「――!……ローザさん達にはもう
ローザに言われて
サクラの本来の性格は、他人を気にして自分を出さず、波に
両親にも学校の先生や同級生達にも、自分をさらけ出したことなどない。
それが不思議と、ローザやサクヤ、エドガー、エミリアには自然体で居られている。
のだろうか。
「あ、ローザさんこれ食べます?」
「
サクラから受け取ると、ぱくぱくと食べ始め、たったの二口で食べ終える。
(はやっ!……って言うか八個も食べてこの体型……?おかしくない?)
サクラは、食べても太らない
少しすると、フィルウェインとナスタージャが疲れた様子で食堂に入ってくる。
「お待たせしましたぁ……」
「ずいぶん疲れているようだが……
サクヤがメイド二人の様子を見て、
「申し訳ありません……エドガー様が中々聞き分けてくれなく、少しばかり強行させていただきました。
「――きょ、強行!?一体何をし――」
「かまわないわ、話をしましょうか」
「ローザ殿!?
エドガーが何をされたのか気になって仕方がないサクヤと、エドガーの様子を気にしないローザ。
「メイドさんが大丈夫って言ってるんだし、大丈夫でしょ」
「いや、しかしなぁ……」
「エド君に何かあったら、ローザさんが黙ってないって。でしょ?」
いかにも分かりやすくローザを引き合いに出し、サクラがサクヤを
(……大丈夫ってはっきりとは言ってないけど。ローザさんが
「あの、始めてもよろしいですか……?」
立ち上がって
「す、すまぬ……
サクヤは一言謝ると
まだ気になっているであろうエドガーがいる管理人室の方向を見るが。
方向はあっているが、サクヤが見つめるのは壁なのだが。
まさか見えているのだろうか?
「では説明させていただきますが……私どもも
「ええ」
「……」
(あれ?……わたしは?)
自分がスルーされていることに気づくも、隣に座るサクラからの
「では……
「
「……はい」
「――そう。ごめん……続けて」
フィルウェインの
「はい。
「エミリア殿は……?」
「――
「……へぇ」
「ほほぅ」
「……ぇぇ」
(リアクションうっす!!)
サクラは先ほど聞いたとき、大きな声を上げて
しかし、ローザとサクヤのうっすいリアクションに、心の中で
「ちょっとちょっと二人共っ!エミリアちゃんが結婚だよ!?なんでそんなに
「何がよ。結婚なんて普通よ……?エミリアもエドガーと同じ十七歳でしょう?遅い方だわ」
「そうだなぁ……そう言えばわたしも、
「えぇ~」
(そ、そっか……ローザさんも【忍者】も、時代的に結婚の年齢が早いから……
三人の異世界人は、それぞれ世界観が違う。
サクラの場合結婚出来る年齢が決められているが、《戦国時代》から来たサクヤの時代は、十代前半で結婚など
ローザの場合だって、サクヤとそう変わらないのかもしれない。
「――ん?……おいサクラ、わたしは結婚していないぞっ……
サクラの
「……それで、どうしてエドガーはあんなになっていたのかしら。予想はつくけれど」
ローザはサクヤとサクラを
「――はい、ローザ様が
サクラはそれを聞いた時のエドガーの様子を思い出して、胸を押さえる。
ローザは
サクヤは自分がここに来た成り立ちを思い出しながら、サンドイッチを食べていた。
「空気読みなさいよ、
それぞれがまったく別々の事を
「……お願い
「お、お願いしますぅ!」
フィルウェインの姿を見て、ナスタージャもあわてたように頭を下げる。
「――半日待って。エドガーの回復を
ローザはそれ以上誰にも口を開かせず、エドガーが眠っている
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