60話【異世界でも朝日は同じ】
◇異世界でも朝日は同じ◇
使われていない木箱や
「――この先だっ!」
何段にも重ねられた木箱が行く手を
ダンっ!と着地した場所は、助けを求めたと思われる幼い少女と、黒ずくめのローブを
「――なっ!なんだ貴様っ!」
「ちぃ!
「くそっ、聞いてねぇぞ!」
「大丈夫だ……たかが
ローブの男達は、エミリアごと
「――大丈夫!?」
「……うぅ……あっ」
少女は
「
目的は
エミリアは赤い槍の切っ先をローブの男達に向けて。
「そんな奴らは、私がぶっ
と大見えを切る。が、自分も貴族の
「ちぃっ!構わねぇ……このガキを殺せっ!!」
リーダーとみられる男が、三人の部下に命令する。
全員が同じローブを
だが、動き出しご
フェイントや
「――はぁっ!!」
エミリアは槍を
続けて一番近い男に、
「ぐぇっへ!!」
腹部に強烈な打撃を受けた男は
「……!!」
「――ひっ!?」
意外なほどに弱いローブの男達。
「
「おいっ!次はお前が行けよ!!」
「な、なんでだよ!お前が行けって……」
リーダーの男の命令にも
「――ふっ!」
「へ?――ぎゃぱぁぁぁっ!」
ドスっ!!と男の腹に
「えっ……うおわぁぁぁっ!?」
ドシーンと盛大に転び、計三人の男は気を失う。
「さてと……あとは
エミリアは槍を地面にカツンカツンと鳴らしながら
「ひぃぃっ!こ、殺さないでくれっ!!こ、
誰一人殺してはいないが、まるで自分が大量殺人を
「――うふふっ」
にっこりと笑いながら、男の
「もう大丈夫だよ。怖い人はもういな……い、から……?――ってこっちも居ないしっ!!」
「……ぶ、無事、だよね?」
もしかしてまだ男達の仲間がいて、連れ去てしまったのかとも考えたが。
「ん……?穴?」
積み重ねられた木箱の間に、小さな女の子が通れそうな
「――ああ、ここから逃げたのか……まぁ、そうだよね。逃げるよね普通」
少女が通ったであろう
などと考えながら、
エミリアは明るい日差しを見るように目を細めて、エドガー達を思った。
「さぁてと……帰ろっと。きっとエド達も帰って来てる――はず!……あ~。リューネの事どう説明すればいいんだろ~……」
大切な
◇
~
二人の少女と一人の女性、そして少年が、背中合わせでくたびれている。
もう日は落ちているのにも
「――まったく……本当にこの国の人間の用心のなさと言ったら」
怒っているような
「うむ……見張りが誰も来ぬものなぁ」
サクヤも、だるそうに同意する。
「あたしの
サクラも面倒くさそうに答える。
本来ならばすぐにでも
「エドガー、起きないわね」
「そーですねぇ」
「そうだなぁ」
三人の異世界人も動き出す
ローザとサクヤは魔力と体力が、サクラは精神が
そしてエドガーは、体力と精神、更に魔力、全てをすり減らした結果。
【
そのエドガーを無理矢理起こす様なことはせず、自然に起きるのを静かに見守っていたのだが。
「……
「わたしもだ……」
「うん、あたしも」
三人はもう、何か
「――あ。そろそろ夜が明けるんじゃない?」
サクラが、立ち上がって言う。
「そうね……
ローザもサクラに合わせて立ち上がる。
するとエドガーがサクヤに
「ぬぁっ!サ、サクラ!これはどうすればいいっ!?
突然の出来事に
「あんたねぇ……頭でも
「――ダメよサクラ。それは私の
ローザが何かに反応して、エドガーの腕を自分の肩に回し、立ち上がらせる。
「な、なんですかそれ……」
三人とも体力だけは
「……帰るとしましょう、
と、優しく
「――まったく……」
そんな三人を見ながら。
サクラも歩き出し、眠そうにあくびをしながら【福音のマリス】を目指した。
◇
~宿屋【福音のマリス】~
「た、ただいま~……誰か、いる~?」
そ~っとドアを開け、確認するように声を掛ける。
しかし反応はなく、誰も居ない事に
「ええぇ~……誰も居ないのぉ……?」
エドガー達が
「誰も居ないのか……そっか、もう
エミリアはエドガーの部屋である管理人室、二階のローザ達異世界人の部屋を順に
「――やっぱり居ない……だ、大丈夫……だよね?」
エドガーと合流して様子を見たら帰ってくるものだと思っていた。
あわよくば戦いの
「でも。
念の為に、他の客室も調べると。
「――……メ、メイリンさんっ!大丈夫っ!?……――ほっ。よかった、寝てるだけ見たい……だけど……」
そして、メイリンが眠っているだけと確認したエミリアは、エドガー達を待つ
もう下町の
そわそわしながら、辺りを何度も行ったり来たりし、座ったり立ったりと落ち着きなくしていたが、ブーツを脱ぎ、正座したところで何となく落ち着いたのだが。
「来ないよぉ~」
不安で泣きそうになりながら、エドガー達を待つ。
そして今まさに夜が明けて、太陽が顔をのぞかせたその時。
「……!……っ!?」
「~~!っっ!」
「……。……」
聞こえる声。そしてこちらに歩いてくる影、ひと
「――エドっ!ローザ!サクヤとサクラもっ!!よかった、ホントによかったぁ……」
エミリアは
「あ~エミリア……
ローザが
「え!わっ……ちょっ――エドっ!?どうしたの!?ローザ~!説明してよ!!」
ローザは長椅子に座り「はぁぁぁぁ……」と深いため息を落として、話しかけるなオーラを全開にする。
「……えぇぇぇぇぇ……?」
この
「ご、ごめんエミリアちゃん……ローザさんお腹空きすぎてイライラしてるみたい。エド君は大丈夫。魔力を使い果たして、寝てるだけだってさ」
サクラが説明してくれるが、サクラも眠そうに目を
午前に出かけ夜明けに帰って来たのだ。エミリアもそう言えば朝しか食べていない。
「……」
「なんでサクヤはそんなに目つき悪いの……?怖いって」
無言のままローザの隣に座り、同じく深いため息を
「【忍者】はね、えっと……
「……はぃ?」
何があったかは、もう聞きたくなかった。
「ま、とにかく皆無事だよ……エミリアちゃんもよかった」
「あ、ありがとう~。サクラ~!」
やっと
「わっ!エミリアちゃんってば……苦しいよ――ってエド君の方が苦しそうだよ!?」
エミリアとサクラに
「うあっと……ごめんエド!サクラも……嬉しくてつい……――サクラ?」
サクラは何かに
エミリアは、サクラが見ている方へ向き。
「――ぅう……
と目を細める。
「エミリアちゃん……」
「ん?――なに?」
サクラは
昇ってくる太陽に背を向けると。
「……異世界でもさ――朝日は同じなんだねっ!」
満面の笑顔で笑うサクラの後ろから
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