48話【動き出す蟲毒】
◇動き出す
「……誰だ」
その一言だけで、リューネは手に汗を
【リフベイン聖王国】
【
「お初にお目にかかります、ヴァンガード
「……西の
深々と頭を下げるエリウスに、隣に並ぶリューネは驚く。
一国の
しかしそれ以上に。
「ヴァンガード公爵
そうだ。この人物がこの場にいることの方が、リューネには
死亡説に亡命説、数えたらきりがない程
「……
まるでこの
「――ええ。こちらもその方に言われて、
エリウスは【
ジャラ――ジャララララ、と数十本の
「すまないね……
「いえ、
レイブンは
「――か、
倒れるレイブンに
リューネは、レイブンの身体の
「……君は?」
リューネに支えられたレイブンは、優しい
「わ、私は……リューグネルト・ジャルバンと申します……騎士学校の――い、いえ、何でもありません……すみません」
レイブンから顔を背け、
恐らく
この数日で、恐らく騎士学校側も、リューネが学校にも
一瞬でも騎士であろうとしたそんな自分が、
「……そうか。どうやら巻き込んでしまったようだな」
そのリューネの
「そうだ。君は、俺と来るがいいさ……」
「――えっ?」
意味が解らずに、きょとんとするリューネにエリウスが。
「あら
「いやなに、部下であろうとも、俺の娘にするのは
「――えっ!――えええぇぇぇぇっ!?」
エリウスとレイブンの話についていけないリューネは、ただ混乱するだけだった。
リューネが落ち着くのを待つ
「相変わらず凄い
身体が見る見るうちに
「これもまた、あの人
「なるほど。
「そういう事ですわ。天の加護と言うものは、
聖王国
ここ一年の短い
エリウスがリューネに使わせた【
「あ、あの……エリウス様、
少しだけ冷静になれたリューネは、もしかしたら自分の聞き間違いかも知れないと、二人に
「ああ。先程の通りだ、俺の娘になれ……リューグネルト」
開いた口が
「この方の言う通りになさいリューネ。今後、帝国に行く事を考えても、後ろ盾があるのはいい事だわ。
「――ええ!いや……でも……私は……」
「安心していいわよ。この方なら、弟君も引き取ってくれるわよ。ねぇヴァンガード
エリウスは、本気でリューネを思ってくれている。
「ああ……この国で言っても意味はないが、帝国に渡った
手首をコキコキと鳴らしながら、エリウスを見て確認するレイブンは、
「――ええ、勿論ですわ。同じ
「はははっ。
「構いませんわ。これくらいの遊び心をしなければ、
数年前からここで
「……さてと、
死亡説や亡命説が流れる国の
「いませんでしたわ。この施設の騎士達は手応えがありませんでしたし、事前に撤退していたのでしょう。
「なるほど。現王は隠居気味で、長女のセルエリスが実権を
「そうですわね……この施設の囚人達も、極端に数が少なかったことを考えれば。この施設を破棄しようとしていたのかもしれませんね」
「人を人とは思っていないのさ……この
「……ですが、今はまだこの国に
「ああ、構いませんよ。所で……何人、殺して来たのかな?」
ここに
リューネは覚えていない。そんな
「ざっと230人ですわ。一人も逃していませんが、もしかしたら交代要員がいるかも知れませんし、
ゾッとするリューネ。エリウスに逢ってから、身体が驚きっぱなしだ。
「エ、エリウス様は、倒してきた騎士を数えていたのですか?」
「――ええ、そうよ。
たった少しの間で、231人が死んだ。
それも――全て警備の騎士だ。
だが、レイブンやエリウスの言うことが正しければ、その231人は切り捨てられたことになる。
それが聖王国のやり方なのかと、リューネは背筋を凍らせた。
名のある騎士は居なかったにしても、ほぼ一人で
「さて、傷も
「ええ、そうしましょう……中央の広間にいるはずです。遺体を運びだすと、
と、耳に付けたイヤリングを
(ああ、あれは“魔道具”なのね……だから連絡が取れていたんだ、あの時も……)
リューネは納得する。
「――?……後でリューネ、
「あ、すみません……そんなつもりじゃ」
「いいのよ。初めから渡すつもりでいたし。
「それは助かる」
そんな会話をしつつ、暗い部屋から抜け出した三人。
特にリューネは、進む道に一切の死体がない事に驚くも、それを口にはしなかった。
レディルが運んだのだろう。どうやってかは、おそらく“魔道具”で。としか答えられないが。
「……
外に出たレイブンが、光に目を
すると、外にいた
レディルが、待ちわびていたかのように声を掛けて来た。
「おせーよ……エリウス。――そいつが【
つまらなそうに、ジャーキーを口に
が、そのレディルが座るのは――遺体、死体の山だ。
そのてっぺんに
周りは血の
「……ぅぅ」
「――慣れなさいリューネ、今後はもっと増えるのよ」
騎士を目指していたとはいえ、こんな死体の数を目にしたこともなければ、つい先ほどまで人を斬った事など無かったリューネ。
今もまだ手に
口を手で押さえるリューネ。
しかし、レディルがニヤニヤとしているのに気づき、意地で気を落ち着かせてエリウスの隣に戻る。
「……コレは大したものだな、これだけの遺体。それに
全く平気そうなレイブンは、山のてっぺんでジャーキーを
「へっ……よっ!……と。……
勢い良く死体の山から飛び降り、レディルが
岩から崩れ落ちたかのように不格好な形をして、所々から見える鉄の様な一部が、ただの《石》ではないと認識できる。
しかしその
「こんだけの死体があれば、ゾンビでだろうと
「……ふむ。なるほど、
レイブンは、
「この国の【召喚師】さまの家からくすね出したのさ……そこの嬢ちゃんがな」
リューネは一瞬
「あなたに言われたからでしょう、レディルさん……私が
「へぇへぇ……わーったよ……はっ。言うじゃねぇか、あんだけ
顔を赤くして、
「やめなさいレディル……リューネも、ごめんなさいね」
「――エ、エリウス様が謝らないでくださいっ!」
リューネは頭を下げるエリウスに
レディルは変わらず「けっ」と
「……なんにせよ、これで時間が
「――話が早くて助かりますわ。【
「――あい、よっ!!」
レディルは手に持った黒い《石》。【タイラント・リザード】の《化石》を、死体の山に突き入れた。
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