第2話






 生まれて初めての告白。

 返事はまだ聞いてない。




 これから僕は、どうやって貴女と接していけばいいんでしょうか。




 ◆◇


「……」


 いつも通り学校から帰宅してきた僕は、着替えもしないで携帯を片手に物凄く悩んでいた。

 純さんに告白してから二日が経った。その間、僕らはメールのやり取りを一切していない。

 僕としては、今まで通り……ってのは無理な話か。でも普通に話しがしたい。そう思ってはいるんだけど、やっぱり虫がよすぎるか。

 僕は純さんに告白したんだ。男として意識してほしくて、気持ちを伝えた。


「……」


 純さん、今度の大会見に来てくれるかな。

 どうせなら、大会が終わってから告白すれば良かった。タイミング悪かったかな。


「でも、でもでも……!」


 しょうがないんだ。だって、ずっと好きだったんだ。

 純さんのこと知れて、一緒に話が出来て嬉しくて、抑えられなかったんだ。

 彼女のこと、好きだから。大好きだから。


「よし」


 僕は純さんにメールした。

 今度の大会、必ず来てくださいって。そして、返事を聞かせてください。

 純さんは僕のこと知り合ったばかりで何も知らないとは思うけど、僕はずっと前から純さんのことが好きです。

 そのことを、伝えた。


「……ふう」


 メールを送り、僕はベッドに倒れ込んだ。

 緊張した。まだ手が震えてる。

 あのメール読んで、純さんはなんて思うかな。ずっと前から知ってました、とか気持ち悪いって思うかな。

 でも、本当のことだ。嘘偽りない、僕の気持ちを伝えた。これでフラれても悔いはない。悲しいけど、後悔はない。


 枕に顔を埋めて、深く息を吐くと、ドアの向こうから姉の声が聞こえた。


「ゆーいー、ご飯よー」

「はーい!」


 もう八時前か。

 僕は部屋着に着替えてリビングに降りた。今日の夕飯はカレーかな。良い匂いがする。


「唯、もうすぐ大会ね。どう? 調子は」

「うん……」

「何よ、体調でも悪いの?」

「そうじゃないけど……」


 姉さんがお皿にカレーを盛りながら訊いてきた。

 体調が悪いとかじゃない。気持ちの問題だ。純さんがもし、行かないって返事をしたらどうしようって。そうなったら、僕はきっと、負けちゃうかもしれない。

 純さんのせいにする訳じゃない。これは僕の心の問題。僕の心は、そこまで強くない。


「……」

「ねぇ、唯」

「なに?」

「もしかして、純に関係ある?」

「え!?」


 思わず声を張り上げてしまった。

 な、なんで純さんの名前が出てくるの? なんで?

 姉さんはクスクスと笑いながら、テーブルにカレーやスープを並べていった。


「だって、今日の純も様子がおかしかったもん。部活中も心ここに在らずって感じだったし」

「え……」

「それにね、唯君はどうしてますかって何度も聞くのよ」

「僕のこと……?」

「あんたたち、いつの間にそんな関係になったの?」

「そ、そんな関係って……僕たちは別に……」


 純さん、僕のこと考えててくれてるんだ。

 気にしてくれてるんだ。

 なんか、ちょっと嬉しいかも。


「まぁ、当人同士のことだから口は挟まないけどさ」

「……」

「上手くやんなさいよ?」

「……うん」


 もう一度、ちゃんと伝えよう。

 純さんもちゃんと考えてくれてるんだ。それなのに僕が迷っていたらダメだ。しっかりしなくちゃ。



 夕飯を終えて部屋に戻ると、携帯にメールが届いていた。

 差出人は、純さん。




 見に行くよって、一言書かれたメール。




 僕は、それだけで嬉しかった。





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