case19.小早川瀬奈
第1話
ただ、触れてほしいだけなのに。
どうして、貴方は私を恋人として見てくれないの?
私の、何がいけないんだろう。
◇◆◇
「お兄ちゃん。お兄ちゃんってば!」
「……んー」
「早く起きないと、熱したフライパンで顔焼くわよ」
「起きます!!」
全く。毎日毎日こうして起こさないと全然目を覚まさないんだから。
兄、湊は上半身を起こしてまだ眠そうな目を擦る。
私はフライパンを下ろし、溜め息を吐いた。あ、勿論フライパンは熱してないよ。そんな熱いの持ってたら私が危ないじゃん。
「……お前、どんどん起こし方酷くなってないか?」
「お兄ちゃんが一回で起きてくれないのが悪いんでしょう」
「くそー……昔はあんなに可愛かったのに……」
「……本当に顔焼いてあげようか?」
ムカついた私は冷めたフライパンで兄の顔を殴ろうと手を振りかざした。まぁ、兄も殴られまいと私の腕を掴んで抵抗してくる訳ですけど。
「早くしないと、本当に遅刻しちゃうよ?」
その声に、私は後ろを向いた。
そこに居たのは、クスクスと笑いながら私たちを見てる、眼鏡を掛けた男の人。お兄ちゃんの親友、
「りっちゃん、先にご飯食べ始めたよ?」
「あ、本当ですか? すみません、お兄ちゃんが起きてくれなくて……」
「いいよ、気にしなくて」
浩也さんは私の頭を撫でて、ニコッと微笑んでくれた。
優しいな。どっかの寝坊助兄貴とは大違いだわ。
「おい! なんで朝っぱらからお前がいるんだよ!!」
「ああ。おはよう、お兄ちゃん」
「お兄ちゃんじゃねーよ!! いつもんとこで待ってろよ!」
「うるさいな。彼女の家に来るのに理由が必要かい? お義兄さん」
「お義兄さんって呼ぶなあああ!!」
なんか恥ずかしいからそういうやり取りは私がいないところでやってくれないかな。
まぁ、浩也さんは確かに私、
とはいっても、浩也さんとは小学生のときから兄の妹として仲良くしてもらっていた。
そう。親友の妹として接してきた期間が長過ぎたせいなのかしら。私たち、キスもしてないんです。
◆◇◆
朝ごはんを終え、私たちはそれぞれ学校に向かう。
兄たちは高校。私は女子校。愛用の自転車に跨ると、浩也さんが私の頭を撫でてくれる。
「いってらっしゃい、瀬奈ちゃん」
「……いってきます」
優しい。
優しいけど、完全に子ども扱いされてる。私、そういう優しさは嬉しくないんです。もっと恋人らしいことがしたいんんです。
それは、ワガママなんでしょうか?
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