第78話 面倒な女達 1
「は~、やっと終わったか」
30人以上の女奴隷の身体に問題が無いことを確認して奴隷の首輪に自分を新しい主人として登録した。
それは思った以上に時間が掛かる苦行だった。
小学生の頃の、女の子の身体測定をする先生になりたいと思っていた自分に止めておけと言いたい位には面倒くさかった。
おっぱいウオッチも一度で充分だった。
オークション会場でやり切っていたみたいだ。
そして、女達が自分を見る目がこの先に面倒ごとが待っていると教えてくれた。
そうなんだよな、今までに救ってきた奴隷たちはまさに死を覚悟した奴隷達だった。
だから僕は命の恩人で自分の命を僕に捧げるぐらいの勢いでみんな俺に尽くしてくれる。
でも今回買った奴隷達は違う。
オークション会場で売り出されていた帝国に滅ぼされた国の元貴族の奴隷たちも、オークションに出品された帝国の元貴族の奴隷達も、両方とも理不尽に奴隷に落とされて、更には平民の俺に買われたと思っている。
つまり俺は敵だ。
卑しい平民が金に飽かせて貴族だった女達を恐れ多くも買いあさったのだ。
そう思っているだろう。
一応、説明はした。
帝国に滅ぼされた国の元貴族の奴隷たちは売れ残って平民向けの娼館に売り飛ばされるはずだったところを救ったのだと。
帝国の元貴族の奴隷達もリンに請われて救う為にオークションで落札したと。
でも、納得はしていないだろう。
そんな状況でポーションを作るからおっぱいを吸わせろと言って吸わせてくれるだろうか?
まあ、奴隷だから強制的にできるっちゃできるけど。
そんな関係性でちゃんとしたポーションが出来るとも思えない。
それに、そんな形で俺におっぱいを吸われた女達が俺をどう思うか。
考えるだけで憂鬱になる。
「こんこんこん」
部屋のドアを誰かがノックしている。
「誰だ」
「カリンです、ご主人様がおよびという事で参りました」
「ああ、入れ」
「お邪魔します」
遠慮がちにカリンが部屋に入ってくる。
何故呼ばれたか不安なのかな?
「カリン、昨日に続いてで悪いんだがカリンの乳でポーションを作りたいんだが、良いかな」
「は、はい、よろこんで」
俺の言葉でカリンの雰囲気が変わる。
まるで発情期を迎えたように色気を振りまきだす。
こいつはこいつで良く判らないんだよな?
まあ、自分から俺に買ってくれと言ったきたし、妹も一緒に買ってほしいという願いも叶えてやった。
俺に悪い感情は持たないのは判るが、なんで俺に対して発情するんだろう?
今も甲斐甲斐しく俺の服を脱がせている。
うわっ、胸に手を這わせるとか必要ないんだけど。
そして、ズボンのベルトに手を掛けるので慌てて止めた。
「ご主人様、焦らしプレイですか?」
カリンは訳の分からないことを言うと、自分の服を脱ぎだし簡単に全裸になってしまう。
「なあ、カリン、昨日も言ったけど胸を出すだけで良いんだけど」
そんな俺の言葉に返事もせず、カリンは抱き着いてくる。
やっぱり反則だよな。
カリンの豊満な胸が俺の胸で押しつぶされる。
肌と肌が重なる感触に俺は溺れそうになる。
「ご主人様、ご主人様の肌はすべすべで気持ちがいいです」
カリンは胸だけでなく体全体を俺に擦り付ける様に接する。
そして怪しげにカリンの腰から腹が前後に動く。
カリンの目が妖しげき輝きだし、カリンの女が匂い立ち始める。
これは不味いだろう。
俺はなるべく事務的に思える様にカリンの乳首を含む。
「ご主人様、さわって」
そんな俺の気持ちに気づくことも無く、カリンは俺の手を自分の鳩尾へと導く。
これは間接的に子袋に俺の手を触れさせているのか?
そこに俺の手のひらが置かれると、カリンの腹が不規則にくねくねと動き出す
「ご主人様、ご主人様、ご主人様......あああ」
カリンの乳首から魔力が俺の口に溢れ出す。
カリンの腰が跳ねる。
カリンの胸と鳩尾が光る。
俺の手にポーションが現れるが......
なんだよ、媚薬って?
俺は、満足げに俺にもたれ掛かるカリンの吐息を感じながら途方にくれる。
昨日と同じだ。
カリンと作るポーションは昨日も今日も媚薬になってしまった。
これはやはり、女の精神性が出来上がるポーションに影響を与えるからだよな.
だとすると俺を恐れ、みくびり、憎んでいる女達との間でまともなポーションが作れる気がしない。
最悪だね!
「失礼します、お時間です」
リンは俺の部屋に入ってくると、崩れ落ちたように俺に縋り付いているカリンを抱き上げてベッドに放り込む。
そしてカリンのせいで濡れているズボンを嫌そうに見て脱がせ始める。
その後、俺の身体を濡れたタオルで丁寧に拭くと服を着せてくれた。
「オイゲン君、これからルーミス様とのお食事なんですよ。
それなのにこんなマーキングのように匂いを付けられて」
「それはリンがしっかり拭いて落としてくれたんだろう。
ありがとう」
俺は別に情事なんかしていない。
ポーションを作っただけだ。
それにルーミスとも食事をするだけだ。
それなのに二股を隠しているような話の流れになるなんて。
解せんな!
☆☆☆☆☆
「オイゲン様、お待ちしておりました」
流石に上流貴族が使っていた家のダイニングだ。
品の良いテーブルに美しいシャンデリア。
残念ながら調度品は撤去されているがそれでも充分に豪華な空間だ。
そして、俺を迎えるルーミスは美しいドレスを身にまとい、艶のある髪を結いあげて品の良い化粧が施されている。
流石に宝飾品は与えられていないようだ。
開いた胸周りが少し寂しいな。
「ようこそおいでくださいました」
ルーミスはエレガントな仕草と共に俺に挨拶をする。
客を招くホストであれば満点の仕草だ。が、この家もお前も俺の持ち物じゃなかったかな?
この館の女主人のように振る舞うルーミスに俺は少々違和感を感じる。
リンがどうしてもと言うから応じたが、それで余計に勘違いさせたのかもしれないな。
「本日は、リーンバース家で大切なお客様をもてなすときにお出しするメニューで晩餐を用意いたしました。
お楽しみいただければ幸いですわ」
確かに出される料理もワインも大したもので、気が付けば俺は晩餐を楽しんでいる。
「それにしてもオイゲン様は規格外のお方ですね。
人の身には古龍の鱗を手に入れるのは過ぎたるものだと聞いていましたのに」
「まあ、偶然です。
たまたま運が良かった。
そんな話ですよ」
なんだ、古龍の鱗の入手方法が気になるのか。
「まあ、ご謙遜を、古龍の鱗は運が良かったで手に入るような品ではありませんわ」
「そうですか、本当にたまたまなんですよ。古龍が俺の事を気に入ってくれてくれたんです」
「ええっ、古龍とお友達なんですか」
「古龍が人を友達と認めることなど有りませんよ。
何かの気まぐれですかね」
「それでも凄いです、またお会いするのですか」
「いえ、もう会えないと思いますよ。
遠くへ行ってしまったようですから」
「それは残念ですね」
まあ、嘘はついていないよね。
「それで、お話は変わるのですが、実はオイゲン様にご相談したいことがありまして」
「相談ですか」
「ハイ、ですがいきなり相談と言ってもオイゲン様も戸惑われますわよね。
まずは、本日のメインディッシュをお召し上がりくださいませ」
ルーミスはその言葉で立ち上がる。
「メインディッシュは別のお部屋でお召し上がりいただきますわ。
どうぞお越しください」
ルーミスに案内され招き入れられた部屋は香が焚きこめられた寝室だ。
部屋に入るとルーミスがベッドに腰を下ろす。
そして俺を見るルーミスの目には感情は浮かんでいない。
自分の身体をメインディッシュといって男を部屋に招き入れるルーミス。
貴族としての矜持では憤怒ものだろう。
今、ルーミスは一体何を思っているのだろう。
「オイゲン様、わたくしは今日までなぜ生かされていたと思われますか?」
「男に花を散らされるためと聞いているが」
俺のストレートな物言いのせいだろう。
感情が抜け落ちていたルーミスの目にかげりが走る。
「その通りですわ。
オイゲン様、わたくしの花など古龍の鱗には到底及ばない物ですが受け取っていただけますでしょうか」
そうか、随分と古龍の鱗に拘ると思ったんだが、古龍の鱗のせいでルーミス達の価値が暴落したんだっけ。
ルーミスは侍女から花を受け取るとそれをゆったりとした上品な動作で俺に渡す。
その動作だけでこの花が貴重な物に思えてしまうな。
「これは??」
「白百合ですわ。
それはわたくしの心です。
オイゲン様は私の処女を買われましたが処女とは身体だけではありませんのよ。
私は心も含めた処女を貴方に捧げますわ」
「そうか、受胎告知としてでは無いよな」
白百合は受胎告知を象徴する物としても使われるからね。
俺の軽口でルーミスの目に怒りの感情が宿る。
なんだ、感情を露わにすることも出来るのか。
「まあ、お戯れを、私が処女であることはオイゲン様が目でお確かめされていますのに」
「いや、そう言う意味ではないぞ。
ルーミスは処女を散らすと同時に俺の子が欲しいと言いたいのかと思ったんだ」
ギリ、音がすればそんな音だろう。
そう、それだ、ルーミスの憤怒の表情だ。
俺はちゃんと知りたいんだよ。
平民ごときに買い叩かれたルーミスが、その平民をどう思っているのかをね。
平民に自分の子を孕めと言われては怒りで取り繕う余裕も無いのだろう。
頼むから、憤怒に任せて本音を言ってくれよ。
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