第74話氷の女王と店番。そして……
「いらっしゃいませ。ご主人様」
「いらっしゃいませ。旦那様」
ここは男女逆転(ry。
そして今は文化祭1日目後半だ。
前半は遊んでいた雫と黒兎も後半はしっかり店番をしないといけない。
そして今接客中なのだが……。
「黒兎……それ……あっはは」
「久しぶりにあったらこの反応だよ」
「ごめんごめん。あまりにも普通すぎて面白みがないなぁと」
「笑ってるじゃねぇか」
「嘲笑ってるんだよ。あはは」
今黒兎と話しているのは中学時代の黒兎にとって珍しい友達と呼べる人物の吉田竜太だ。
高校では離れてしまったが、数少ない黒兎の中学時代の心の拠り所でもあった。
そんな2人を見て雫は不思議そうに首を傾げる。
そんな雫を見て思わず黒兎が聞く。
「どした?そんな不思議そうな顔して」
雫はまだ不思議そうな顔をして答える。
「いえ、ただ月影くんに聡や陽以外の友達がいるなんて不思議だなぁと。私は夢でも見ているのかしら?」
「なんだよ!失礼な!俺だって友達の1人や2人いるわ!」
「1人か2人の間違いでしょ?」
「間違いじゃねぇよ。いるわ!……たぶん」
「そこで不安になるなんて……。可愛いそうね。私、泣いちゃいそうだわ」
「お前に言われたくねぇよ」
なんだかんだで始まったいつもの感じについていけてない人が1人。
「あのー、黒兎?早く席に案内してくれる?」
竜太が気まずそうに声をかける。
見れば後ろまで並んでいる人がいつになったら席につけるのかと待っている様子がうかがえた。
「し、失礼いたしました。こちらですご主人様」
黒兎は竜太を案内する。
「お待たせいたしました。おかえりなさいませ旦那様」
雫もすぐに接客に戻る。
そう、ここはお店。
やるべき仕事はしっかりしないといけないのだ。
決して、雫とイチャイチャする場所では無い。
「って、誰がイチャイチャしているですって?」
「怖いよ冬矢さん。急に厨房でどうしたの?」
「い、いえ。なんでもないの。ちょっと悪意のある書き方をされたような気がしただけ」
「悪意?書き方?」
「あなたは知らなくていい事よ」
「そ、そうなんだ。」
(冬矢さん変わったなぁ。前まで怖いイメージだったけど……。今はなんだか……、やっぱり急に悪意とか書き方とか、怖い人なのかも……)
厨房で雫といるのは藤山実咲。
クラスメイトで、ちょっと気の弱い女の子だ。
「お待たせしました。こちらカフェオレでございマース。美味しくなぁれ萌え萌えキュン」
黒兎が竜太の席にカフェオレを届ける。
「うわぁー。不味くなってそう」
「おい」
「ジョーダン、ジョーダン」
「マイケル?」
「ジョーダン」
「おもんな」
「黒兎がやらせたんだろ?それより……」
「なんだ?その顔は」
竜太はニヤニヤと黒兎を見る。
「まさか黒兎に彼女がいるなんてな」
「……?……はぁ?!」
竜太はニヤニヤしながら『またまたー』なんて言ってくる。
その態度にイラッとくるのと、ちょっぴりカップルに見られて嬉しいような、色んな気持ちになるがやっぱりイラッとくる。
「そんなんじゃねぇよ」
「おいおい、メイドがそんな口の利き方するのかい?」
さらにイラっとくるので舌打ちをして返す。
「ちっ、そんなのじゃございませんわぁ」
「ちっ、って聞こえたぞ?」
またまたイラッとくるのでさらに大きく舌打ちをして返す。
「ちっ!死んでくださいまし」
「隠す気ないし、本音出てるし」
黒兎はめんどくさいことになったなぁとため息を着く。
「そんなに嫌がらなくてもさ、正直好きなんだろ?あの子のこと」
「うるせぇ。お前には関係ねぇ」
「メイドがそんな口……」
「黙ってくださいませ」
「おお、怖い怖い」
黒兎はさっきから『別にそんなんじゃねぇ』しか言っていない。
図星をつかれたからか、誰得なツンデレ状態だ。
「ほら、どうなんだ?」
「どうって、それりゃ……いいとは思ってるよ」
「なんだよ。惚れてるじゃんか」
「あーうるさい。もう行くぞ!」
黒兎が厨房に戻ろうとした時、竜太は黒兎を呼び止めた。
「ちょっと」
「なんだよ」
「自分に正直になれよ」
「わかってらぁ、そんなこと」
黒兎は厨房へ歩き出す。
そんなことわかってる。
自分に正直なんてわかってる。
雫を好きだと認めた、もう十分素直じゃないか。
これ以上何を素直になればいいんだよ。
黒兎が厨房に戻る時、
「あっ、」
「何かしら?」
雫とばったりあってしまった。
黒兎は何を言うか迷う。
謝ればいいのだろうか。それとも何か……
その時……。
「みんな見にきたっ……」
ドン!と言う音が教室中に響く。
見てみると露が派手に転んでいる。
近くにいたクラスのひとりの男子が露に手を差し伸べた。
「ありがとう。いってて、私ったらドジしちゃった」
クラスの男子は露の手に触れれたことが嬉しいのか、ちょっとニヤついている。
そして。
「私のスマホどこいったけ?」
露が少し声を大きくしてわざわざ周りに聞こえるように言う。
手を差し伸べた男子が近くに落ちている携帯を見つける。
「これじゃない?」
「ありがとう」
男子は携帯を拾い上げた。
「……冬矢さんと、月影……?」
嫌な予感がする。
それもとてつもなく。
男子生徒が拾い上げた携帯には、黒兎と雫2人のツーショットと2人が同じ家から出るところが映し出されていた。
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