第13話氷の女王と日曜日と襲撃
今日は、日曜日だ。普通の日曜日。しかしいつもと違うとするならば…。
「月影くん、月影くんの部屋を掃除してもいいかしら?何か隠さないといけないものはあらかじめ隠しておく時間を今取ろうと思うのだけど」
「そんなもんねぇ…よ。たぶん。いや、ちょっと時間くれ」
「分かったわ」
そう。なんか前から普通に居たみたいな雰囲気だしてるけど、つい一昨日この家の居候になった冬矢雫。またの名を氷の女王。
「ああ、もういいぞ掃除頼むよ」
「それじゃ、入るわよ」
こんな感じで何故か溶け込んでいるが、雫は一昨日来たばかりの家出少女だ。
雫としっかり過ごした時間はたった1日だけ、しかしある程度2人とも相手との接し方を昨日の買い物で掴んだらしく、もう、この家に何年も住んでいるかのような意思疎通をし始めた。
それは、2人とものこじらせた性格、態度、癖、全てがたまたま上手くいった結果である。
黒兎は、相手からどんどん距離感を詰めてくる人が苦手だ。そして相手に気を使ったりするのを疲れると思うタイプの人間である。
雫は基本相手と深く関わろうとせず、感情や表情かほとんど出ないが、思っていることは割とすぐに言うタイプなので黒兎が1番気を使わなくていい性格をしている。なので2人とも家で最低限度の会話と、アイコンタクト、ジェスチャーで分かり合うというもはや同居人の域を超えたレベルまで来ていたのだった。
それもこれも昨日1日過ごした買い物の成果なのである。
「飯出来たぞ」
「ありがとう。いただくわ」
「………………」
「…………………」
「そう言えば昨日買った家具、今日の昼頃に届くんだとよ」
「そうなのね。今日から自分のベッドと机を使えるようになるのね」
「………………」
「……………………」
しかし逆に言えばこの2人同居しているのにほとんど会話がない。
なのでご飯中は特に間がもたない。
昨日はある程度会話のネタがあったけれど、普通の日になるといきなり会話が途切れ始める。
それに同居していると言っても雫と黒兎2人ともが揃うのは、ご飯の時か、お風呂を待っている時、たまたま見たいテレビが一緒の時とかでないと同じ空間にいることはないのだ。
まだ3日しか雫と同居していないが、2人ともコミュニケーションが最低限なのだ。
買い物の時は雫と話し合う機会が多かったもののいざ1日なんの予定もなくなると2人とも自分の部屋でやりたいことをやるだけになるのだ。
ピンポーン
突如、静寂を打ち破るようにインターホンがなった。
「俺出るよ」
「わかったわ」
こんな時間になんだろう家具が届くにはまだ早いしと思い、玄関を開けるとそこには…
「よっす。黒っち」
「よう、黒兎」
聡と陽さとしとひなたが立っていた。
「おい…なんでお前らが…」
「いや、なに、何となく黒兎ん家の前を通ったもんだから遊びに来た」
陽が悪びれませず言う。
「何となくじゃねぇよ」
「黒っち、そんな固いこと言うなって」
「聡も来たのかよ」
「悪いか?」
「悪いよ最悪だよ」
ちょっと家片ずけるといって、聡達を玄関の外に追いやった。あいつらは家に入るなと言っても黒兎の両親がいない限り無断で来るので来るなと言っても意味が無いのである。
それより不味いのは、雫と黒兎が同居している事がバレること。2人とも同居がバレることは良しとしていないのでなんとしても乗り切らないといけない。
黒兎は急いで雫に訳を説明する。
もちろん雫もバレることを良しとしていないので淡々といつもの冷たい声で返してくる。
「ということだ、だから悪いが今日はあいつらが帰るまで、冬矢は自分の部屋を出ないでくれ」
「いつもと変わらないわね」
「そうだけど」
まぁいいと黒兎は、雫に返し雫は自分の部屋に戻っていく、その間に食器やらなんやらと2人の生活跡を見られないようにそそくさと片ずける。
「もういいぞ」
「おう、黒っちもうエロ本隠し終わったか」
「そんなんじゃねぇよ」
「お邪魔します」
「おい、陽、勝手に上がんな!」
「結構綺麗にしてんだな」
「まぁ…な」
「へー、なんか物の位置かわってないか?」
「そりゃ…変わるだろ」
「怪しいな」
「怪しいなぁ」
「何がだよ!」
なかなかに鋭い2人にビクビクしながら日曜日を過ごすこととなる。
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