追憶
──
お前らも知ってる通り……俺は勇者パーティーに所属していたんだ。
まぁ正確に言うと、勇者が俺をスカウトしに来たんだけどな。
俺は相当強かったからこんな事はしょっちゅうあったけど、勇者が来るのは少し驚いたな。
そして俺は自分のクランから離れなきゃいけなくなるから結構迷ったけど……最終的には俺は勇者の仲間になってやったんだ。
でも俺はただ報酬に釣られて行っただけ……それに加えてこんな性格だ。長くは続かないと思っていた。オマケにクソみたいな仲間も居たしな。
でも、勇者リリスは俺を全て受け入れてくれて……結構自由にやらせてくれたんだ。活躍したら褒めてもくれた。
それが気分が良くて、俺はずっとリリスに着いてったんだ。
そして封印された道具を探し求めて、あちらこちら旅を続けて……気づいた時には魔王の本拠地まで辿り着いていたんだ。
その頃の俺は自惚れなんかじゃなく、本当に最強の騎士……いや、世界最強の剣士になっていた。魔王なんぞに負ける気は微塵もなかったんだ。
でも……現実は違った。
俺たちは魔王の圧倒的な戦力の差に、全く太刀打ち出来なかったんだ。文字通り、手も足も出なかった。
それでも……俺はどうしても魔王に一矢報いたくて、命令を無視して突っ込んだんだ。
そしたら……俺は……俺は。
魔王の放った魔法を喰らって……!意識がぐにゃぐにゃして……動けなかった。いや、動かない物に変化していたんだ。
……そう。俺は魔剣に変えられていたんだ。
この時に俺は理解した……この世にある呪われた装備は、魔王が人間を武器に変えたものだと……!
そしてそれに俺がなってしまった……馬鹿みてぇだよな。ホントに。
そこで魔剣に変えられた俺を、魔王が手に取る前に……勇者リリスが魔剣に魔法を放ったんだ。
転移の魔法をな。
でも、相当焦っていたのだろう。飛ばした場所や年代はめちゃくちゃだったみたいだ。
それでも俺を命懸けで逃がしてくれたんだ……だから俺はその後の事は知らない。
そして俺は魔剣のまま飛ばされ……真っ暗な場所に辿り着いたんだ。
飛ばされたばかりの俺は相当混乱していて、殆ど記憶にねぇんだ。だけど多分何人かは殺ってたと思う……俺は悪くねぇけどな。
そして徐々に落ち着いていった頃には……ハッキリと自分の正体に気がついてきたんだ。
『自分は呪われた魔剣』になったんだと。
そして俺に呪われた人物が現れると、人間だった頃に覚えていた魔法を唱える事が出来るようになる事にも気がついた。
それで俺はまた好き放題やっていたけれど……呪われた奴が死んだら、また長い間主を待たなきゃいけない事にも気がついた。
だから俺は、呪われた奴に俺の事を教える事にした。
それでも死ぬ奴は死ぬ……というか大抵死ぬ。
だから俺は俺を……魔剣を完全に使いこなせる奴をずっと待っていたんだ。
そしてもしそんな奴が現れたら……俺を人間に戻してくれるんじゃないかって。分かんねぇけど、そんな気がしていたんだ。
──
「……まぁこんなもんだ」
「そうだったんだ……辛かったね」
僕が言うと、シンは機嫌悪そうに返す。
「おい勘違いするな。別に同情してほしい訳じゃねぇんだ。ただ俺は人間に戻って……またリリスに会いてえだけなんだよ」
「……そっか」
「で、ジェネ。これで信じたか?」
顔を上げて縛られたジェネさんを見ると、ブルブル震えながら……
「それが! 仮に……仮に本当だとするなら……そ、それ大事件では……!?」
「だから仮じゃなくて本当だっつーの」
「信じない……信じたくないけど、シン様の死体は全く見つかっていないと言われてるから、辻褄は合っているような……」
「おいおい、信じてくれねぇんなら俺が話した意味ねぇじゃねえか。お前ぶっ殺すぞ」
「おい貴様ふざけるな!! シン様はそんな事言わない!!」
うっ……うーん。あともう一押しで信じてくれそうって感じなんだけどな。
何か他にいい案は……ん? そうだ。いい事を思いついたぞ。
「なぁシン! お前にしか使えないワザとか持ってないのか?」
「あ? ンなもん無限にあるぞ」
「ならそれをやれば、ジェネさんも信じてくれるんじゃないかな!」
「……ほーん。お前にしては悪くない発想だ」
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