…3ノ月19ノ日…


…3ノ月19ノ日…

 段々と早朝の寒さも和らいできた。

 冬が終わりを告げようとしている。

 周りにはまだまだ雪が残り続けているけど、その白も、だんだんと見える量が少なくなっていると思う。


 春の訪れ。

 それはアムールさんがこの村を去る別れの訪れでもある。


 明日、また彼の所に行って、旅への同行を許してもらおうとお願いしてくる。


 アムールさんが村を発てば、機会を逃す。

 そこから来る焦りもあるけど、お願いしに行くのには、もう1つの理由がある。

 今日、お母さんに、村を出る事を許された。

 その時のお母さんは、悲しそうな顔をしていたけど、それを必死にこらえながら、私に言った。

 あなたのしたい事がソレならって、行ってきなさいって。


 私も考えてたからわかる。

 お母さんのあの目は、寂しいからとか、1人だと大変だからとか、そういう目じゃないって。

 あれは、私の身を案じる目だ。

 自分の知らない場所で、私に何があったらって、心配する目だ。


 それを見て、心配かけちゃいけないって思った。

 自分が元気なのを、見せてあげないといけないって思った。


 でも、それはお父さんも同じだ。


 どちらが上で、どちらが下とか、そういうのは無いの。


 私はいつまでも、2人に元気でいて欲しいから、笑顔でいて欲しいから。

 だから私は、またお願いをしに行く。

 ダメって何度も言われたってあきらめない。


 もし、許されなくて、アムールさんが行ってしまっても、私は行く。

 その準備もやるんだ。


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