③-1


     3


 安倉はひとり、夜の街を歩きながら考えた。

 義堂真実。

 先ほどの少女が彼に語った言葉は、どこまでが真実なのだろう。

 本当に、神になりたいと思っているのか。

 本当に、人間を信頼していないのか。

 ならば何故、安倉に頼みごとをしたのか。

 ひとつだけ確かなことは、彼女から敵意を感じなかった、ということだ。

 安倉はこれまで生きてきて、敵意を感じない人間にはひと組しかあったことがなかった。

 それだけで、彼女を信じてみてもいいのかもしれない。

 だが、どこかで疑問も拭い去れなかった。

 どうして、安倉なのだろう。

 彼は、自分をそこまで高く評価していない。

 できることといえば、躊躇なく他人を害すことくらいだ。

 他人に求められた経験も、少ない。

 利用するだけして、捨てられる可能性はないだろうか。

 そこまで考えて、ふっと息を吐く。

 別に、捨てられてもいいではないか。

 これまで通り、人は信用できない、ということがわかるだけ。

 それに安心して、また日々を生きていくだけだ。

 今は、義堂の企みが面白いと思えた。その先が、見てみたい。ならば、その自分の興味だけで、いいではないか。

 安倉はそう結論付けると、闇の先を見た。

 ふわりと何かが浮かんで、消えた。


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