③-2
義堂は笑みを貼り付けたまま、応える。
「私よ」
「私は、どうなるの」
「どこか別のところに行ってもらおうと思ってるわ」
「真実の代わりに死ぬ人として?」
「……」
少しだけ、首を傾げた
「だったら、私が死ぬ」
「それは駄目よ」
すぐさま、却下された。これが、彼女の強いところだろう。欲しい言葉を、力強く放り込むことができる。
だが多賀は、首を横に振った。
「いいの。真実の計画を完全に成功させるなら、ちゃんと半身が死んだ方が、よりリアリティが出るでしょう? それに、私は、あなたのために死にたい。この、無意味な人生に、生きる意味と希望をくれたから」
多賀の言葉を吟味するように、義堂は差し出していた掌を握り締めた。それを胸の前に持っていき、目を瞑る。
「……一心同体のどちらかがいなくなれば、それは完全ではなくなるわ」
「それを呑み込んで、一体になるのが真実の目的でしょう? その痛みから逃げずに、受け入れてもらわないと」
多賀の反論に、珍しく義堂が即応できなかった。じっと、言葉を噛み締めている。
「……正論に対しては、何を言っても言い訳にしかならないわね」
「やらなければいけないことから逃げるのは、真実らしくないよ」
多賀もやっと、笑えた。歪んだ表情にしか見えなかったかもしれないが。義堂は息を洩らし、空を見上げた。
「あーあ、やっと、本音で付き合える友達ができたと思ったのにな」
そう呟く義堂は、平気な振りをしているが、本当に辛そうに見えた。
「そう言ってくれると、私も嬉しいよ」
多賀は、微笑みながらけんけんをするように道を弾く。
「それでも、ダメ?」
「だめ。私が生きていたら、本質の部分で嘘がでちゃう。大きな嘘を吐くときは、細部はリアリティを持たせなきゃいけないんだよ?」
「翼に説教される日が来るとは」
「あはは。ほんとよ。しかも、死ぬのは私の方なのに」
死、という言葉を出して、それが急にぞわりと存在感を持って多賀に迫ってくる。
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