②-1
「君は義堂真実を知っているか」
信藤は駅への道を急ぐ金髪の女生徒の脇に立つと、唐突に話しかけた。
女生徒は、そんな不審人物にあからさまに眉をひそめて問い返す。
「え? 何?」
「義堂真実を知っているか、と訊いているんだ。いや、答えなくていい。君が義堂と仲良かったことは調査済みだ。今のは、確認でしかない」
「だから、何? マジでキモいんだけど」
塾で仲がいい子がいる、という情報は、委員長の仁科から得ていた。義堂の話を聞きたいのなら、その子がいいんじゃない、と特徴を教えてくれたのだ。
仁科が言うには、義堂はその女生徒、多賀翼について、学校にはおよそいないタイプで、話していて楽しい、と語っていたらしい。
仁科から聞いてはいたが、今正にそれを目の当たりにすると、頷かざるを得ない。
金髪のショートに、青い眼、ミニスカートから伸びる長く白い脚。アイコンだらけだ。
「本当の義堂の姿を知りたい。協力してくれないか」
信藤の言葉に、多賀は細い綺麗な眉根を寄せた。
「何、また?」
「また?」
聞き捨てなら無い言葉に、今度は信藤が眉をひそめる。
「そう。あんたと同じようなこと聞きに来た奴が、前にも居た」
「誰だ。どんな奴だ。教えてくれ。そいつは、なんと言っていた」
詰め寄る信藤から気味悪そうに離れながら、多賀は告げる。
「別に、覚えてもない。普通そうな、影の薄い奴だった。真実(まみ)の本当の姿が知りたい、って暗そうに言ってきてさ。キモかったから知んないよ、って言って振り切ったけど」
「そうか……」
信藤と同じようなことを考えている人間がいるのだろうか。そうすると、義堂は信藤だけでなく、他の者にも別の顔、素顔を見せていた、ということだろうか。
つい、嫉妬に走りそうになる思考を抑えて、信藤はその前から密かに去ろうとしている多賀の腕を取った。
「ひゃっ」
「待ってくれ。僕は、義堂の本当の姿を、この世に残したいんだ。こういうのを書いている。本当だ。本名だから、学生証を見てもらえばわかる。調べれば、顔写真入りでニュースにもなっている」
手にした著作を見せ、更に言い募る。
「さっきそこのコンビニで屯してる奴らの話を聞いたけど、あれが義堂だとは、どうしても思えない」
信藤が後方の光り輝くコンビニを指すと、多賀は顔をしかめて頷いた。
「ああ、そりゃそうでしょ。あいつらは自分にしか興味ないし、そんな奴らでも真実が気にかけてあげてただけだからね」
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