可愛い王子様
「はぁ……はぁ……すまん、遅れた」
「なぁーにやってんだー。もうバス来るギリギリ前だぞー」
「ほんとすまねぇ……昨日の夜眠れなくてよ、気がついたらこんな時間だったんだ」
なんだその小学生の遠足前日みたいな理由は!
ぜぇぜぇと息を切らす礼二を前に、手首の時計を確認しながらギリギリセーフだと伝えた俺は遅刻した理由にそんな事を思いつつ、仕方の無い奴だと笑顔を浮かべる。
「にしても千代……お前そんな服持ってたんだな」
「失敬な!私だって女の子なんだからこういった服も持ってるんですー」
まぁほとんど全部お姉ちゃん達が勝手に買ってきたりしてくれた物なんだけど。
「それとも何?私にこういった服は似合ってない?」
「いやいやいや!似合ってる!すっげぇ似合ってるぞ! うん!なんならいつもそんな格好の方がいいくらいだ!」
「それは肩こるからやだなぁ」
そんな俺の今日の格好はショートブーツにスカートの裾に青いラインのある、お腹辺りに縦に2つ青のリボンがみあしらわれたセーラーワンピ、そしてその上からショートジャケットを羽織っていた。
「にしても、本当に似合ってるぞ。なんならいつもそういう格好してればいいのに」
「今日は礼二がデートだって言うから、特別にこの格好で来てあげたんだぞ?そんな毎日見れるもんじゃないからこそいいんじゃあないか」
普段からいいものばっかり見てると目が肥えるんだよ礼二。
「言われてみれば……確かに普段あんなにシンプルだったり適当な服だからこそ、こういったちゃんとした可愛い服が余計良く見えるのか……」
「そうそうってなーんか余計なセリフも入ってた気がするけどー?」
「そ、そんな事ねぇよ!ほら、バス来たし行こうぜ!おっと、そうだ」
「ん?」
急に入口で止まってどうしたんだろ?
「お、お手をどうぞ、お姫様」
「んおっ?!よ、よくそんな恥ずかしいセリフ人前……っていっても人いないけど言えたなぁ」
アニメか漫画の影響かなぁ?可愛い事するじゃないかこいつ。
「うるせぇ!もうやってやんねぇからな」
「ふふっ、はいはい。ごめんなさいね王子様」
たまにはこんな事もいいだろうと緊張し耳まで真っ赤にした礼二の様子を見て、俺はそう軽く笑いながら礼二の手を取りバスに乗り込むのであった。
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