お客さんはお友達
「ありがとうございましたー!ふぅー……」
やーっとお客さんが切れた……イベントの時間が来てくれて本当に助かったぁー。
「これで少しは休憩できるぞー」
あれから数時間、すっかり日も暮れお祭りのお客さん達もイベントの方へ行ってるせいか人通りも少くなくなったお陰で、俺はようやく休憩を取る事が出来た。
「大繁盛だったみたいだな、千代」
「遊びにきたぞー!」
「飲み物とか持ってきたよー」
「あ、三人共いらっしゃーい!よく来てくれたねー」
正直日暮れから少し経った時点で来てくれなかったから諦め出たんだけど……まさか来てくれるなんて……
「嬉しいなぁ」
「ちゃんと来るって約束してたからねー。まぁ、最初三人で来た時、お客さん多すぎて諦めちゃったけどね」
「なるほどねー」
確かにあの時お客さん凄まじかったもんなぁー。逆にタイミングずらしてわざわざ空いてる時に来てくれるなんてありがたい話だよ。
「あ、そうだ。せっかくだし皆もクレープ食べる?おいしーよー」
「えっ!いいの!?」
「でも七十五円はちょっと高いぞー」
「俺らも昨日大分お金使っちゃったからなぁ……」
「なんだそんな事、せっかく来てくれたんだから今日はタダでいいよー」
本来ならあんまり褒められた事じゃ無いんだけど、正直材料ももう無いし店仕舞いムードだったしねー。
「ほんとか!?」
「いいのー!?」
「ふふふっ、それに元から皆からお金取る気は無かったしね。それじゃあちゃちゃっと作るから、少し待っててね」
目をキラキラと輝かせて喜ぶ三人を前に、俺はそう言うと軽く肩を回して三人分のクレープを作ってあげる。
「はいお待たせ致しましたー。チョコとイチゴとバナナでーす」
「わー!」
「凄い!可愛いっ!」
「意外と大きいんだな」
皆色んな反応してくれて面白いなぁ……でも。
「ふっふっふー、驚くのは食べてからにしてもらおうか!」
食べ物は口に入れてからが本番!さぁ!どんな反応するか見せてもらおうか!
「んー!」
「なんだこれ!なんだこれー!」
「んん!うまいなこれ!」
初めて見るタイプの食べ物に盛り上がる皆にそう言った俺は、パクっとクレープを頬張り様々な反応を見せるみんなの姿を見て楽しんだ。
ーーーーーーーーーーーー
「いやー、思ったよりも美味かった。んで腹にも溜まった」
「叶奈のも美味かったぞ!毎日でも食べれそうだ!」
「うんうん!でも太っちゃいそうー」
「クレープはそこそこカロリーあるからねー。礼二はともかく、女の子の二人は食べ過ぎ注意だよ?」
「「はーい」」
「でも三人とも今日はありがとうね。ステージ見たかっただろうに」
確か今年は芸人さんが来るとかで、皆楽しみにしてたはずなのに来てもらっちゃったからなぁ。申し訳ない。
「なんだ、そんな事か」
「それなら叶奈達は別に気にして無いぞ!」
「ほんと?」
「ほんとほんと、それにさっきも言ったけど、ちよちーと約束してたからね」
「みんなぁ……」
皆優しくていい子だなぁ……!でも、やっぱり……
「そんなに悩んでるなら今からでも皆と行ってきたらどうだ?」
「ひゃあっ!とっ、とーさまっ!?」
そう俺がうじうじと皆の楽しみを奪ってしまったという事で悩んでいると、いつの間に来たのか後ろから父様にそう言われ、俺はビクッとなる。
「ほら、まだステージはあってるぞ。今からでも遅くない、みんなと行っておいで」
「で、でも……」
お店が……
「店の事なら気にしなくていい。もう材料も殆ど無いみたいだし、どうせ店仕舞いにするつもりだったんだろう?」
「そ、そうだけど。でも……」
「確かに父様は千代にやるなら最後までキチンととは言ったが、それはそれこれはこれだ。子供のやりたい事を親が叶えないでどうする」
「父様……」
「ほら、行ってこい。早く行かないとステージ終わっちゃうぞ?」
「……うんっ!皆、いこ!」
「うん!」
「待ってました!」
「そうと決まれば早く行くぞー!」
ニッと頼りある笑顔を父様に向けられた俺は、父様にお店を預け、たすき掛けを解きながら皆とステージを見にかけていくのであった。
こうして、俺の初めてのお店は幕を閉じたのであった。
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