初めての

 ミーンミンミンミンミンミンミン……


「……んん……んぅぅ……ふぁー……こほっこほっ」


 よく寝たーって言いたい所だけど、結局あんまり寝れなかったなぁ……


「やっぱり枕が変わると寝れないっていうのは信ぴょう性高いなぁ……こほっ」


 あまり寝ることが出来ず、むくりといつもよりも早い時間に起きた俺は、病院特有のサラサラとしたちょっと固めなお布団を撫でながらそう言うと、昨日の事が頭に思い浮かんでくる。


「まさかインフル……だけじゃなくて、こほっ。肺炎にまで同時にかかるとは……運無さすぎじゃありませんかねぇ」


 それに「千代ちゃん体弱いし、万が一があると行けないから入院ね」なんて言われるなんて……いくらお得意様とはいえ納得してしまう自分が情けない。


 そう、あの後俺が家で倒れた所を母様にこの街の平屋一戸建ての病院へと運び込まれ診察された結果、この二つの病気にかかっていると診断されたのだ。

 そしてそのまま入院する事となり、一晩明けて今に至る、というわけである。


「お、早起きだねぇ千代ちゃん。おはよう」


「おはようございます樋ノ口せんせー」


 今回も迷惑おかけしまーす。


「昨日はよく眠れたかい?」


「それが……こほっ、実はあんまり……」


 咳が止まらないわ苦しいわ熱いわきついわでぜんっぜん眠れませんでした。まぁ最終的にはまた気絶みたいな感じで寝ちゃったけど。


「無理しちゃダメだからね?それに一応インフルエンザだから、基本的には面会謝絶、するとしても僕とご両親だけ必要最低限でだからね」


「はーい」


 仕方の無い事だけど、この時代だとまだスマホ所か携帯ゲーム機すら無いし、こういう時に出来る事って本当に何にもないんだよなぁ……


「という訳ではい、朝ご飯だよ。食べられるだけ無理せず食べてね。暇だろうからテレビは好きなだけ見てもいいけど、あんまり大声で笑ったりはしないようにね」


「ありがとうございまーす」


 テレビ好きなだけ見れるのはデカい!暇死せずに住むぜ!それに朝ご飯美味しそう!この卵焼きとか焼き加減抜群で……ん?


「もしかしてこの朝ごはん、先生が作ったの?」


「お、よく分かったね。それは僕が作ったんだ。とは言っても本職の人とか君のお母さんには流石に劣るけどね」


 そう言って照れたように笑う先生の前で、俺はいただきますと言うと口にご飯を放り込む。

 確かに先生の言った通り本職の人や母様には及ばないであろう、卵焼きに味噌汁、ご飯と言ったメニューの料理はどれも優しい味がした。

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