雨の日三姉妹と訪問者
「雨である」
「今日も今日とて」
「雨である」
「「「三姉妹、梅雨の一句」」」
カコン。
「全然句になってないわよ貴女達」
どこからともなく鹿威しの音が聞こえてきた気もするが、梅雨に入ってもう二週間、そろそろ夏休みに入ると共に梅雨明けも近くなってきたであろう日の事。
男の付き合いとやらで男達が全員出かけており、雨でわざわざ出かける気にもなれず、かと言ってやる事もない花宮家の女性陣はなんとなく居間に集まって自由にしていた。
「そういや六月に結婚したお嫁さんって幸せになるんだってー。昨日見た雑誌に載ってた」
「あー、なんだっけ。確かジューンブライドとか言うやつだったっけ?」
確かあれも企業の経営戦略とかで1960年代後半に日本に入ってきた風習だったっけ?元は確かイギリスで、あっちだと六月は天気に恵まれる時期だとかなんとか。
「へー!じゃあじゃあ、母様は何月に結婚したの?」
む、確かに。完全に忘れてたけど俺ってまだ母様の結婚記念日を知らない。
「あ、それはウチも気になる!ねーねー、お母さんはいつ結婚したのー?ウチお母さんの結婚式の話も聞きたい!」
せっかくのチャンスだ、俺も姉貴に便乗して聞き出そうじゃないか!
「かーさま、それ私も知りたい」
「あらあら、貴女達ったら……親のそういう事は子供が気にしなくてもいいものなのに……はぁ、仕方ありませんね。ほら、教えてあげるから離れなさい」
「「「やったー!」」」
やれやれと言った様子ながらどこか嬉しそうな母様にそう言われ、母様の両腕に抱きついていた姉達と膝の上に居た俺はササッと退くと母様の前に座るのだった。
そして母様が口を開いたその時────
ピンポーン。
「あらお客さん。ちょっと出てくるわね」
「「「えー」」」
興味津々、聞く気満々だったのにー。一体誰だこんなジャストタイミングで乱入してきた奴は!
「また今度話してあげますよ。千胡、千保、大事なお客さんだった時の為に湯呑みを出しておいて貰えますか?」
「「はーい」」
さて、俺はいつも通り大人しくしてるだろうと指示を出されなかった訳だが、今日はちょっと邪魔されて虫の居所が悪いからな。
邪魔してくれた奴の顔くらい拝んでやる……って。
「あらいらっしゃい!どうしたの急に来て」
「いやー、ちょっと色々あって……お、千代ちゃんお久しぶりー!元気にしてたー?」
「してたー……じゃなくてなんで仁奈ねーちゃんが居るの!?」
見事ジャストタイミングで邪魔され、母様の指示通りに動き始める姉達とは別にお客さんの顔を見てやろうと俺が廊下から顔を出す。
するとそこにいたのは、びしょびしょに濡れ泥まみれになっている俺の親戚の姉、宮間仁奈がそこにいた。
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