ちゅるちゅるぱくり
「では以上で万博による客足の低下に関する議題は終了とします。そして議題は先程ので最後となる為、今回の真商会はこれで終了となります。皆様、お疲れ様でした」
「「「「「お疲れ様でしたー!」」」」」
「お、お疲れ様でしたー!……す、凄かったぁー!」
思ってたのの二十倍は濃ゆい会合だった……!いやまさかこれから先の街の経済の流れ所か、この日本全体の流れまで発展するとは……
恐ろしい、これが商業者の街か……
「そう言って貰えると父様も連れて来た甲斐があったってもんだ。だが千代はずうっと興味津々で聞いてたから疲れたろう?ずっと寝てたこいつと違ってなっ!」
「いぃっでぇっ!?何すんだよ父さん!」
「何が「何すんだよ父さん」だ。長男とあろう者が普段から勉強やら手伝いやら全くしない所か、こんな大事な場面で端から寝るだなんて。信じられん」
よしよしと俺の頭を満足気な表情で撫でていた父様にゴチンといい音の立ったゲンコツで起こされた兄は、父様にそう言われグググと悔しそうな表情をする。
兄には申し訳ないが、このまま落ちる所まで落ちて貰って「跡取りは千代」って父様言ってくれないかなぁ。
にしても集中してたからか気が付かなかったけど、割とお腹減ったなぁ…………
「まぁいい。とりあえず二人共、日も暮れてるし早く帰ろ──────」
くきゅるるるるるるるぅ~……
「あっ」
しっ、しまったぁぁぁあ!気を抜いたからか?気を抜いたからなのか!?思いっきりお腹の音立ててしまった!うぅぅう……!恥ずかしいっ!
「お前、もしかして最初っから父さんから飯を集ろうと──────」
「はっはっはっ!そうかそうか、そんなに腹が減るくらいまで集中してたか!ようし!普段は恵さんに文句言われるから行かないが今日はいいだろう」
「と、とーさま?」
いきなりそんな上機嫌になってどうなさいましたか!?
「ふふふっ、父様の秘密の場所に連れで行ってやるからな。母様には内緒だぞ?」
兄の言葉を遮ってコロッと態度の変わった父様がそう話終えると、とりあえずコクコクと頷いていた俺は笑顔の父様に手を引かれ──────
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
コトッ。
「はい、お待ちどう」
「おぉぉ!」
ほかほかと湯気を上げる白濁したスープ!そこに浮かぶネギ、チャーシュー、海苔!そしてその下に沈むサッと湯を通しただけのバリカタ麺!これは……!これは正しく……!
「どうだ、人生で初めて見たラーメンは。美味しそうだろ?」
「はいっ!」
前世で大好物だったラーメンだぁぁあ!
そう言って横に座る父様に返事をしつつ、少し高い床に足のつかない椅子へと座っていた俺は目の前に置かれた十年ぶりのラーメンに興奮を隠せずにいた。
ちなみに兄はここに来る途中、ずっと父様と俺が今日の話題で盛り上がっていたからか拗ねて帰ってしまった。
「邪魔するよ~……って花宮さんじゃないか、会合帰りにここに来るのは珍しいねぇ。いつもは奥さんが料理作っててくれるんだろう?」
「まぁそうなんだが、今日はちょっとうちのツレが腹空かせてな。せっかくだから寄ったってわけだ」
「ツレ?そりゃまた珍しい、一体誰を……って何だ、千代ちゃんか」
「んま~♪って八百屋のおじちゃん、こんばんはー」
「はいこんばんは。今日の真商会が始まる前なんか騒がしいと思ったが千代ちゃんが居たからだったんだな。おじちゃんにも挨拶してくれても良かったのにー」
「あはははは、今度お野菜買いに行くから許してー」
それにあの時はあの場所から動ける雰囲気じゃなかったしね。
「まってるよ千代ちゃん。んで浩、真商会に千代ちゃん連れて来たって事はもしかしてそういうことか?」
「いや。まだ確定って訳じゃないが、中々にウチの息子がな……長男が家を継ぐのは当たり前だが、これからの時代、せめて娘達は仕事とか結婚は自由に選ばせてあげたい」
「へっ、お前さんも良い父親になったじゃねぇか。兄貴分として俺は鼻が高いよ」
「うるせぇ。奢ってやるからそれ以上娘の前でからかうな」
「へへっ、ごっそーさん」
「ぷはぁー!父様父様!ラーメンすっごく美味しいね!」
「だろう?」
ラーメンに夢中になっていたせいでおじちゃんと父様の話は聞きそびれたが、笑顔でそう言う俺に父様はいつも以上に優しい笑顔で頭を撫でてくれたのだった。
この後家に帰り、皆が寝静まった後母様に父様が怒られていたのを見たのはまた別のお話。
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