小学生の体育と言えば
「よーし、それじゃあ男子と女子に別れて二列になれー」
先生のその一言と共に運動するにはもってこいな空の元、運動場に出席順でビシッと並んでいた俺達は解散し、次の瞬間にはきっちりと男女二列に並び直していた。
やっといてあれだけど、五年間も体育の度に同じメンバーで高速整列やってるとここまで早くなるんだなぁ。
「それじゃあ今日は各チーム男女半々混ぜてドッジボールだ。先に二回勝った方の勝ちだからな。それじゃあ右列同士左列同士でチーム組めよー」
「だってさちよちー」
「叶奈ちゃんと礼二とは敵かぁ……ぜっっっったい勝とうね!」
最初の一発で決めてやる!
「なんで逆に意気込むの……でもまぁ、せっかくなら勝ちたいし、ちよちー、がんばろ!」
「うん!」
「ま、僕は運動神経も抜群だし、花宮さんは僕が守るから安心して僕の活躍を見ててよ」
そんな風に各チーム毎に別れつつ、俺が一緒のチームになった綺月ちゃんと話していると後ろから例の金髪野郎が頼んでもないのにドヤ顔でそう話しかけてくる。
「お望み通り羽交い締めにして動けない肉壁にしてやろうか……」
「まぁまぁちよちー、落ち着いて、ね?」
おっといかん、俺とした事がついイラッとしてしまった。
「ごめん……ううん。ありがとう綺月ちゃん」
「いいっていいって〜。それに、すぐに身をもって知るだろうからちよちーがそこまで気にしなくても大丈夫だよー」
ころころと笑いながらそう言う綺月ちゃんの言葉に首を傾げつつも、俺は気にしなくていいと言う綺月ちゃんの言葉に神経質になり過ぎたかと反省する。
「ほら、そろそろ始まるよ」
「あ、ほんとだ」
気持ち切り替えて行かないと。
「よしっ!頑張るぞー!」
「れーくん達に勝とうね!ちよちー!」
「うん!」
そう自分の頬を叩きながら気持ちを切り替え、俺はドッジボールへと────
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「それでは二戦目、初めっ!」
ピーッ!
「ぐえっ!?」
ピピーッ!
「神井アウト、外出てろー」
「……はい」
「……えぇっ!?」
望んだ筈が、目の前で試合開始の笛から二秒も経たず撃破された神井を見て、俺はそんな声を上げてしまう。
早っ!?戦線離脱はっやっ!?あんなにイキってたのに開始早々一番にやられてるってマジか!
「ね?だから言ったでしょ?」
「あー……身をもってってそういう事かぁ……」
まぁよーよく考えれば、街でぬくぬく育ったお行儀のいい都会っ子の中で一番だとしても、やったやられた早い者勝ちの田舎戦闘民族じゃ元が違うもんなぁ……
「なんかちよちー、悪い顔になってるよ?」
「おっといけない、お行儀良くお行儀良く。女の子らしくしないとっ!?っぶねぇ!」
人が女の子らしく振舞おうとしてる中やってくれるじゃないか……!
「ねー、叶奈ちゃん!」
思いっきり「なぁ」と呼び掛けたい所を何とか抑え、女の子らしいように可愛らしくボールを思いっきり投げつけてきた相手に俺はそう呼びかける。
「わはははは!「女帝」に女の子らしくは似合わないぞ!」
「ほー?言ってくれるじゃないの……これでもくらえっ!」
「むぅぐっ!ひひひ、取ったぞちよよん!今日こそは勝つ!」
「ふはははは!私を倒してみろ叶奈ちゃん!」
「今日も虎が女帝に挑んでる……」「どっちが勝つと思う?」「俺、女帝が勝つ方に海苔二枚」「私伊部さんが勝つ方に海苔一枚」「俺は花宮さんに海苔一枚」
「何だか……この光景も見慣れたな」
「あはははは……今日はどっちが勝つんだろうねぇ」
そんな風に周りが盛り上がる中、綺月ちゃんと礼二が苦笑いを浮かべて話している事など知らず、俺は最早恒例となった叶奈ちゃんとの読み合い合戦を繰り広げていたのであった。
こうして、ある意味平和に賑やかに、体育の授業は過ぎていったのであった。
ちなみにこの後、約二分にわたる攻防の末ギリギリ俺が技術勝ちした事も示しておく。
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