第1343話 42枚目:確認と推測

 そこからは何かの一線を越えたからか、わんこそばのように次々と大型のモンスターがやって来るようになった。まぁ1体ずつの内は召喚者プレイヤー側に余裕があるし、定期的に来ると分かれば中堅からのし上がろうとする召喚者プレイヤーへの教材にすらなっている状態だ。

 なのでちょっとエルルにお願いして、「第一候補」に領域と言うか、力場的なものの状況を確認してもらいに行った。別にウィスパーでも良かったんだけど、まぁ、一応確実な方法でね。

 私は領域の維持と召喚者プレイヤーの回復ぐらいしかやる事が無いので暇とも言うんだけど。まぁうちの子が頑張ってくれてるからいいんだ。


「お嬢、戻ったぞ」

「おかえりなさい、エルル。早いですね」

「向こうも順調だったからな。とりあえず見える範囲では」


 そうか、順調か。それはいい事だな。とりあえず見える範囲ではってついてるけど。

 詳しく聞いてみると、とりあえず表面に出てきていた邪神の力と「モンスターの『王』」の影響はほぼ沈静化しているんだそうだ。本神殿の方では、モンスターの襲撃もすっかり落ち着いているらしい。

 ただし、こちらでは見ての通り大型モンスターのわんこそば状態。なので表面に出てきていた、言い換えれば溢れていた分が無くなっただけで、リソースの蓄積自体はまだまだあるだろう、との事。


「それを引きずり出すこの領域はやっぱり桁外れなんだと。今はその溢れてた力の源泉がどこだったのかを探ってるから、力を引きずり出して減らすのはそのまま続けてくれってさ」

「なるほど、分かりました。このまま本体を出さざるを得ないところまで追いつめてやります」

「そこまでやったら周りの被害が大変な事になると思うんだが?」


 はははまぁそれはうん。正気を取り戻した“採録にして承継”の神がなんかこういい感じにしてくれるんじゃないかな。たぶん恐らくきっと。

 まぁ全力で領域スキルを展開するのはそれだけで鍛錬になるからなー。今も微妙に領域スキルの範囲は広がっている筈だし、それで巻き込むことが出来る相手の力なりリソースなりも増えているだろう。

 ……なるほど? もしかして大型モンスターが次々来るようになったのは、妨害とかもあるだろうけどそっちの影響もあるか?


「まぁ直接この場で超大型モンスター、それこそあの無機物で出来た蛾のような奴を相手にするのは流石にダメでしょうけど、あれと同レベルの相手が出てくるには、少なくとも同程度には削る必要があるでしょう。まだしばらく考える必要はありませんね」

「…………」

「よく考えてみてくださいよエルル。あのカジノの街で最終的に元凶を引きずり出すまでに、どれだけモンスターが出てきて倒したと思ってるんです」

「……まぁ、闘技場で賭けの対象になってた分も含めると、相当な数なのは確かだが」


 しばらくどころか当面は大丈夫だよ(意訳)、と伝えると、一応エルルは納得してくれたらしい。流石にやらないよ? 確かにこのままレイドボスまで行ければいいなーとは思ったけど、街を破壊したい訳じゃないからね。

 むしろ街を破壊したいのはあのゲテモノピエロ側だろうし。……と考えたところで、一応これも警戒及び懸念を共有しておくべきか。と思い至る。何って、わざとレイドボスの出現を早めるという選択肢を、ゲテモノピエロこと『バッドエンド』がとる可能性についてだ。


「すみませんエルル、もう一回伝言お願いできます?」

「今度は何だ?」

「例の邪神の信徒が方針転換をして、「モンスターの『王』」勢力をこちらに差し出す形で街を徹底的に破壊する可能性。及び、「モンスターの『王』」勢力とこちらをぶつけ合わせる事で漁夫の利を狙う可能性について確認と警戒をお願いします、と」

「…………そうか。頭は痛いが、有り得るのか。有り得るな」


 言葉の通り頭が痛そうな顔をしつつも、エルルは本神殿へ向かってくれた。そっかー、エルルも有り得るって思うかー。

 ……まぁ、今までが今までだからな。何をやっても驚けないというか、どんな荒唐無稽に見える可能性でも否定できないというか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る