第1324話 42枚目:変化対応

 レイドボスの羽は、骨組みになったとはいえ大きさはそのまま。つまりは非常に巨大だって事だ。そこが全部檻になっているんだから、その内容量はお察しという奴だろう。

 【並列詠唱】も駆使して、かつ「第四候補」と連携して何とか一杯には出来たが、檻の自壊が間に合わず反撃に使われて、結構大変な事になっていた。


『これは無理ですね』

『無理だな!』


 というのが「第四候補」とのウィスパー結果である。ここで改めて大規模攻撃を実質封じてくるか。いい加減にしろ。エルルに頼んであの羽を根元から切り落としてもらうぞ。

 しかし正直に羽ばたきのたびに撃ち出される鎖を切り落としていても時間がかかりすぎる。それに切り落としても何か判定が違うのか、モンスター召喚の魔法陣が出るんだよな。そっちを解除してる間に次の羽ばたきがくるから、モンスターの数がすごい事になっている。

 しばらく色々試してみて、特級戦力がゴリ押す以外の攻略法もとい最適解正規ルートがなんだったか、というと。


「普通に瓦礫が残っている部分に土属性の壁系魔法を乱立させて、重量で潰すのが最適解。……いや、普通潰れるとは思わないでしょう」


 だってサイズがサイズだし、間違いなくそれ以上の質量があった筈の羽を動かせてたんだから、潰れるなんて思わないじゃないか。潰れたけど。上から押さえつけられたみたいになって、足を碌に動かせなくなってるけど。

 地面との距離が無くなったから羽ばたきの脅威も半減以下になっている。通常の攻撃が通るようになったらこっちのものだとばかり、その骨組みになった羽を端から前衛召喚者プレイヤーがガリガリ削っていっているのだが、順調そうだ。

 私は防壁の上に移動して、【並列詠唱】と【無音詠唱】をフル稼働させて壁系魔法を設置しまくる係だな。出来るだけ魔力を過剰に込めて、大きい=重い土属性の壁系魔法を設置している。


「しっかし、規模はともかく動きが何というか、リアルですねぇ……」


 虫が嫌いな人は戦うのが辛いだろうな、と、今更に思う。まぁその場合は出来る司令部の事だ。何か別の場所で動く用事を頼んだりしているだろう。

 どうやら押し潰しでもある程度ダメージが入っている上に、土属性の壁系魔法に攻撃を吸収する檻がぶつかると、魔法の強度にもよるが檻の方にダメージが入るみたいなんだ。いや確かに壁系魔法ってそういうもんだけどね?

 これも何というか、属性別の特色を見た感じだな。火とか風とかの壁系魔法だと普通に吸収されてたから、土なら大丈夫とは思わなかった。


「だからと言って、土属性の攻撃魔法を当てると、それはそれで吸収されるみたいですけど」


 なんなら瓦礫扱いで、分厚い装甲が復活するまであるからな。制御を奪われた扱いになるのか、時間経過で消えないし。本体は鎖だから体力が回復するって事はないんだが、あれだ、シールドが回復するようなもんだから。

 ……胴体の方からメキメキ音がするから、もしかしたら重量によっては重力のある場所が全部ダメージゾーンになるのかも知れない。装備の重量超過でスタミナの減りが跳ね上がるのは知られているが、それをさらに超えるといきなり体力(HP)が削れたりする可能性があるな。

 まぁ勝手にダメージを受けてくれるに越したことはない。左右から骨組みあるいは檻の集合体になった羽を削るチームも順調に鎖の体積を減らしているし、じわりとだが体力バーは減っている。


「残り1割の時に何があるか次第ですが、このまま押し切っておきたいところです」


 大体そうはならないんだけどな。こういう場合、何故か斜め上に予想は裏切られるから。

 鎖だけが暴れ出すなら予想の範疇、全体でそのまんま檻の形になって強制吸い込みもありそう、なんだったら空間浸食まであり得るか? ここは亜空間だし、壊しても通常空間や街に影響はないもんな。

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