第1323話 42枚目:行動変化
「随分派手にいったな。何人か巻き込まれてなかったか?」
「前振りはあったけど、思ったより規模が大きかったね」
爆発の連鎖が半分ぐらいいったところでエルルとサーニャが戻って来て、そんな会話をしていた。あー、やっぱり何人か巻き込まれたのか。前振りがあったから逃げてはいる筈とはいえ、無傷ではすんでない感じかな。
さて問題のレイドボスだが、流石に爆風がすごかったからかそれとも相手の構成要素が石系だからか、土埃がすごい事になっていた。本体が見えないと体力バーも見えないので、何も見えない状態だ。
レイドボスの上空を確認するが、当然「第四候補」はスライムを投下するだけ投下してさっさと退避したらしい。まぁいつまでも上にいる理由はないか。
「まぁでも、これだけやれば相当に攻撃が通った筈です。恐らく次に何かが起こるだけのダメージは蓄積されたでしょう」
「いつも思うんだけど、姫さん達のその予想は何が理由なの?」
「戦略を練るだけの頭があれば別ですが、獣並みであれば追い詰められるにしたがって強力な手札を出してくると思いません?」
「理由は微妙に分からないが、まぁ今まで大体当たってるのは確かだな」
本音を言えば「それがゲームのセオリーだから」なのだが、これだと伝わらないのでそれっぽい理屈を考えて伝える。大体間違ってないと思うんだけどな。
そうやって様子を見ている間に、ぶわっと大きな風が吹いて土埃を払っていった。レイドボスが正面を向いていた方向からなので、たぶん司令部の指示だろう。
で、改めて見えるようになったレイドボスの姿は……あの厄介だった触角が片方無くなって、首回りから胴体にかけて見えていた檻の数が随分と減ったようだ。足先に爪のようについている檻はそのままだが、胴体には大きなひびが入っている。
「一番変化が大きいのは納得ですが、そう来ますか」
「捕まえるのが主目的、っていうのを隠す気も無いみたいだな」
「元からあんまり隠すつもりはなかったと思うよ」
そして一番ダメージが入っただろう2対の羽だが、根本から3分の1ほどはそのままだったが、そこから先は鎖によってつくられた、羽の骨組みのような状態になっていた。
間は一番大きな鎖同士に渡された比較すると細い鎖でつながれて、更に細い鎖によって細かく仕切られている。虫籠をたくさん並べたように見えたからさっきの感想になった訳だが、どうやらエルルとサーニャもおおよそ同意してくれたようだ。
ばさ、とその骨組みだけになった羽で羽ばたきをするが、発生する風は比較にならない程弱い。だが先ほどまでとは違い、羽から無数の細い鎖が飛び出してきてあちこちに突き刺さっていた。
「たぶんあの行動を放置していると羽が再生して、下手に食らえばそのまま捕まってしまうんでしょう。つまり最優先で警戒及び迎撃しないといけないって事ですね」
そしてその鎖が巻き戻される際、その先端に残っていた瓦礫をくっつけていた事からそう判断。司令部も同じ判断を下したらしく、巻き戻る鎖に対して山ほど攻撃が飛んで行っていた。
「で、お嬢はどうするんだ?」
「とりあえずここで固定砲台継続だと思います。あの羽の形をした無数の檻にも攻撃の吸収能力があるかどうかを確認しなければなりませんし、吸収能力があるなら許容量を越えさせる事で自壊するかどうかを確認したいところです」
「……まぁ前に出ないならいいや」
「確かに、あの鎖もここまでは届かなさそうだしね。一応安全圏ではあるかな」
攻撃には参加するけど前には出ないよ(意訳)、と伝えると、エルルだけでなくサーニャも納得してくれたようだ。よかったよかった。
実は既にカバーさん経由で司令部から指示が来てたんだよね。出来るだけ同じ属性の、威力と攻撃範囲が大きい魔法を連続で叩き込んでほしいって。あの骨組みになった羽は相当に大きいから、私でキャパオーバーを起こせなければ無理ゲーという事になる。つまり別の攻略方法があるって事だな。
流石にあの、羽ばたきのたびにたくさん飛び出してくる鎖をちまちま切り落とす、って事ではない、と思いたいんだけどな。長さは結構あるけど、相手のサイズからして焼け石に水感があるし。
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