第1277話 42枚目:「祭り」状況

 どうやらこの街の中にいれば、メニューから観戦と賭け金の投入が出来るらしいと分かってからは、ちょいちょいと召喚者プレイヤー側に賭けたりして情報がまとめられるのを待った。

 なおあれだけたむろしていた小悪魔達だが、エルル達住民組によれば、時間加速開始の直前に、慌てたように全員引き上げていったんだそうだ。……て事は、この中継や賭け金の回収をするのに働いているんだろう。たぶん。


「ただ食いですか?」

「ただ食いっすね」


 更に“偶然にして運命”の神を引きずり出す動機が増えてしまったな。まぁあのお菓子は私だけではなくて、あの調理場にいた召喚者プレイヤー全員での合作みたいなものだけど。誰がどれを作ったか覚えてないし。

 お菓子はまぁ捧げものだと思う事にして、この街をホームにしている神直々の「お祭り」だけあり、誰もが闘技場に夢中なようだ。それは召喚者プレイヤーだけでなく住民もで、かなりの金額が一点に集中しているらしい。

 賭けのレートは前評判が2割、神による実力差の判定が5割、フィールドとの相性が3割で決まるようだ。そして出場者への報酬としては、勝った場合のみ自分に賭けられた額の1割にレートが掛けられた金額、となるらしい。


「つまり先輩やエルルさんが行っても、儲けはほとんどないって事っすね?」

「レートが明らかに低くなるでしょうしね。いくら安牌に賭ける人数がいても、下手をすればマイナスになりかねません」


 なんせ実力差が酷い事になるからな。そうでなければ相手がよほど強い場合だが、それこそティフォン様達の試練に出てくるような相手がほいほいと出てくる訳も無いだろうし。

 それに出てくるのがモンスターとはいえ、それで本当に元凶の力が削げているかは疑問だ。だってこれも賭け事なのだから、“偶然にして運命”の神の力が使い込まれていてもおかしくない。

 だから私はまだ様子見しつつ生産作業だ。もちろん、レイドボスが出てくる条件が見つかったりしたら参戦するけど。


「出現条件に時間経過がある可能性がありますからね。「祭り」と題したのであれば、盛り上がりは最終日に持ってくるでしょうし」

「あー……ある意味エンターテイメントの神でもあるっすもんね、ここまでの事を考えると……」


 早回ししたいこちらとしては、一番厄介な性格をしている。それが「モンスターの『王』」の影響ではなく素の性格だっていうのが更に厄介だ。ギリギリのスリルがあってこそ、じゃ、ないんだよ。


「まぁこの盛り上がりの裏で、こっそり裏カジノの方の闘技場でモンスターを倒しまくってる人がいるみたいですけど」

「検証班っすか?」

「えぇ。どうやら「お祭り」で人目がそちらに集まっているのを幸い、勝ち抜き戦というか、どこまで連戦できるかを賭けにしないか、と持ち掛けたようですね」

「しっかりしてるっすねー」


 そういう感じで、削れるところは削ってるみたいだけど。もちろん通常のカジノで勝つことで換金用のコインを集め、報酬を貰いつつ“偶然にして運命”の神の力を強めている召喚者プレイヤーもいる。

 小悪魔の集団はいなくなってしまったが、中央のカジノもとい“偶然にして運命”の神の神殿で祈りを捧げる事は出来るし、そちらにお香を始めとした捧げものも可能な限り捧げられている。


「ただやはりというか、裏カジノで「景品」を得る方が、元凶の力を大きく削げるみたいですが」

「そうなんすか?」

「調べる方法は分かりませんけど、そうらしいですよ」


 私が持ってたコインも、死蔵してても意味ないって事でほとんど司令部にあげたからなー。もちろんボックス様を始めとした“偶然にして運命”の神の神域にいる神々の、専用神器を取り返す為の元手分は残してある。

 全体で見れば、確実に削れてきてはいる筈だ。後は、相手がどれだけのリソースを溜め込んでるかだな。今までのパターン的に、そこが一番厄介なんだけど。

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