第1235話 41枚目:情報収集
今すぐ見た目バケツを起動してフリアドにログインしたくなったが、流石にログイン時間が足りない。途中でログイン制限に引っかかって一番物事が動くだろうタイミングで弾き出される事になる。
なのでぐっと我慢して、外部掲示板を辿っていく。もちろん確実もしくは正確な情報だとは思っていないが、それでも何も分からないよりはマシだろう。
流れが早いが、それはともかくスレッドの最初から確認していく。うん、あの空間異常に関するスレッドで合ってるな。半分くらいまでは私がログインしてた時の話らしく、書き込み時間もかなり間が空いている。
「流れが加速してきたのは……割とついさっきか」
もちろん今見ているこれは外部掲示板なので、ログアウトしないと見る事は当然書き込む事も出来ない。なので書き込み時間を見る限り、大体1時間か2時間ぐらいのタイムラグがある。
ネタバレ防止なのかそれとも書き手の感想が主だからか、情報というより感情優先のそれを読み解くのはちょっと難しかったが、どうやら司令部はリアル午後6時のタイミングで儀式をやってみたようだ。
これはやるだろうと思ってたというか、やらないと色々間に合わないので問題ない。それが資料通りの「間違ったまま」なのか、修正を加えた「正しい形」なのかは分からないが、どうも最初の方は問題なかったらしい。
「まぁリアルタイムで実況動画を流すって訳にもいかないしな……」
フリアドは通常でも4倍の時間加速がかかっている。だから、動画は持ちだせても実況は不可能だ。だからこうやって、一旦ログアウトして外部掲示板に書き込むのが主となる訳だけど。
で、儀式が進むとそれに合わせてずーっと空を覆っていた薄雲が消えていき、それに合わせて空間的な薄皮が剥がれ、あの集落が本来の状態……地獄もかくやという大惨事な状態になったらしい。
今度は問題なく干渉できたそうなので、司令部の人達はまず、みせられないよ! 状態になってなおまだ死んではいない集落の住民達を、とりあえず色んな意味で安全が確保できる建物の中に運ぼうとしたそうだ。
「まぁ普通はそうする。要救助者で間違いないし、少なくとも話は聞かないといけないし」
なのだが。
あの集落の中心にあった広場。その中心には、地下への入り口があった部屋に収められていたあれこれで組まれた、お祭り用の祭壇があったんだそうだ。そこに並んでいたのは周辺の森で取れる果物、地下にあった畑で採れた野菜、専用の建物とその地下で育てられていた動物の肉など、普通に食べられる、集落の様子を考えれば、ご馳走と言うべきものが並んでいたらしい。
……ただし。その祭壇ごと、血にまみれた、あるいは血をかぶった、一部の隙もなく血に濡れた状態で。何の、あるいは誰の血なのかというのは言うまでもない。何せ、その祭壇の周りが一番「多かった」らしいからな。
「そりゃまぁ、出てくるとしたらそこだろうしなぁ……」
司令部の人達が動き出したところで完全に空が晴れて、明らかに現在の月齢と食い違う、煌々と輝く満月がその祭壇を照らすと……その影が、ずるりと動いて、襲い掛かって来たんだそうだ。まぁ、来るだろうけどさ。大惨事を作った元凶が。
ただその元凶が、だな。どうも、「影」のままだったみたいなんだ。そう、地面に落ちるあの黒い状態、そのまま。つまり干渉できないって事である。だって、少なくともこっちが干渉できる範囲には「何もいない」んだから。
しかしその、やたらと刺々しいというか、こう、鎌みたいなものを山ほど生やした不定形生物というか、そんな形を取った「影」が
「うん。確かにこれはパニックホラーだ。逃げるしかない奴」
ちなみにその「影」がやったらしい大惨事は、外の森、その半ばまで続いていた。……そう、世界規模スタンピートからこの集落を守り切ったのは、この「影」だという事が確定した。そりゃ何の痕跡も残らない筈だ。
それでも司令部は司令部だし、実際に動いているのも最前線に突入して、なおかつ大惨事の中でも動けるトップ
もっともその動きも、満月の光が強すぎて宿光石の明かりが負ける事も結構あるようだが。そうなれば、まぁ、こう、ざしゅっとされてしまう訳で。結構被害が出ているというか、その被害者がこうして外部掲示板に書き込んでいるという。
「……で、ミラちゃんは?」
ただ、そこまで事態が動いていながら、一言もあの子の事が出てきてないんだよな。司令部による情報封鎖だと思うけど、あの子はどうなったんだ。なんとか無事でいてほしいんだけど。身体的にはもちろん、精神的にも。
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