第1212話 41枚目:特殊報酬

 まぁ水曜日の残りは「知恵の輪スペシャル」への挑戦に費やすことになったし、その問題の「集落」はここまで捧げものを受け付けなかった空間異常のどれかだろうって事で、私はいつも通りの時間にログアウトだ。

 ルイル達は引き続き「知恵の輪スペシャル」に挑むそうなので、無理はしない事と、外した輪の扱いにはくれぐれも注意する事を伝えて、別の部屋に引っ込んだんだよね。


「あ、お嬢。あれ、解けたぞ」

「……はい?」

「組み合わせの方を確認したいから、起きたら持ってる方を持ってきてほしい、だと」


 ……まさか、内部時間1日強であの超難易度な「知恵の輪スペシャル」が解けるとか、思わないじゃない?

 検証班と『可愛いは正義』の有志によって厳重に警備されている部屋に行ったら、ルイルが楽しそうにバラバラになった「知恵の輪スペシャル」の輪を色々と並べ替えてるんだもんな。びっくりだよ。

 そしてその部屋の隅でルージュが何か細工物っぽい事をしてるからあれは何だと思ったら、それはそれで、「知恵の輪スペシャル」の輪の形を完全再現しようとしていたらしい。うん?


「マイマスターの持っている輪がどのような形をしているかにもよりますが、恐らく組み合わせのパターンが3種類ぐらいありそうなのです!」

「( `・▽・´)!(精度の高い複製も探求に当たるそうで、神様から加護を頂けました!)」


 そういう事だったようだ。……なるほど。なるほど? 遺跡から発見された文章の写本を作るのとかと同じカテゴリって事なのかな? うん、まだちょっと混乱してるなこれ。落ち着こう。

 まぁともかく、物質系種族の言葉が分かるようにしておいたのは正解だったな。結局そこそこ「白紙のスキル書」を使う事になったけど、意思疎通がスムーズに出来るのは良いね。

 しっかしまさかこの短時間でクリアできるとは……うちの子はすごいな!


「ところで、複製でも組み合わせ方次第で「失われた知識の一片」というものになるんでしょうか」

「そこは実際に組み合わせてみなければわかりませんね!」


 という事らしいので、とりあえずルージュに外していた2つの輪を渡し、作業を待ちながらクランメンバー専用掲示板の確認に入る。来る前にもざっと確認したんだけど、迎えに来てくれたエルルの言葉でちょっと吹っ飛んだから。

 えーと。“理知にして探求”の神から聞いた特殊な種族の集落、が、あると思われる空間異常の特定はほぼ完了。空間異常への突入まではあと一息。流石に突入可能まではいかなかったか。いってたらびっくりだけど。

 ただ、恐らくここがチェーンクエストの続きとなる高難易度の空間異常なんじゃないか、という目安は既についているらしい。だからその場所の近くに転移ポイントが設置されているようだ。仕事が早い。


「(`・ω・´+)(加護を頂いてから精度が上がった気がします)」

「それではさっそく組み合わせと行きましょう!」


 そこまで確認したところで、ルージュによる輪の複製が終わったようだ。早いな。いやほんとに。割と私がじっくり読んでたとはいえ、そこまで時間かかってない筈なんだけどな? まぁ仕事が早いのはいい事だ。

 とか思っている間に、ルイル(とルール)は正解の組み合わせを見つけたようだ。まずはルージュが複製した方から試すらしく、バラバラだった輪をまっすぐ鎖になるように繋ぎなおしている。

 順番を入れ替えただけで形としては同じなのか? と思ったところで、ルイルはその端と端を繋ぎ合わせた。全体として大きな輪の形になったところで、ぶわっとその全てが光の粒になる。


「反応が早いですね。一応聞いてはいましたけど」

「聞いてた?」

「他にも同じような難易度のパズルはありましたから」


 そんな会話をしている間に、一度散った光の粒が再集合するようにして、一瞬控えめな閃光を放った。なんというか、研究者の神らしく質実剛健というか、限りなくシンプルだな。

 まぁその方がやりやすいのは確かだけど。と思いつつ、横からルイルが広げて置いている本、こと、ルール(分体)を覗き込む。思った通りそこには、ルール(分体)が【鑑定】した、その、見た目は水晶の塊、先端がたくさん突き出ている、クラスターと呼ばれるものの詳細が書き出されていた。


[アイテム:連袂の水晶塊

耐久度:100%

説明:1つの母岩から無数に結晶化した水晶

   同じ塊から採れる水晶同士の繋がりがとても強い

   装飾品として加工すれば、その繋がりは持ち主同士も結びつけるだろう

詳細:装備品に加工時、スキル【共振】が確定付与

   装備分類・アクセサリに加工時、スキル【結束】が確率で付与]


[スキル【共振】

説明:このスキルを持った者同士で同時に行動した場合、その効果が増幅する

   増幅率はスキル保持者同士の相性と関係性に依存する

効果:同系統もしくは同属性のスキルを使用した時、効果上昇

   同種族あるいは【絆】等で繋がりがある場合、更に効果上昇]


[スキル【結束】

説明:このスキルを持った者同士の能力の一部が共有・増幅される

   増幅される能力の数と強度はスキル保持者同士の相性と関係性に依存する

効果:同種族あるいは【絆】等で繋がりがある場合、効果上昇

   共有可能な能力は以下の中から適宜変更可能

   一般スキルアビリティ

   加護・祝福

   種族スキルアビリティ]


「これはまた、随分と破格な…………ん?」


 何はともあれクランハウスで増やしてからか、と思ったのだが、その一部でちょっと引っかかる部分があった。

 ……共有可能な能力に、加護・祝福が、あるな?

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