第1179話 41枚目:進捗予想

 さて、エルルから報告という名の話を聞き、急いでログアウトだ。何せ月曜日は平日だからね。夏休みが長い分なのか、大学の冬休みは短めだ。年末年始の前後数日ずつしかない。まぁ休み自体はあるので、その間だけでも頑張るとしよう。

 一度目の時間加速をやってみて司令部が出した探索方針は、空間異常を積極的に攻略していく、というものだった。ただし条件があり、基本的に1つの空間異常を攻略するのは1つのクランであり、かつ、出来るだけ制限時間の長い空間異常から攻略していく、らしい。

 基本的に、というのは、まぁもちろん特級戦力の事だ。とはいえ最近にもなれば特級戦力とは『アウセラー・クローネ』の代名詞ではなく、『勇者』と親しくなった召喚者プレイヤーや戦闘に明け暮れて種族レベルが2千を超えている人間種族召喚者プレイヤーの事もそう呼ばれる。


「まぁそれはそれとして、私には声がかかるんですけど」


 もちろん司令部もフル稼働だけど、私は私で時間加速中にやったように、ゴリ押しという名の大幅な手順の短縮が出来るから。主に進捗がヤバそうだったり、好感度依存っぽいフラグを立てる手助けをしたりであちこちの空間異常を渡り歩く予定となっている。

 私という切り札を今回ばかりは最初からぶん回す予定となっているが、それだけ空間異常の数が多いからなー。正直、リアル2ヵ月+時間加速でも、足りるか? ってちょっと不安になってるし。

 それに、北と東に乱立して移動を妨げている、明らかに不自然な密度の空間異常については捧げものすら出来ていないらしい。つまり解決する事が出来ないって事なので、恐らくこれもギミック、と、言われている。


「たぶん空間異常同士でその強度が上がってるとかそんな感じで、攻略できるところからしないとダメなんでしょうねぇ……」


 で、その為に攻略する必要のある空間異常の数が、とんでもない事になってる、って、話だ。うん。切り札をフル稼働させる必要が、あるな?

 ちなみに、あのミニイベントで手に入った「宝の地図」に書かれていた場所にある空間異常も、今のところ捧げものが出来ない。こっちも何か条件があるんだろう。主に攻略進捗的系統の。


「思ったより、御使族の人達から助言が貰える、というのが大きいと判明しましたし。特化種族だけはあります。どっちかというと今までの積み重ねもとい経験の方でしょうけど」


 竜族の皇女わたしと「第一候補」が切欠として十分だったとはいえ、気軽に交流してくれる気さくな人達で良かったよね。もちろん検証班や司令部及び大多数の召喚者プレイヤーがちゃんと信用を積み重ねていたからこそ、でもある。

 ともかくそんな感じなので、司令部の指揮がありその司令部を経由して御使族の人達に相談して助言を得られる現状、空間異常の攻略はそれなりに進んでいるようだ。

 というか、進んでないと困る。空間異常の数からしてもイベント期間からしても、まだまだ序盤なのだから。


「どうせ後になればなるほど難易度が上がっていくのは目に見えているんです。バックストーリーとこれまでの情報的に、この序盤で捧げものが通るのは、こちらの世界に属する神の方が力を持っている、あるいは管理割合が高い空間異常でしょうし」


 つまり現在捧げものが通らない空間異常は、「モンスターの『王』」の力の方が強い、あるいは空間の支配率が高い場所って事になる。……そういう意味で言うと、捧げものを通すには「加護の証」をある程度集めないとダメ、っていうのもありそうだな。

 もっともただ数を集めればいいってものではないだろうけど。元となった神様によって「加護の証」の効果もランク的に変わるから。そして今のところ、元となった神様の力が強い程、制限時間が長い傾向にある。

 ……うん。やっぱり早回しするべきだな。時間加速が3日だからそれ以上は無いだろうと勝手に思ってたけど、この分だとそれ以上に時間のかかる空間異常も出てきそうだ。

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