第1128話 39枚目:行動進捗

 今回の目的には、救出済み物質系種族の人達と共に行動する事で不協和音の影響を軽減する、という事が可能かどうかを確認する事が入っている。もちろん救出がメインだが、モンスターを行動不能にするこの不協和音は、その正体が悲鳴及び暴走だと分かった上で利用するのは結構心苦しいのだが、間違いなく有用だからだ。

 しかし、そもそもその不協和音の軽減、というのが、物質系種族の人達同士による声掛けと説得である。どうやら他の種族には認識できないそれは上手くいったのだが、当然ながら不協和音の出力を抑えるという形になった。

 そして不協和音が抑えられれば、モンスターも動き始める。本来のそれよりは鈍いのも確かだが、それは召喚者プレイヤー側も同じことだ。つまり、戦力的な拮抗はあまり変化しないって事だな。


「とはいえ、不協和音の利用についてはおまけでしたからね。あくまでメインは救出です。あの領域スキル相当の能力も、海岸線に沿って並ぶモンスターがそれぞれで展開する分だけなら突入もやりやすいってものですし」

『少なくとも1体ずつの影響力はお嬢より弱いだろうからな。というか、あの島より弱いんじゃないか?』

「まぁ、明らかに集団戦……というのが正しいかは分かりませんが、数がいる前提のモンスターでしょうからね、こちらは」


 そんな会話をしながら、という余裕はあるが、エルルも飛んでくる巨大な槍を回避している。基本能力の1つだったのか、奥の方に並んでいるブロックからも飛んでくるんだよな。

 まだ不協和音は結構な音量で響いている為、モンスターの方も万全ではないのだろう。現に破壊活動と核周辺の部品を運び出す動きは止まっていないが、それに対する妨害が鈍い。

 だから今は、最初に召喚者プレイヤー達が突入した大穴を中心に長い城みたいな砦を崩していっている。一部召喚者プレイヤーはそこそこ北にある、私が開けた大穴の方へ向かっているようだ。一応、旗を掲げた状態ならそこも領域スキルの範疇に入ってるけどさ。


「あちらとこちらを合流させて、左右を警戒する形になれば、たぶん渡鯨族の港町ぐらいなら作れるでしょうか」

『ここにあったのか?』

「聞いてみなければわかりませんし、そもそもあの砦の材料にされて地形が変わってますからねぇ……」

『あぁ、どっちにしろ1から作り直しなのか』


 そういう事なんだよな。その為には土地の除染も必要だし、その為には防衛ラインを構築しなきゃいけないから、やっぱり結構な広さが必要になる。というか、相手がでかいんだよな。でかいというか多いというか。海岸線全部並んでるって、改めて考えるとなんだそれ、だ。

 だから全体からすれば一部、という扱いになるんだろう。ブロックの1つの大きさからすれば、厚みは恐らく16ブロック分。御使族がいたとして、1人分だ。まぁ人数が絶対に少ないだろうし、大陸の間に居たって事で、北側の大陸にもいっているだろうし。


「……たぶん、全く同じ法則で、御使族の人達が配置されているという訳でもない、筈ですし……」

『……だとしたら、ちょっと人数がシャレにならないな……』


 仮に全く同じ法則だった場合、北側に開けた大穴まで3人いる事になる。恐らく北側も似たようなものだし、大陸全体の大きさはまだ判明していないものの、今までの傾向的に、倍とは行かないとはいえ前の大陸より小さいって事はない。

 今回は2つ同時に攻略する必要があるから、1つ1つを見れば同じかやや小さい、という可能性もなくはないが……フリアドの運営が課してくる難易度を考えると、大きいと思っていた方がいいだろう。

 という事は、その海岸線全て……西側だけかもしれないが……に並んでいる、という事は、数万ブロックは下らない訳で。


「いずれにせよ、探索が進めば分かる事です。……最悪御使族が全員釣り出されているという事も、司令部なら想定して動いているでしょうし」

『最悪にもほどが無いかそれは』

「でもゼロじゃないですからね、可能性としては」


 助けられる状態なら何をしてもいいって訳じゃないんだぞ運営。むしろ助けられる分だけ死ぬより酷い目に遭うとか止めろ。前にも思った気がするけど。

 流石に、流石にないと思っていいんだよな。世界三大最強種族の一角なんだから、助けられる目のある全滅状態までは行ってないと、そう思っていいんだよな、運営?

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