第1121話 39枚目:手がかり入手

 さて問題はその、相手方のかなり重要な何かなのだが。


「その正体については、現在もまだ解析中ですかー……」


 見た目はなんかこう、水晶玉の中に万華鏡を作ったような、覗き込むと目がちかちかして大変頭痛がする感じのものらしい。4セットの中心にあったものと、4ブロックの中心にあったものの違いは大きさと色数。もちろん4セットの中心にあったものの方が色数も大きさも上だ。

 まぁ間違いなく「モンスターの『王』」の力を受けているか、むしろその力の源ではあるだろうから、解析も一筋縄ではいかないだろう。なんなら解析する為だけに領域スキルが必要かも知れない。何せ、周囲への影響がまるで分らないからな。

 ただまぁとりあえず今のところは、机の上に置いて遠くから見ているだけでは何の変化もないらしい。今は周囲に色々な物を置いてみて、反応を見ているとの事だ。


「……何でスキルを使わないんだ?」

「詳細に調べようと思うと目視になるからじゃないですかね。あとは、相手の能力が能力だけにスキルも上手く通らないとか」

「なるほど。集中して見てたら何か影響があるかも知れないと」


 そこから現在までの検証結果が並んでいたが、反応なしばかりだな。まぁそう簡単に当たりは引けないか。

 戦場から撤退したのは、司令部というか検証班がこちらにかかり切りになったというのもあるらしい。確かに、何が起こるか分からない以上、指揮能力と情報処理能力は万全にしておかないとまずいだろう。

 しかし何というか、この逆ミラーボールみたいなのは他にもある感じだな。あの不協和音の中で探索はかなり厳しいだろうが、それでも可能ならやっておくべきか。そもそもあの不協和音がどれくらい続くのかも分からないが。


「とりあえずは、この目がちかちかする球体の回収を目標とするべきでしょうね。撤退時点で領域スキルの境界線にはこれといって変化はありませんでしたが、あれだけ大きな反応があってモンスターの動きまで止まるんですから」

「そこが違和感ではあるけどな。なんで俺らや召喚者はともかく、モンスターにまで影響が出てるんだ、あの音」

「あの球体の正体もしくは影響が分からないと、何とも言えませんね」


 という感じなので、次の攻撃も私は回避をエルルにお任せして、あの飛んでくる巨大な槍を引き付ける役兼周囲一帯の安全確保だな。その「次の攻撃」がいつになるか分からないけど。

 何にせよ、あの目がちかちかする球体の正体なり力なりが多少は分からないと、対処のしようがないからね。もし正体が分からないままあの砦のブロックを壊したとして、それに対するカウンター系の何かだったらアウトだし。逆に増幅系の何かなら、出来るだけ素早く壊すか奪取しないとダメだし。

 少しでも何か情報が得られてから動くことになるだろうな、と思いながら、元『本の虫』組の人達によって書き込まれる検証の為のアイテムを見て、そのリストに応じて生産内容を変えていると、意外な人物からの書き込みがあった。


「……同様に、目がちかちかする極彩色を抱えた水たまりの目撃情報……を、「第二候補」が書き込んでいますね。北側にもあったんですか、あれ」


 水たまりなのは、たぶんあちらの「モンスターの『王』」の能力のせいだろう。……張り付けられたスクリーンショットを見る限り、水たまりというか撥水性の高い葉っぱの上に乗った雨粒みたいだな。もっというならスライムっぽい。

 まぁ北側の大陸にある事自体は別にいい。問題は、これであの目がちかちかする何かが、「モンスターの『王』」由来ではない事が確定したって事だ。つまり、元は別の何かだった。


「……最悪、要救助者ですねぇ……」

「は? あれが?」

「今までも大概だったでしょう?」

「…………」


 寄生虫型モンスターにやられたデビルフィッシュ一族とか、「何らかの塊」に変えられてた獣人族と露樹族の人達とか、状態異常漬けになってた竜族の人達とか。前例が山ほどありすぎるんだよな。

 どうやら思い至ったらしく、エルルは顔をしかめて黙ってしまったが。そしてそうだった場合、ヘルトルートさんの上げた功績が更に跳ね上がる。何せ、初見で「破壊」ではなく「奪取」してくれてるからな。

 しかし、もしそうだったとしたら……これ、今回は、どうやって戻したらいいんだ?

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