第1101話 38枚目:探索進捗

 私はいくつか鑑定系の特殊スキルを持っているが、あれは一定以上のステータスを持った状態で特定の本を読むことで習得する事が出来るものだったので、検証班の人達なら持っている。

 なので特段呼び出しがかかることも無くトゲトゲな島の様子を見ていたのだが、その内島に上陸した召喚者プレイヤー達が小船に戻ってきた。そのまま船に乗り込んで、島を離れる。

 入れ替わりで別の召喚者プレイヤーを乗せた小船が船に近づくが、恐らく探索……というか、調査がひと段落したんだろう。


「あのトゲトゲも、結構折れるみたいでしたね」

『下の方にいくほど丈夫になってるみたいだったけどな』


 で、再びトゲトゲの島に乗り込んですぐ見えなくなった召喚者プレイヤー達を見送ってしばらく。掲示板経由で司令部から情報のまとめが開示された。

 それによると、まず島の内部は動物の気配がモンスター含めて皆無。植物と鉱物は近辺にある島のものと大差ないが、【鑑定】した結果に「現在は干渉により『******』の影響をより強く受ける受容体と化している」の一文があったらしい。

 あれだな。いつだか「遍く染める異界の僭王」の影響を受けて変質してた石材と一緒だな。なので即行神に捧げて始末したとの事だった。まぁ妥当だろう。

 しかしこれであの島が「モンスターの『王』」の影響であんな形になっている事が確定だ。分かってたけど。だって他にいないだろ、あんな事やりそうな存在。

 ともあれそういう事なので、ちょっとずつ様子を見ながら、島の外からの攻撃も加えていく予定になったらしい。今は次の召喚者プレイヤーが突入した直後なので、その次だな。


「じわじわ先端から削った場合と、大火力で根元からへし折った場合では反応が変わる可能性もありますからね。どっちにしろ、あの島は最終的に消し飛ばす可能性も高くなりましたが」

『それは最終手段な』


 分かってるよ。一定以上の火力にだけ反応するとかいう仕掛けがあったら大惨事になりかねないし、もし反射みたいな能力があったらそれを相殺するお仕事があるからね。私はまだ当分こうやって待機だ。

 ……正直、召喚者プレイヤーが退避しだい最大の一撃を叩き込みたくはあるが、もうちょっと我慢だな。司令部の邪魔をするのは良くないから。




 そこからしばらくして次に島へ上陸した召喚者プレイヤーも撤収し、島の外から主にトゲトゲ部分を狙って攻撃が行われた。

 その結果分かったのは、どうやらあのトゲトゲは高い魔法防御を持っている、もしくは魔法に対する特殊防御があるらしく、物理以外の攻撃がほとんど効果を表さないという事だ。

 またその強度は島の中心から離れるほど脆くなるらしく、島の端にあるトゲと中央のトゲでは、折るまでに必要な攻撃に雲泥の差があった。


「これ、もしかして中心となっている何かは恐ろしく丈夫なのでは?」

『かも知れないな。ある意味あそこまで防御を固めてるんだから、よほど丈夫なのは確かだろ』


 という事で現在、大きなトゲを半分ぐらいに割った場所を臨時のドラゴンポートとして、物理打撃が得意な召喚者プレイヤーと竜族の人達が、島の中央を目指して障害物を排除して行っているところだ。……上から見る限りでは動きが鈍ったように見えないから、ステータスが下がるような事はないんだろうか。

 しかしそうなると、今展開されているこの領域スキル相当の能力は何なんだ? という疑問が浮かぶ。そう、相変わらず見えてるんだよね、あの陽炎みたいなの。

 司令部からの情報にも、島に上陸して向こうの領域スキル相当の能力圏内に入ると、召喚者特典大神の加護による連絡手段が使えなくなった、とあるが、それ以外には何もない。まぁ、だから竜族の人達が上陸に加わったんだろうけど。


「通信妨害に特化した領域スキル。……というのも中途半端なような気がしますし。そもそも今までも、通信妨害があるところ弱体化有りでしたし……」

『どうした、お嬢』

「相手の展開している力場の効果がちょっと引っかかってまして。妨害が発生している割に、皆さんの動きがいつも通りだな、と」

『……言われてみればそれもそうだな。連絡が取れなくなってるって事は、少なくとも大神の加護には影響が出てるって事だから、なんか動き辛くなっててもおかしくないのか』

「前回はそうでしたからね」


 まぁ相手の領域にもかかわらずいつも通り動ける、っていうのは、「遍く染める異界の僭王」の時もそうと言えばそうだ。

 ……ただあの時はあの時で、相手の領域とその外を区切る、という力によって連絡が断たれていただけであり、内部では普通にやり取りできてたからな。司令部からの情報では、島に上陸した召喚者プレイヤー同士での連絡がついたかどうかは分からない。

 なんだろうな、この引っかかり。……一応カバーさんに相談しておくか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る