第1097話 38枚目:方針変更

「しかし、何も見つかりませんね……」

『海の方でも何も見つからないんだってな。結構この島の周りにも色々作ってるみたいだが』

「流石に広い海の中を探索するには足りませんよ。どこまでいっても島1つ分ですし」


 だから他の島を探してるんだが、いい感じの島が見つからないらしい。そうだね。島の大きさや形は多少妥協できても、迎撃ポイントの設営まで含めたら条件は厳しくなるよね。

 そういう訳で、最初の島での戦いに力を入れる召喚者プレイヤーは変わらず多い。まぁ、少しでもモンスターを減らす必要があるからな。その為の、戦える場所がここ以外に無いんだからしょうがない、か?

 もちろん私も領域スキルを(普通に)展開しつつ魔法を叩き込んでモンスターを纏めて吹き飛ばしているんだが、いくら叩いても減った気がしないんだよな。さてどうしたものか。


「流石に海を凍らせるとエルルが怒りますし」

『当たり前だ。第一こんな暖かい海に氷の塊なんか作ってみろ、周りへの影響がどうなるかちょっと考えれば分かるだろ』

「だからやってないじゃないですか」


 同じく高波が襲ってくる可能性が高いって事で、隕石系を始めとした衝撃の強い魔法も使っていない。後方からの支援に徹してるぞ? 大人しくしてるじゃないか。皇女らしいかと言われると目をそらさざるを得ないが。

 ともあれそんな状況が続いて、2週間のイベント期間が半分を切れば、司令部だって対策をする為に動く。具体的には、島の捜索から方針を変更するって事だ。まぁいくら探しても無いもんは無い、という事実は変わらない。別方向のアプローチが必要だ。

 で、実際どうするかっていうと。まぁ……無いなら作ればいい。


「という事でお仕事の時間ですね」

「結局どうするんだ?」

「島の周りに作っていた足場をある程度塊のまま予定海域まで船で牽引。船は近づけるものの水面より下にある時間の方が長い岩礁地帯に設置して、島に見立てるそうです」

「…………。召喚者も大抵力業を使うな?」

「他に方法が無ければ力業も使うと思いますよ」


 私のやる事は、「皇竜の御旗」を使って領域スキルを使う事で、海の上と下を同時にその範囲に収め、島と見立てて防衛できる体制を整えるまで召喚者プレイヤー優位の空間を維持する事だ。

 もちろんその後はそこにとどまり、種族特性で周囲を援護する事となる。迎撃ポイントであり防衛ラインである足場を大量に持って行く為、元となるこちらの島の防衛力も下がってしまうが、それは「第一候補」とネレイちゃんが領域スキルを展開して援護するようだ。


「って事は、お嬢は今回海面近くを移動する事になるのか」

「海中までを範囲に含めようと思えば、そうなりますね。移動した後、島が拠点として機能し始めるまでは、高くても船の高さに居る必要があります」

「上へ逃げられないんだな……」


 そうだね。モンスターの群れは海の中にいるから、下から狙われるっていう危険と隣り合わせだ。海中戦力の人達次第であり、その海中戦力の人達にどれくらい余裕が出来るかは、空中戦力の人達次第だ。


「とはいえ、領域スキルの範囲はある程度動かせますから、緊急避難ぐらいは問題ないと思いますよ」

「そこまで寄られてるって時点でダメなんだからな?」


 相手が相手だからある程度は仕方ないと思うんだけどな。なお、竜族の人達は連戦が続いていてもちゃんと交代も休憩もしているし、神の加護と祝福種族スキルが入ったおかげで継戦能力が跳ね上がっているので、疲れで戦闘力が落ちてるって事は無い。

 ま、こういう非常時の手段はとりあえず用意するだけしておくものだ。私の場合、たぶん丸のみにされたところで、内側からぶち破って出てこれるだろうし。旗を持っていたらなおさら。

 ……そもそも飲み込まれるほど近づいた時点でモンスターにかかる負荷は大変な事になっているだろうし、私のそばからエルルが離れる事はまず無いだろうから、それこそレイドボス本体が突然襲撃して来たりしない限りは大丈夫だと思うんだけど。

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