第1050話 37枚目:一時撤退

 魔法で作った大きなそりに「拉ぎ停める異界の塞王の僕」に変えられた人達を乗せ、ルウとソフィーさん達が一緒に乗って護衛、3人の乗っていた馬相当の生き物にそりを引いてもらい、後のメンバーが周囲を並走して護衛、という形で移動を続ける事しばらく。

 オートマップ上では目印らしい目印が何もない為、割と本気でどこかでループしてないか不安になるほどの距離を爆走して、ようやく遠くに壁が見えてきた。

 最初に渦巻を描くように動きながらカバーさんが共鳴石の音叉を鳴らして反応を見て、辛うじて返答らしきものがあった方向へ進んでいたから、間違って奥に行っているのでは、という不安はなかったが、本当に広いなここ。


「というか、広い通路で出来た迷路部分よりも広いような。どうせ空間が歪んでるんでしょうけど」


 で、壁を見つけてからカバーさんが共鳴石の音叉を鳴らして、右方向に壁沿いを移動。これまた結構な距離を移動してから、ようやく上にあった迷路と同じくらい大きな道、というか、出入り口が見つかった。

 で、それなりに急だとはいえスロープになっていたから、問題なく駆け上がる事が出来た。……残骸が組み合わされた人形は追ってくるが、「拉ぎ停める異界の塞王の僕」は来ないか。っち。

 まぁその人形も、しばらく進めば引き離せたみたいだけど。いやしかし、流石に結構ハードだったな。


「ちぃ姫さん。この後の予定ですが、少しいいでしょうか?」

「はい、なんでしょう」


 流石にもう追撃はない、とみて、全体のスピードを落としたところで、そりの反対側にいたカバーさんが寄ってきた。この後の予定とな。

 というカバーさんによれば、この通路に入ってから、緊急事態用のベル型共鳴石の方なら司令部と連絡が取れたそうだ。まぁ間に、中継器になれる召喚者プレイヤーがたくさんいただろうからね。

 どうせ全体に広める事だしとそのまま推定地下の大部屋の事を伝え、現在脱出中という報告をしたらしい。もちろんそこにおける全域デバフ負荷の強さも、「拉ぎ停める異界の塞王の僕」に変えられた要救助者の事もだ。


「……という事で、それならいっそ瞬間的に動員できる召喚者プレイヤーの全員で、ちぃ姫さんの領域スキルで負荷が軽減できる間に、可能な限りの要救助者を助け出そう、という流れになりまして」

「あぁ、なるほど。早回しはするべきですからね」


 ならルウと「拉ぎ停める異界の塞王の僕」に変えられた人達をソフィーさん達にお任せして、私とエルルとニーアさんにカバーさんで再挑戦か。もちろんルイシャンも。ルピはそのままルウを送ってもらおう。

 まぁ再挑戦と言っても、私は中心で領域スキルを展開しているだけだろうけど。でもルイシャンとニーアさんとカバーさんがいるなら、さっきまでやってた連携回収は出来るかな。


「戦う人と回収して連れ出す人で手分けできれば、それだけでもかなり効率が上がるでしょうし」

「そうですね。それに、ここで一気に攻勢をかけておけば、その更に後の行動も多少は楽になるでしょうし」


 うん、と頷きを返すと、カバーさんはそのままそりの前へと移動していった。たぶんエルルに話に行ったのだろう。まぁ必要だもんな。たぶん納得してくれるとは思うけど。

 ……ていうか、私が召喚者プレイヤー集団の中心で大人しくしてるって事なんだから、むしろエルルとニーアさんの方が説得は簡単かもしれないな。若干解せぬところはあるけど、しょうがない。

 うん。攻略の加速をかけられるんならそれが一番だよな。正直、いつこの通路でできた迷路部分が超巨大なモンスターになるか、それまでの猶予がどれくらい残ってるか分からないんだし。

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