第1048話 37枚目:隠された先
当たり前のように途中の道幅とか着地とかは考えられておらず、対策なしだと結構なダメージが(主に馬相当の生き物に)入っていた筈だが、私達にはニーアさんがいるので。恐らく下向きに吸い込まれていった先で、しっかり軟着陸を決める事が出来た。
「ありがとうございます、ニーアさん。助かりました」
「いえいえ! 不測の事態は起こりうるものですから! ……危険な場所に自ら近づいていかれるのはやめてほしい部分がありますが!」
はははすまない。でもニーアさんも
さてそんな訳で全員揃って隠し通路の先に辿り着いた訳だが……なんというか、めっちゃ広いな。壁どころか天井も見えないってどうなってんだ。その上暗い。今までは構造物が光って明るかったけど、ここはそれも無いらしい。
ルイシャンが纏っている雷の光で足元を見る限り、材質的には同じようだ。つまり、陶器みたいな白いのっぺりした床だな。まぁ光ってないから別ものなんだろうけど。
「もしくは、光っているのはこちらの神々の干渉だった、とかでしょうか」
「そうかもしれませんね。しかし、随分な距離を落下したようです。共鳴石が反応しません。……あるいは、あちらの領域であるから封じられたか、ですが」
うーん、いよいよ連絡手段が無くなってしまったな。とはいえ、死に戻るつもりは一切ないけど。下に移動したのは分かってるんだから、ルイシャンに天井近くまで移動してもらってから、大火力を叩き込んでもいいんだし。
しかしまぁ、とりあえずは明かりをつけよう。って事で、結局なんだかんだと言いながら使っている、宿光石のランタンを点けてみた。まわりがどれくらい広いのか分からないので、シャッターは開けておこう。
そして明かりをつけて、改めて周囲を見回す。と。
「………………悪趣味、以外に言い方が見つかりませんね」
「全くだわ」
「価値観の違い、というには、あまりにも……」
良く言えば、試行錯誤の跡。悪く言えば、残骸の山。
恐らくはあの、嫋やかで涼し気な少女の姿になるまでの経過もしくは軌跡なのだろう。人の形をした何かのパーツ、と呼ぶべき何かがそこら中に散らばり、あちこちで山を作っていた。
人形ならではの無機質さと、材料もしくは出来の良さによる生々しさ。それが合わさって軽く地獄である。ただ、それだけなら私も悪趣味とまでは言わない。良い光景だとは死んでも言わないが、そこまで言い切った一番の理由は。
「他にもうちょっとやりようがあったでしょう。……無いから相互理解不可能な狂人なんでしょうけど」
居たからだ。その、残骸が広がる、とても広い空間の、奥に。
服も、肌も、髪も、目までが漂白されたように白い、嫋やかで涼し気な。指先までが磨き抜かれたように美しい、上品な仕草と穏やかな微笑みの少女が。日傘は片手で持っているが畳んで下におろし、にこにことこちらを見ている、他で出会ったものと全く変わらない姿が。
――
「さて。……どれが本物なんでしょうね?」
「今のところは不明ですね。……しかし、大半は今までと同様に要救助対象者である事も、恐らくは間違いがないかと」
「この状況この数を相手に倒しちゃいけないとは、中々に厳しい条件ですね!」
「けど、やるしかないんだろ。それに、倒してもよさそうな奴もいるし」
「確かにそうね。紛れられるとそれはそれで面倒そうだから、大火力は使わない方がいいかしら」
「そうですね。出来るだけ細かい攻撃を使っていきましょう。流石にここまで来て、この状態で、脱出できないって事も無い筈ですし」
「殴っちゃダメなノ?」
「最初に見えていた、女の子の形をしたやつはダメです。それ以外はいいですよ」
「分かっタ! よく狙うヨ!」
そんな会話をしている間に、周囲に転がっていた残骸が浮かび上がり、寄り集まり、あるいは転がり這いずって、かなり歪だが人形の形を成していく。うーん不気味。ホラーか?
ともあれ。流石にここが最奥だろう。まだワイアウ様に預ける以外に元の姿へ戻す方法は不明なんだが、まぁ本体の力はそこまで強くないし、しっかり拘束しておけば無力化は可能だ。
正直まだこんなに残ってたのかって感じだが、恐らくはここがラストスパートだろう。頑張っていこうか!
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