第1046話 37枚目:鍵を使う場所
司令部も時間的危機感は持っていたようで、私の行動にはすんなりと許可、というか、了承が返って来たらしい。そしてそのついでに「蝕み毒する異界の喰王」のイベントダンジョンでも似たようなスイッチが発見されたので、あちらもあちらで攻勢をかけるのだそうだ。
それだけではなく、司令部から内部への応援が来てくれるらしい。とはいえ合流するのは至難の業なので、ソフィーネさんの手にあるスイッチ、その裏面にある矢印が示す場所を探すんだそうだが。
「鍵そのものが無くても大丈夫なんですかね?」
「実際にそこを通るというより、目印代わりですね。ただの地形より、
「なるほど」
そういう事のようだ。確かに、何かしらの変化があったとして、それが分かりやすいとは限らない。移動しながらだと見落とす可能性は上がるだろう。そこを他の
それにこちらへモンスターが殺到しているという事は、他の場所は比較的にでも平和になっている筈だ。何せ、リソースには限りがあるんだから。
ただその場合問題なのが、矢印の示す方向をリアルタイムで伝え続ける必要があるって事なんだが……。
「これだけ長時間観察していれば、移動の法則ぐらいは分かりますので。ましてや相手は壁の中を移動しているという前提ですから、既に判明している通路の形を考えれば、数分に一度のやり取りでも十分現在位置は割り出せます」
……いっやー、頼もしいったらないね! どんな頭の作りしてんだろうな!(誉め言葉)
カバーさんというか、司令部というか、恐らく検証班の人達の本気にちょっと顔が引きつりそうになるが、まぁ、味方だし。うん。大丈夫だ何も問題はない。
という訳で、ほどよくソフィーネさんにも仕事が出来た状態で、直線通路に移動した為、前後から押し寄せてくるモンスターの群れを薙ぎ払い続ける事……えーと、ルウに投げる回復ポーションを出した時のメニュー表示で、2時間が経過した頃か。
「みっ、皆さん! たぶんですけど、こっちに来ています! 私から見て正面……たぶん、向かって右側の壁です!」
流石に詠唱中だったんで反応は出来なかったが、それが何を示すかなんて考えるまでもない。どうやら司令部の指示で応援に来てくれた
エルルとニーアさんも把握してくれたらしく、そちらの方向に対する火力が上がった。ここまでより壁の見える範囲が広がる。
一方私はというと、瞬間的にモンスターの群れを吹き飛ばす為の大技を準備していた。通路が繋がっているつくりの迷路だとはいえ、今いるここは直線通路のほぼど真ん中だ。結構な速度で動いているなら引き返すってことも無いだろうし。
「観測した
「そこそこ出してる車と同じくらいのスピードですか……普段なら絶対無理ですけど、それってつまり、突進してくる猪よりちょっと遅いぐらいって事ですよね?」
もちろん「普段」イコールリアルである。リアルでそんな事をしようというのは、まぁ、無理だな。もちろんソフィーネさんの中の人が格闘技を極めていたりすれば別かもしれないが。
が。ふうっ、と1つ息を吐いて馬相当の生き物から降りたソフィーネさんは、スイッチを持ったままで自己バフを重ねた様だ。
「だったら――やります。カバーさん、大体のカウントダウンだけお願いしますね」
「分かりました。恐らくあと1分ほどです。10秒前からカウント開始します」
「エルル、ルウ、聞きましたね!? 5秒前の時点で大技を撃ち込みますので、退避してください!」
「了解!」
「分かっタ!」
さて、一発勝負だな。このモンスターの群れを追跡していた
もちろん通路を迂回して後ろに回り込むぐらいはしているだろうが、それでも距離がある分追いつくのは難しいだろう。出来ないとは言わないが、タイムロスには違いない。
ま、心配はしてないけど。何せ緩くマイペースにやっていた人間種族……もちろん可愛いを探して旅をする関係上、強くはあっただろうが。ボリュームゾーンに属していたところから、気合と意地で実力を上げて、しまいには当時のエルルに一撃入れた人だぞ?
「任せました、ソフィーネさん」
「お任せ下さい!」
そんな人が、やるって言ったんだ。
だったらまぁ、信じるのが筋ってもんだろう。
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