第1040話 37枚目:最奥攻略

 できうる限りの準備はやった状態で迎えた、8月最後の土曜日。道中の迷路型モンスターはまだ残っているが、これは召喚者プレイヤーがその奥へ向かうときにまとめて片付ける予定となっている。

 そしてここまで来て神の力を流し込んでも、これまでほどの効果は無いだろうって事で、私もルイシャンに乗ってルウとニーアさん、エルルと共に突入して探索する側に回る事になった。

 ちなみにルウが一緒って事で、私が突入するのは「拉ぎ停める異界の塞王」の方のイベントダンジョンだ。物理打撃がより有効なのはこっちだから。


「よろしくお願いするっす、先輩!」

「よろしくお願いします、フライリーさん」


 ソフィーさん達は今回別のパーティとして行動するらしく、マリー達は流石にちょっと耐性が足りない、という事で、一緒に行くのはカバーさんとフライリーさんだ。ログイン時間は合わせてあるので、ほぼ目一杯行動できる筈である。

 パチパチとルイシャンも静電気を纏ってやる気十分だし、私は種族特性がある上に素の耐性がたぶん誰より高い。だから、移動スピード的な意味でも、耐性的な意味でも、私が一番奥に向かえるだろう。

 ま、ルウがどこまで耐えられるか分からないから、その辺はちゃんと加減するけど……と思っていると、どうやら司令部からゴーサインが出たらしい。カバーさんが教えてくれた。


「それでは、無理をしない程度にガンガン行きましょう」

「それもなかなか矛盾してる条件っすけど、頑張るっすよー!」

「頑張るヨー!」

「出来れば無理はして頂きたくないのですが末姫様!」

「お嬢は言い出したら聞かないから、諦めろ」


 まぁ、気合の入れ方は人それぞれだ。(目逸らし)

 司令部から届いた作戦では、まず迷路へ突入して、召喚者プレイヤーで飽和状態にすることで迷路型モンスターの核を特定する。特定されて交戦状態に入れた核は、一番近くにいる召喚者プレイヤーが責任をもって倒す。

 核が戦闘状態の間は迷路の形も変わらないようなので、その間に他の召喚者プレイヤーは更に奥へと移動。その繰り返して迷路を突破し、その奥にある「広い空間」へと突入、探索に入る。


「そしてそこからは、出来るだけ細かく報告を入れつつ探索、と。まぁ未探索領域ですからね。手前を何とかする事に重点を置いていましたから、情報が足りないのは分かっていましたし」

「そうですね。それに、全体の広さから言ってもこの空間はそう広くはありません。恐らく、迷路型モンスター2体か3体分かと」


 流石にここで広い場所が待ってたらぐだるだろう。だから、厳しいのは広さやモンスター、罠というより、この全域デバフの筈だ。

 イベントダンジョンにおける空間は広いし、このままレイドボスとの戦闘に入れるだけの余裕は十分にある。だからこの広い廊下になっている、外から見たら恐らくは何らかの建物の形をしているこの場所が、そのままレイドボスになる可能性は、かなり高い。

 その前に探索し尽くして、出来れば最後の要救助対象の人を救助しておきたいんだよな。実際できるかどうかは別の話だが。


「それにしてもまぁしかし、事ここに至ってもまぁ景気の良い事です!」

「最後だから出し惜しみなし、って感じっすかねー!?」

「まぁもう温存しておく意味は無いでしょうからね! 流石にここまでされたら、危機感の1つぐらいは覚えるんじゃないでしょうか!」

「いや、どうだろうな。前の奴も、最後の最後まで自分の勝ちを疑ってなかっただろ」

「そう言われればそうですね。まぁ同じくらい、後に対する備えを残しているとは思えませんが」


 とりあえずはこの調子で、モンスターを撃破しながら他の召喚者プレイヤーと手分けして探索だ。迷路型モンスターは1体でも十分大きかった。それが数体分とはいえ、実際に歩き回るとなればかなり広い筈だし。

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