第1031話 37枚目:対策相談

 8月3度目の木曜日にも、扉に向けて大物がやってきたので、土日にあの大物ラッシュがある事が確定した。その時は例によって大技が連打されているところにまっすぐ突っ込んできたから、気が付いたら沈んでいたらしいけど。


『まぁ、何も無い訳がなかろうな』

「でしょうね」

『それに加えて、我はともかく、「第三候補」や「第五候補」が動けなくなるのが厳しいであろう。それ以外の救助は未だ大いに苦戦している筈である』


 という会話は「第一候補」とした訳だが、どうやら司令部は加速をかける方向で動くらしい。マジか。ちなみに何故「第五候補」かというと、フリアドにおいてバフ使いはデバフも扱えるからだ。

 まぁ私達が想定できるぐらいの事を司令部が考えていないというのは無いだろうし、その辺ちゃんと対策しているのだろう。たぶん。救出と言っても、脱出の時の運搬方法とデバフが必要なだけだし。

 ちなみに「拉ぎ停める異界の塞王」の方は博物館かドールハウスといった具合だった。周りにある人形に袋叩きにされる上、建物(?)自体が中にいる存在を全てまとめて挟み潰そうとしてくる。こちらも生きているのか、建物(?)にデバフを入れると動きが鈍くなるのだ。


「……。そういえば、ルディルを指名しての依頼が来てましたね」

『……なるほど。まず間違いなく最高峰の毒薬が作れるであろうからな』


 そして思い出す。そう言えばなんかルディルがめっちゃ忙しそうにしてた。どれくらいかというと、珍しくルディルの方から私にブラッシングをねだってくるくらい。

 もちろん心を込めて丁寧に全身ブラッシングしてあげたけども、ルディルは自分が小さいからブラッシングは面倒だと思っている節があって滅多にブラッシングさせてくれないのだ。いいからもっとブラッシングさせろ。照れ恥ずかしい顔も大変可愛かったけども。

 話がそれた。しかしそうか、ルディルが作った毒を持ち込んでデバフを付与するなら、まぁ、いけなくはないか。火力は足りているし、運搬方法も、人数が集まればなんとかできるだろうし。


「まぁ、勝機のない作戦を立てるとは思っていませんでしたけど。ちょっと意外でしたね。ここまでわかりやすく物量とは」

『そうでもあるまい。もとより大規模な動きにおいて、消耗品は大量に消費されるものだ。その管理ならお手の物であろう』


 なるほど。そう言われればそうだな。そもそも前の新人歓迎イベントでは、ド直球で物量戦だったし。


「……そういえば、「第一候補」」

『なんであるか、「第三候補」』

「今更なのですが、あの大量に作ってぶつけていた神の力が込められたアイテムですが、あれってどういうものだったんですか?」

『ふむ。……あぁ、以前のあれであるな。あれは本来、作成に相応の信仰値と特殊な生産スキルが必要な道具である。それを大神の加護があれば誰でも作れるように簡易化した為、あの一時しか作れなかったという訳であるよ』

「なるほど。という事は、その特殊な生産スキルがあれば作れるものなんですね」

『そうであるな。ただ、その特殊な生産スキルを習得するのが難しいであるのだが。何しろあれらは本来、神への奉納品である。よって、作り手も一流の内に限られる、という訳であるな』


 そういう事らしい。一流の職人、というだけならそれこそ『魔物商店街』の人達は習得していそうなものだが、相応の信仰値が必要で、そもそもが神に捧げるものを作るためのスキルなら習得していなくても不思議ではない。

 そしてそれが可能になる大神の加護。便利だなぁ。


『まぁ、稀に素質の強い者は意図せず持っていたりするのであるが』

「え、そうなんですか?」

『そうであるぞ。それ故に、主に信仰や神に親しみが強い者の中をしっかり探せば、ある程度の人数が見つかるかも知れぬのだが』

「でも、相応の信仰値が必要なんですよね?」

『何、相応と言っても作るものによるである。あの大量に作られていたものと同程度であれば、スキルさえあれば作れるであろうよ』


 なるほど。こう、練習というか、習作的な感じのものがあるようだ。そしてあの大量に作っていたものはそのレベル、と。

 それならカバーさんに頼んで探してもらうのも手かな。どうせこの調子だと、この情報は誰にも伝えてないんだろうし。


『……まぁ、種族スキルの後に「加工」とついたスキルである癖に、実際使う素材は全く違うものであるから、紛らわしく捨て置かれている可能性も高いのであるが』

「はい?」

『うむ?』


 ちょっと待て。今なんて言ったこのぬいぐるみ。ぬいぐるみじゃないけど。

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