第1006話 36枚目:順調進行

 生まれてすぐに他の雛を襲っていたひよこは「修羅鳥」という種族らしく、分類的にはただの鳥でありながら本能的に戦いに明け暮れる、珍しさで言えば確かに珍しい鳥だったようだ。

 これはちょっと飼えないな……ということで、その「修羅鳥」の雛は「第二候補」に譲渡した。喜んで引き取ってくれたので大丈夫だろう。……相性が良すぎて妙な突然変異を引き起こしそうだが、私は知らん。

 なお他のガチ、「手の平宝箱」から出てきたものは、種や雛、卵といった生産系のものが4割ぐらい、肥料や設備に追加できる道具など生産補助系のものが3割ぐらい、ステータスブーストポーション等の戦闘補助系のものが2割ぐらい、残りの1割は、過去のイベントアイテムや設備のアップグレード材料、一部設備そのものだったりなので、レア枠なのだろう。


「……召喚者にとってはそこまでいいものだったのか?」

「価値がある、という事は理解できますが、人によるとしか……」


 という情報が『アナンシの壺』から発表された途端、召喚者プレイヤー達が野良ダンジョンに殺到したらしい。うん。分からなくはないよ。過去のイベント限定装備とか、コレクター的には揃えたいよね。私も1つは手に入れて並べて飾って時々眺めてるし。

 あとは、施設の強化チャンスでもある。なかなか設備を増やすのは難しいからね。それにここまで運営から生産に力を入れてね、と推奨される環境で、育てる種類が増やせるチャンスには飛びつくだろう。

 とはいえ、流石にエルル達が暇になるほどの勢いで野良ダンジョンが駆逐されるとは思わなかったけど。人数の絶対数が増えたから、コレクターの比率はそのままでも人数自体は増えたんだろうか。


「まぁ、スタンピートの危険が大きく減ったのはいい事です。空間の歪みも消費が捗るはずですし」

「暇になった分は収穫を手伝わされてるけどな。……一応言っておくが、部隊の運用としては限りなく間違ってるんだぞ?」

「知ってますが、本気で手が足りないのも確かなんですよね」


 正直、贅沢な使い方をしてると思うよ。戦力的には。けど、手が足りないんだからしょうがないじゃないか。実際手伝ってくれてる現状で、まだ育ったり実ったりするのに収穫の手が間に合ってないんだから。

 納品に要求されるランクも上がってきたが、そちらはまだ余裕で通り越している。問題は種類が限定されている時だな。素材ならまだしも、加工品だとその加工方法から調べないといけないから。

 まぁ、方法さえわかれば加工自体は出来る、っていうのがうちの子のすごいところだな。


「流石にそろそろ、全体の方はともかく、個人やクランの納品は難しいものが増えてきたようですね。その分全体の進みが加速しているようですし」

「それは別にいいんじゃないか?」

「まぁいいんですけど」


 しかし本当に何に使うんだろうな。文字通り多種多様な素材からアイテムまで。あの空間異常をどうにかするとは聞いているが、捕らえるとなるとやはり亜空間化するのだろうか。

 ただ、普通に神の力を使うだけなら通常の捧げものでいい筈だ。わざわざ種類を限定して納品する必要はない。……納品っていうのもちょっと特殊な形だよな。捧げものじゃないんだから。

 まぁどちらにせよやる事は変わらない訳だが。


「……なんか、この作業に妙な既視感を覚えるのはなんでしょうね?」

「何がだ?」

「いえ、なんでもないんですけど」


 なーんか、こう、素材を集めて空間関係でどうこう……って、どっかでやったような覚えがあるんだが。気のせいか?


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