第966話 33枚目:それぞれの成果

 柱的なもので支えている部分を1ブロックとして、一番外側の円が最後の1ブロックになった時、それがそのまま巨大なモンスターにはなったが、イベント全体としてはまぁおおむね順調に進んでいると言っていいだろう。

 4月も後半に入る頃には、サポート体制が十分整っているお陰か、イベントアイテムの質もだいぶ上がって来た=火力が更に出るようになったし、一番外側の円を潰し切ったら、次の円に攻撃できるようになったし。


「分断する方向の砦も、無事に建設が進んでいるようですし」


 どうやら相手の砦にちょっかいを出している間なら、建設を続けても巨大なモンスターは出現しないらしい。と言う事で、「モンスターの『王』」達を分断する形になる砦の建設も順調だ。

 ……その分、最初の大陸が大変な事になっているようだが。


「一か所とは言え、封印が破られて中身が持ち去られたとか、不安しかないんですよね……っ!!」


 それを聞いた時は、思わずエルルに乗せて貰って現場に急行しようかと思ったよ。エルル本人に止められたけど。ちなみに何が持ち去られたかと言うのは現在調査中だ。多分人じゃなくて物、神器の類だろうって言われてるけど。

 邪神の神器が邪神の信徒の手に渡るとか、不安しかないんだよなぁ……!!


「まだ言ってるのか、お嬢。他の場所は防衛できてるって話だろ」

「1個でも手に入ったらそこから仕掛け方がガラッと変わる可能性もあるんですよ?」

「それはそうだが、流石に完封できるとは思ってなかったんじゃないのか」

「……まぁ、それはそうですけども」


 流石に完全にしてやられたという訳ではなく、突入してきた『バッドエンド』所属の召喚者プレイヤーを結構な人数捕まえる事が出来たようだが……神器を持った召喚者プレイヤーは逃がしてしまったらしい。

 その知らせを受けて、北国の大陸でも警戒態勢が高まっている。何せ「恩寵洞窟」に直接つながる形で、邪神の儀式場が作られていたからね。今は浄化も済んでいるとは言え、火山の女神様がおかんむりだそうだ。


「持ち出された神器が何かにもよりますが、生贄目当ての事件が増えるでしょうし、そもそもの生贄に捧げる動きが分かり辛くなると思うんですよねぇ……」

「目立つ場所だけでも警戒するしかないな」


 それはそうなんだけども。




 という不安要素が爆誕したものの、とりあえずイベントとしては順調にいった。「モンスターの『王』」側の砦はどうやら3重の円になっていたようで、ラスト1つもどうにか攻略できつつある。

 奥、というか、本体に近付けば近付くほど難易度が上がるのは想定通り。モンスターの湧きに加えて、特殊能力、というか、超広範囲に展開するデバフが強まるのも想定内だ。

 なので気にせずガリガリと削っていき、「第一候補」の儀式により神の力が叩き込まれ、ようやく最後の円になっている壁型砦の一部が崩せた、の、だが。


「……。エルル、何があるか見えます?」

「見えないな。たぶん空間が歪んでるんだと思うが」

「ですよね」


 その向こうには、何と言うか、陽炎的にゆらゆらと空気が揺れているだけで、何もなかった。向こう側の壁型砦が見えているから、視界が遮られているとかいう事でもないんだろう。

 そして一部を崩したというのに、周囲のモンスターの湧きやばら撒かれる超広域デバフの弱体化が見られない。一応両脇に当たる部分の再生力は落ちているようだが、逆に言えば、壁型砦を全て壊し切っても変化は無いのだろう。

 そして今までのパターン的に、5月のイベントは亜空間でどうこうするパターンだ。と、言う事は。


「具体的にどうなるかは分かりませんが、空間の歪みを使っての亜空間で活動、あるいは、亜空間を経由して相手のリソースを削る、という形になりそうですね……」


 たぶん「拉ぎ停める異界の塞王」の方も同じパターンだろうし。……流石に、「モンスターの『王』」を2体同時に相手しつつ、遥か過去の「大きな傷」の相手まではさせられない、と、思いたいんだけどな。

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