第953話 32枚目:見つかったもの
でまぁ探索を進めていったわけだが、いくらさくさく進んでいると言ったって範囲は大陸。そして私のスキルによる安全圏かつ「第一候補」とセットの時でしか探索できない。となれば、まぁイベント期間中に探索し尽くすのは無理だ。
もちろんそれは運営だって分かっているだろうし、これもどうせ常駐タスクなのだろう。探索と相手の拠点を潰すのは基本だからね。今回の場合拠点と言うか、補充ポイントもしくは補給なんだろうけど。
それでも可能な限り「第一候補」とタイミングを合わせて、壁型の砦を作る位置を中心に、せっせと探索を進めて行った訳だが……その途中で、やなものを見つけてしまってさ。
「……エルル。前に上空から見た時、あんなものは無かったんですが」
「この探索を始めてから何回か空には上がったが、俺も見てない。新しく作られたか……向こうの力で隠されてたかだろ」
この大陸は、森が基本地形だ。だから探索するとなると、基本森の中を歩いて行く事になる。とは言え森人族(エルフ)の森みたいに巨大樹が乱立しているという事もなく、植生は緯度によってグラデーション的に変わるものの、基本的には普通の森だ。
なの、だが。
「学習したんですかねぇ……」
『で、あろうな。その上で、多少は危機感を覚えた……のであれば、まだ良いのであるが』
恐らく、円の半径で言うと外側から3分の1ほど行ったところだろう。もう壁型の砦を建てる範囲は探索し終わったのだが、可能な限り、少なくとも近場からは湧きスポットを無くしておかないと安心できないって事で、探索範囲を広げていたのだ。
そして広範囲デバフとしては、重力増加より体調不良の方が厄介である。最悪重力は気合で耐えて、本人が重く感じるだけなので、回収班を編成すればいい、と、私と「第一候補」が居ない間も(多少は)探索が進んでいるので、進んだのは南側となる。
で、そこに何があったかと言うとだな。
「肉の砦、と言うべきでしょうか。自爆装置とかありそうです」
『侵入したらそのまま取り込まれるというのはありそうであるな』
「というかあれ、そういう形なんじゃなくて、モンスターを集めてくっつけたみたいだな……」
……つまり、そういう事だ。急造感が凄いんだよな。
前衛芸術、と言い張れなくもない、だろうか……? という感じのそれは、しかし大きさだけなら確かにこちらの壁型の砦と遜色ないだろう。吹っ飛ばすのは骨が折れそうだし、肉の砦を構成しているモンスターが
それに加えて今もガンガン外にモンスターを吐き出しているので、内部に湧きスポットがある事も確定だ。全体の大きさを確認したいところだが、空から見えないとなると足で稼ぐしかない。
「こちらのものと同じように、海岸線まで続いているか。円の中心に当たる場所まで同心円状になっているか。どっちでしょうね」
『どちらにしても厄介であるが、海からも攻撃は試みているのであろう? であるなら、同心円状の方であろうな』
「てことは、一部を強行突破した所でどうしようもないどころか、死にに行くだけか。しかもあの大きさの上に、モンスターが居る限り直り続けると。……ひたすら大技を叩き込み続けても厳しいな」
「まぁ総力戦ですからね。とりあえず今回は探索であると同時に偵察なので、情報を持ち帰りましょうか」
と言う事で、その場から肉の砦のスクリーンショットを撮り、カバーさんへ送信する。まぁ「第一候補」もパストダウンさんに情報を送っているだろうし、周囲に居る
しかし、防衛戦の次は攻城戦か。いやまぁ、そりゃそうなるんだろうけどさ。あんな普通に厄介な要塞があるなんて思ってないじゃないか。むしろ耐久度が実質無限回復の砦とかどうやって削ればいいんだ。
それに、こっちにあるってことは、向こう……「拉ぎ停める異界の塞王」の方にも同じようなものはあるだろうし。攻城戦、となると、より厳しいのはあっちかも知れない。
「まぁどちらにせよ性質が悪いのは間違いありませんけど。……最悪、巨大な湖を作ってしまうのもやむなしですね」
『極論だが、まぁそれも致し方あるまいな。本当に他の手段が何も無ければ、であるが』
余波も大変な事になるだろうし、出来ればやりたくはない。……が。今までのイベントとか、運営の情報の出し方とか、難易度設定とか、そういうのを考えると、一応は用意しておいた方がいいよなぁ……。
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