第952話 32枚目:イベント開始

 どうやらエルル達はカバーさんから、周囲の状態などの情報を合わせてイベントのお知らせ大神からの託宣を聞く事にしたらしい。まぁ情報としてはそっちからの方が正確だろうし。

 で、部下の人、というか、副隊長な人と相談して部隊の方針を決定、私に伝えにきて動き始める、という感じになるようだ。なおその時うちの子もみんなで話を聞きに来る。

 なおそのタイミングで『アウセラー・クローネ』の他のメンバーから情報があれば共有されて、必要なら方針の変更が起こる。団体で動くとなったら情報の共有は大事だからね。で、そういう方針決定の後、私が何処にいるかと言うと。


「まぁ私の適性クラスはタンクですから、ヒーラーを守って最前線にいるのは何もおかしくないんですけどね?」

「出来れば一番後ろで大人しくしててほしいんだがな」

『今回は状況と適性が、な。それに、探索と言うものは広範囲に渡って行うものである』

「……それは、そうなんだが……」


 エルル指揮下の元第7番隊の人達に守られる形で、相変わらず本人デフォルメのぬいぐるみに「乗って」いる「第一候補」を抱え、最前線に出てきていた。

 もちろん大反対はあったんだが、ほら、私は種族特性に加えて【調律領域】と【王権領域】があるから。3重に重ねたら、実質動く儀式場になるみたいなんだよね。私の信仰値依存の。

 で。ほら、ボックス様って守ったり周囲からの影響をカットするのが得意だから。あと、「第一候補」も周囲に影響するスキルを持ってるみたいで、私が「第一候補」を抱えて簡単とは言え儀式状態に入ると、だな。


「隊長、モンスターがはい出てくる穴があったぞー。南東方向、そんな離れてないからすぐ行けるけど」

「周辺警戒しつつ周りの召喚者に伝達。俺らも移動だ」


 召喚者プレイヤーも住民も、普通に動けるようになる訳だ。なおデバフカットと領域スキルのバフは別のものである。なお私はちゃんと防御力重視って事で探検服を着ているぞ。

 てな訳で、カバーさん経由で元『本の虫』組に連絡が行き、そこから集められたトッププレイヤーの集団と一緒に探索を進めている。いやー、周りの動きが早い早い。効率の良い集団行動ってすごいね。みるみる地図が埋まっていく。

 ちなみに今までに見つかったのは、元不思議な土地に出現したのと同じ仕様のダンジョン、モンスターが出現し続ける魔法陣(もしくは穴)、触った召喚者プレイヤーがモンスターに変わる石柱等だ。


「こうやって出現元を削ったら、少しは攻撃の圧が緩みませんかね」

『どれほどあるかにもよるであろうが、無駄にはならぬよ。それにおそらく、こういう召喚拠点を作り変えるか核にする事で、あの巨大なモンスターは出現していたのであろう』

「なるほど。どっから湧いて出たのかと思ったら、こういうのがあった訳ですね。……今まで見つかっていなかったのは、移動できるって事でもあるでしょうし」

『で、あるな。まぁともあれ、これらを減らせば戦線の押し上げも楽になる。それに、その為の探索であり託宣だ。全体から見れば僅かずつであろうが、堅実に進めていくとしよう』


 と言う事で、相変わらずものすごい数のモンスターが出現する中、私は時々回復を飛ばしながら探索範囲の中心として歩き回っている。襲って来るモンスターの数が数だが、こちらも人数を用意してちゃんと交代している。

 特に召喚者プレイヤーの士気が高いな。……まぁ、去年の1月イベントでも、私のバフは仲間から結構な評価を受けている。その状態で数を相手に出来るんだから、テンションも上がるか。


「何度でも言うが、本来お嬢は奥に控えて報告を受けるだけにしておいて欲しいんだからな?」

「種族特性を含めて適材適所の結果です。だから大人しく歩いて時々回復するだけにしてるじゃないですか」

「前線に出るなと言ってるんだが……!」


 頭が痛そうにするエルルだが、それでも時々抜けてくるモンスターは文字通り一刀両断にしているんだよな。大太刀もだいぶ強化が進んで、頭の月の名前が変わったらしい。

 ここまでくると、振ったら即折れるとまではいかないようだ。早く私もその辺りまで行きたい。……相変わらずメイン武器の形が決まっていないんだけど。長物にも興味があるんだが、見栄え的には見た目相応の長さの剣なんだよな。


「安全かつ迅速に探索が終わればいいだけの話ですよ?」

「そうだがそうじゃない」


 ……あと。今までのパターンだと、4月と5月のどっちかには何かがある。そういう意味でも早回しはしておきたいし、安全に相手のリソースを削れるんならその方がいいに決まってるし。

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