第923話 29枚目:大詰め
主に素材と道具のレア度(あと、途中でアラーネアさんに先生になって貰った。いいの?)で超ハイペースなレベル上げをしていると言っても、満足いく出来になる頃には年末の声が聞こえてきていた。うーんギリギリ。
まぁでも本体を作ってしまえば後は各自で好きな所に好きなように着けてねって投げっぱなしで構わないので、ざかざか作っていく事にする。ちょっとでも性能を上げたいので、エルルの分は最後に回す事に。
「と思っていたら、本当にギリギリになりましたよね……」
「ギリギリでも間に合ったのかい姫さん」
「間に合わせました」
そして12月31日、大晦日がやってきた。くっ、現実の大掃除にあんなに時間が取られるとは……! それに加えて、雪像達や霊獣達も欲しがってる気配を察した時はどうなるかと思ったよ。
ちなみにエルルはとっくにインベントリや装備の整理を終えて、谷の周りに防衛陣地を作るのを手伝っている。エルルの部屋は置いておくことが決定しているので、大体の物はそこにある筈だ。
というか、全部本気で手放そうとしてたから、途中で説得したんだよな。……エルルは私の事を忘れるつもりなんですね……と寂しそうに呟いてみせただけだが、説得だ。
「間に合ったのだから結果オーライです」
「そう言えば姫さん、ボクもまだ貰ってないんだけど……」
「ニーアさんに【縁】の許可を貰って渡す時に、一緒に渡すつもりですよ」
「エルルリージェは?」
「谷に行って合流した時に話をしますから、その時にいなければエルルが最後ですね」
ちなみに、話自体は以前からしてみている。
手応え? ……エルルとサーニャについての話をしてみた時、ニーアさんの方から食いついて来たって時点でまぁ大体察せるよね。
そう言えば、その話をしてからしばらく、訓練場でニーアさんが現代竜族の人と模擬戦してるのをよく見るようになったんだけど、あれはなんだったんだろうか。
「でも、あの子もいい加減強いね。加護と祝福を正式に受けてから、速さだとボクらの中で一番じゃない? その速さを乗せた打撃も十分重いし」
「……サーニャが戦闘力を褒めるのは珍しいですね」
「そうかな?」
サーニャも大概戦闘力が高い、というか、戦闘力に関しては流石に負けられないと思っている節がある。だから、その分野に関して明確に「自分より上」と言うのは、結構珍しい。例えばうちの子とかぐらいだな。
……まぁ、元々スピードに関しては特化型か? と思うくらいだったし、それで加護と祝福抜きだったというのだから驚きなんだよな。その内、スキル無しで「それは残像だ」が出来るようになるんじゃないだろうか。
「ともあれ、移動しましょう。儀式が始まれば、谷の中には入れなくなるんですし」
「そうだね。エルルリージェにまだ渡してないんだったら、急いだほうが良さそうかな」
と言う訳で、神域ポータルを介してさくさくと移動。
なおこの年末は、例年同様に日付変更線前後の1時間ずつ、合計2時間が特殊ログイン時間となっている。ただし年末側の1時間は封印を解除する儀式が行われる為、
逆に封印の内部に戻るエルルは、谷の中にいなければならない。だからエルルに何かを渡そうと思うなら、年末のこの日がラストチャンスだ。
「で。その残り時間もかなり切羽詰まっている訳ですが、そのエルルはどこにいるんです?」
ニーアさんに改めて【縁】によるテイムを申し込み、それを受けて貰ってとても喜んでもらい、その流れでお揃いのアクセサリを渡して喜びの余りニーアさんが自分の鼻血に沈んでしまった、という騒ぎはあったが、それでもエルルは姿を見せなかった。
既に大半の
そして、その誰もエルルがどこにいるか把握していなかった。中に入って外に出ていないらしいので、谷の中に居るのは間違いないのだが。
「全く、相変わらずと言うか何と言うか。すみませんサーニャ、ニーアさんをよろしくお願いします」
「えっ姫さん!? 1人でいくの!?」
「谷の中なら、私は限りなく安全ですよ。エルルを探してさっと渡してさっと戻ってきます」
「いやうん、それはそうなんだろうけど!?」
……お揃いのアクセサリの話は知っている筈だし、順番に渡している所も見ているから、逃げたな。
何故、逃げる。いいから大人しく受け取っておけ! 記憶に対する保険でもあるんだから!
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