第914話 29枚目:思わぬ罠
公認の皇女となった私の居場所は大体常に公開されているものであり、それはもう仕方ない訳で、基本的にイベントが始まって以降は封じられた竜都がある谷に常駐する形となっている。
まぁそれでも、谷の近くに大神殿の跡があったのを再建してワープポイントを作ったから、妖精郷(現記念公園)も含めて行き来が便利になったのを幸い、ちょいちょいクランハウスである島に戻っていたりもした。
見た目は大神殿に出入りしてるだけだからね。パーティを組んでいても、一緒に入らなければ移動はしないし。
「本当はこれもあんまりよくないんだからな」
「バレなきゃ大丈夫ですし、時間は最低限にしていますよ?」
「そうじゃない……!」
と、エルルには怒られてしまったが、最低限でもルイルを送り届ける必要があったし、消耗品の補充と言う意味でもちょくちょく戻る事は必要だ。寝てる間の防犯としてもこっちの方がいいのは確定的に明らかってやつだし。
まぁ、流石に近衛隊の人達を連れてくる訳にはいかないから、ほとんどログアウトの為に戻って来るってだけになってるんだけど。ニーアさんも、あくまで親身になってくれる協力者だしな。
さてそれはそれとしてイベントの進捗だが……途中で、うちの研究施設にいる魔族の人達に応援を頼んだ、と言えば、その状態が分かるだろうか。
「元『本の虫』組の人達も、その後研究の方向に舵を切った調査検証クランも、何だったら各クランの検証係の人達が総出で協力した上で、「第一候補」によって直接神にお伺いが立てられる状態でこれですからね……」
そろそろ12月も残り半分を切るとなり、間に合うかこれ……? という感じなのだが、一応場所によって解析の難易度が変わり、簡単な場所だともうほぼ答えが出て、モンスターの群れに対する防衛準備に切り替わりつつあるらしい。
だからそういう場所から、より難易度の高い所に人的リソースは集中しつつある。そしてその難易度そのものは、中に封じられている追加戦力の強さによって変わるようだ。まぁ、強い相手を封じる為には、強力な封印が必要だろうし。
……お分かりだろうか。そうだよ。この封じられた竜都の封印が最高難易度だよ。未だに封印の仕組みの全容すら分からないってどうなってんだ。もちろん儀式の「理由」が消えてなくなってるのが一番大きいんだけど。
「儀式の行動そのものを全て教えてもらう事は出来ましたが、実際やってみる訳にはいきませんからね。魔力の流れの痕跡も、4年に一度ではかなり薄まっているでしょうし」
そんな訳で、大苦戦中である。で、その大苦戦中の中、私は野良ダンジョンの攻略をしていた訳だが、誰かと一緒に行動する事を絶対条件にしたお陰か、とりあえず今の所合流してからは迷子になっていないルイルが竜人族の人達を説得してくれたおかげもあって、谷の底に降りる許可が下りたらしい。
どうやら入り口はあの、【死体】時代に竜人族の人達とエンカウントした街の跡……ではなく、そこからかなり離れた場所にあったようだ。まぁ谷底にはモンスターも野生動物もいないから、ある意味安全ではあるので、距離がある程度なら問題無いんだけど。
なのだが。谷底にはその、ざっくざくと財宝が落ちていたというか広がっていた。私は何も考えず触れたり食べたりしていたし、竜人族の人達も何の影響もなかったらしいんだが、実は、これが罠だったようだ。
「しかし種族名に「竜」の字が入っている種族以外が触ったら、初見の状態異常が加算されるとは。しかも係数こそ小さいものの、死に戻っても解除されないステータスダウンとか」
……仕掛けたのはエキドナ様かな……。と、納得できてしまうので、それはともかく。
どうやらこちらもあの竜人族の人達が持っていた特殊スキルと同様、資格を持つ者が赦せば解除されるようだ。こっそり離れた所で私が「あなたを許します」と言ったら解除されたから。
しかしこのままでは探索が進まない、と言う事で、私に声がかかった訳だ。何せ私が動けば、この場に居る竜族には全員動いて貰えるからね。
「まぁ私はこうして、入り口の所で待機するばかりなんですけど」
……エルルが一度通った道は全部覚えていて、その上【測量】をいつの間にか習得して、物凄く詳細で正確な地図が書けるようになってたとか、聞いて無いんだよなー……。
折角の探索だったが、まぁエルルがすごいのなら仕方ない。しかし本当に何でも出来るな、あのエリート士官軍ドラゴンさんは。
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