第894話 28枚目:イベント進捗

 無意識で周囲に纏っている魔力を、身体の中に引っ込める感じで操作してみることしばらく。これってもしかして身体強化になっているのでは? とも思ったが、とりあえずオーラ的な物は収まった……と思いたい。

 なおその間に扉が開かれる事は無かったが、扉の方を向いて耳を澄ませていると大変バタバタしていたので、ニーアさんがぶっ倒れたのはかなり大事になっているようだ。


「(まぁそりゃそうか。現代竜族とは言え、立派な大人の耐性を貫通して魅力ステータスかわいいが刺さったって事だもんな)」


 なので更にしばらくして扉が開いた時、そこが大きな布で遮られていたのを見ても特に驚きは無かった。外に開くタイプの扉なので、そのまま外に出て布を被って下さい、って言われたよ。まぁ、見て倒れるなら、見なきゃいいのだ。って話になるわな。

 と言う事なので、一応【人化】してシーツお化けになり、そのまま布越しに手を引かれて誘導される。結構分厚い布らしく、何も見えない。誰かの手により少し床をこするぐらいの長さに素早く調節されているので、うっかり踏んで転ぶって事は無さそうだけど。

 で、しばらく歩いたところで扉を通った感じがして、周りに居た人が全員部屋の外へ出ていく感じがした。うん?


「お嬢、とりあえずしばらくその部屋で待っててくれ。俺らは外に居るから」

「あ、はい。分かりました」


 どうやら私の手を引いてくれていたのはエルルだったらしい。壁を隔てた感じの声が聞こえてきた。壁っていうか扉なんだろうけど。……そうか。現代竜族とはいえ【成熟体】のニーアさんがアウトだったから、エルルとサーニャも念の為私の姿を見ないようにしてるんだな。

 このシーツっぽい布は外していいんだろうか、と思ったが、不意打ちになったらダメだなと思ってそのままにしておく。手探りで少し移動すると、どうやら椅子っぽいものがあったので、そこに座って大人しくしておく。

 ……というか座って気付いたが、背が伸びてるな。なるほど、それで手を繋いでくれてたのがエルルだと分からなかったのか。今までと高さ感が違うから。


「一応スキルを確認……よしっ。ようやく【人化】のロックが外れましたね!」


 まぁ残り30レベルだが、既に姿に違和感はないんだよな。後は咄嗟の時に解けにくくなるだけだと聞いているが、まぁそれでもようやくロックのかかったスキルが完全になくなった。いやー、長かったな、ここまで……。

 体スキルも【成体】のレベルゼロになっている。ようやくマイナススキルもなくなったか。これで一応、ステータスにかかっていたマイナス補正は全部外れた筈だ。

 ……まぁ、そのマイナス補正が主に身体能力の方にかかっていて、それが外れたから魅力ステータスも跳ね上がり、ニーアさんをノックアウトさせた、っていうんなら、危険物扱いもやむなしだな。


「やはり「第五候補」に制御の方法を聞いておくんでした。……というか、部屋を移ったのだから連絡が取れますね?」

「今こっちで連絡して来て貰ってるから大人しくしててくれ」

「なるほど。分かりました」


 そういう事だったようだ。それならクランメンバー専用掲示板から、イベントの進捗状態でも見て待っていよう。

 カバーさん達頭脳陣によって書き込まれ、まとめられている情報によれば、元々発見ラッシュで見つかっていた場所が多いと言う事で、立ち入り禁止となっている不思議な土地の特定はとても順調に進んでいるようだ。

 なおその土地についての情報を集める方だが、こっちも想定通りというか提案通りというか、検証班の推測力と「第一候補」の直接神へお伺いを立てるというショートカットでゴリ押しているらしい。


「……まぁ、利権絡みの交渉なんてしてる暇はありませんからね……」


 ちなみに補填については、各種希少な素材や装備を持ち出しで当てているようだ。……そう言えばあったな。クランの共通倉庫に、野良ダンジョン産の誰も使わない装備が。希少な素材については、ボックス様の試練か、野良ダンジョンか、それともうちの畑か、どれだ?

 まぁそんな感じなので、場所自体の特定と、何故立ち入り禁止になったのかという由来の確認は進んでいるようだ。探索というか調査だけで、年末に向けての準備イベントだろうから、順調にいかなければ困るとも言うけど。

 ……ただ、問題があるとするなら。どうやら周辺からの聞き込みでは、その辺りの地域で見ない種族の目撃情報が出てくるらしい。だが、召喚者プレイヤーとその関係者がいくら探索しても、それっぽい種族の姿は確認できないらしいんだ。


「たぶん……あれもそう、ですよねぇ……」


 ここでざっとまとめられた情報を確認するが……うん。やっぱりあの、ドラゴニアン(仮称)の情報は無かった。私とエルルは姿を確認してるんだけどな。

 その話はしてあるし、進捗としては現在、その立ち入り禁止となっていて、実際不思議な力で立ち入る事が出来ない土地に入る方法を探しているらしい。もちろんあの谷も含む。

 で、あの谷の事を考えるに、恐らく封じられた「何か」に類する種族……多分大体の場合は魔物種族だろう。その、特定の種族でないと入れない……ん、じゃないかな……?

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