第892話 28枚目:有力候補
「末姫様、進化が始まったんですかっ!? あっホントだ、少々お待ちくださいね! 諸々の準備を整えてきますのでっ!!」
しばらく相談していると、どうやら無事(?)ニーアさんにも話が伝わったようだ。強制進化の待機中で身体は動かせないのだが、声というか音は聞こえるらしい。……諸々の準備って何だろう。
バン! と扉が開いて、すぐにまたバン! と閉じる音が聞こえたので、【人化】を解除した時と同様の俊敏さを全開に走っているのだろう。そのちょっと後を追いかける形で「いやだからちょっと落ち着くっすー!?」という声が聞こえたので、フライリーさんが追いかけてくれているようだ。
祭りになるんだろうか……とちょっと遠い目をしたくなりながら相談を続けた結果、候補はどうにか3択まで絞られた。
「(まさか「ロイヤル」がRとLで意味が違うのに同じ表記で混ざってるとか、こんなの完全に罠だろ運営……!)」
どうやら表記言語は設定から切り替えられたようで、一時的に表示を切り替えてみて判明したことだ。何で同じ種族名が2つあるんだろうと思ったんだよ。危なかった。ありがとうカバーさん。
で、実際残った選択肢だが、こちらとなる。
オールエレメンツ・ロイヤルドラゴン・シルバームーン
エンタイアエレメント・ロイヤルドラゴン・シルバームーン
エレメンツスピリット・ロイヤルドラゴン・シルバームーン
もちろんLではなくRの方なので、皇女という前提は動かない。最後にシルバームーンが付いているので「月たる姫」も動かない。その上で、オールとエンタイアとはどちらも「全部」を指す言葉らしいのだが、ニュアンス的な違いがあるのだそうだ。解説を受けたがよく分からなかった。
で、最後の1つは「第一候補」のおすすめだな。スピリットって入ってるから何か物理に弱くなりそう……と思ったのだが、どちらかというと、非実体に強くなる、という感じではないだろうか、との意見だった。
一応それぞれの種族名に対して【鑑定☆☆】は試みたのだが、どうやら強制進化中はスキルが使えないらしい。メニューが使えるだけ温情か。かと言って進化用のメニューは他の人には見えないらしく、誰かに【鑑定】してもらう、という事も出来ない。
「(たぶんだけど、どれを選んでも強みと弱みが違うんだろうな。いつものパターン的に)」
もちろん流石にエルルも皇族専用の進化ルートなんて知らないし、その辺聞けたかもしれないニーアさんは何かの準備に走り回っていて応答してくれない。とはいえ流石にお父様(仮)達に聞く訳にも行かないだろう。そもそも知らない可能性も高いし。
なので、こればかりは私が自分で考えて選ばなければならない訳だが……どーしよっかなー……!
「(まぁ、弱くはならない……筈だし。弱くなっても確実に別の強みは出来るだろうし。流石にいくらなんでもステータスに上限が設定されるなんて事は無いだろうから、最悪鍛え直せばいいんだけど)」
それに今の所、進化したら以後の行動が制限される、という話は聞いていない。スキルにはあるらしいんだけどね。こう、何々をしない代わりにこの能力を上げる、みたいに、自らに制限をかけて能力をアップさせる系のものが。
ただそれは個人のものであり、進化というのは種族的なものなので、そこまで強いデメリットあるいはリスクを内包するというのはちょっと不親切だろう。私は大分特殊だとしても、進化先の能力や特徴を、種族名だけで判断するのはかなり難しいし。
……通常進化なら【鑑定】する事で情報が出てきた可能性もあるが、それならそれで強制進化はその辺優しい……と、思いたい。
「お待たせしました末姫様! 進化部屋にお連れしますね!」
「ちょ、待っ、やべぇっす先輩! 進化部屋って言ってますけど周りからの影響を遮断するんで大神の加護特典が使えなくなるっす!!」
「だから安心して進化して頂くには最適なんじゃないですか! 邪魔が絶対に入らないように、しっかり警備させて頂きますので!」
とか悩んでいたら、タイムリミットがやって来た。どうやらそのまま運ばれて始めたようだ。ってちょっと待て、大神の加護特典が使えなくなるって!? 大体相談は終わったけどもそれはちょっと!
方向性は決まってたしもう選択肢は絞り切れたけども! 危ない、強制進化の待機状態だって気づいてすぐカバーさんに連絡入れてて良かった! もしこれが1人で悩んでる間にニーアさんが気づいてたら色々アウトだったぞ!?
と、とりあえず選択肢が絞り切れた事を掲示板に書き込んで、3択のどれかを選ぶつもりだとも書き込んで、えーとえーと、後なんかやり取りしておくことあったか!?
「(いや、すぐ進化して出て来ればいいだけの話なんだけ、あっ)」
……そして、そう考えている間に、ぶつっと電源を引っこ抜かれた画面のように掲示板の画面が閉じた。
ニーアさん、速いよ……知ってたけど……。
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