第890話 28枚目:必要儀式
クランメンバー専用掲示板に、一応「こうした方がいいのでは?」という疑問形で私の意見を書き込んでみると、あっさりと賛成多数で『アウセラー・クローネ』の方針が決定した。まぁ、だよな。
そこから一般の掲示板も見てみたが、イベントのバックストーリー通りの進行よりも、元『本の虫』組無双になる事を予想している書き込みが多い。まぁ、だよな(2回目)。
そりゃ今までの人間種族贔屓の神々がやらかしたあれこれ(一部ゲテモノピエロによる扇動も含むが)を考えれば、正面から交渉しようとは思わないだろう。もちろん真っ当な人もいるだろうが、元『本の虫』組ならそういう人には素直に協力を求めるでしょうし。
「因果応報って奴ですね。ざまぁ見ろというよりいい加減にしろという方が強いですけど」
「反省しろとまでは……いやまぁ思うっすけど、流石にそろそろ魔物種族だからってだけで敵対するのはどうかっすねぇ……」
ちなみに地道な活動により、一般住民単位であれば魔物種族だからというだけで排斥する動きはほとんど無くなっている。貴族とかのお偉いさんは知らないけど。
とはいえ、そういう交渉事で私の出番はない。というか、公式の皇女として認められた以上、姿を見せると余計に混乱されるだけだろう。なので特級戦力として、こちらの大陸に常駐している。戦線の押し上げと、神殿及び防壁型砦の建設は続いているしね。
で、そうやって大物が出てくるまで待機している私が何をしているかと言うと。
「――それではこれより、名付けの儀を執り行う」
本来は卵から孵った時にやるという、名前を付ける儀式を受けていた。ドレスも新調する事になったんだが、アラーネアさんが作ったもの以外の服を着るのは何気に初めてじゃないだろうか。
いやまぁ名前って言う物はとても大事だし、公認の皇女になったんだからそういうのはちゃんとしないといけないなっていうのは分かるけどね。というか、ニーアさんから事前に知らされてたし。
野良皇女が認知されてから内部時間だと結構経ってるような……と思ったが、そう言えばこのスピード感が普通なんだった。私が忙しいというか皇女らしくないだけだった。ちなみにこの儀式も本来のものと比べればものすごく略式になっているとの事(ニーアさん談)。
なお、元々卵から孵ったばかりの子供に対してやる儀式って事で、そんなに長くも無ければ主役である私がやる事も無い。ただ大人しく、竜皇様が“細き目の神々”へ私が生まれたことを報告する口上を聞きながらじっとしているだけだ。
……ティフォン様にもエキドナ様にも直接謁見したことがあるんだが、まぁそれはさておき。私の元々の名前を生かす形で、皇族風の名前になるとどうなるか、というと。
「――新たに血族へ連なる子の名は、ルミナルーシェ・ロア・ヴェヒタードラグ。蛇と竜に連なる我らの始祖よ、どうかこの子に祝福と加護を授け、その道行きを見守らん事を。この先進みゆく先を、幸え給え!」
これで略称が「ルミル」になるんだってさ。……なるほど、ルミナ様、とは言い辛いか。早口言葉になっちゃうな。噛みそう。というか、自己紹介で噛みそうになる名前はリアル苗字だけで十分だって言うのに。
とりあえず、私がフルネームで名乗るって時点でシリアスだったり真面目だったりする場面だろうから、そこで噛んだら色々台無しでは済まない。噛まないように練習をしっかりしておかないと……。
で、退室して普段着に着替えてからメニューを確認。お、メニューに表示される名前も変わってる。
「とは言え、私はほとんどの場合通り名であるちぃ姫と呼ばれますし、仲間からの呼び名は「第三候補」ですし、名前が変わった所であまり影響は無いんですけど」
「まぁ私達も、ルミル様というより末姫様とお呼びする事が多いと思いますが、それでも名前と言うのはとても大事な物ですので!」
まぁ間違いなく現在いる皇族の中では最年少だろうしな。現竜皇様は流石に新しい子供が増える程ではないがまだまだ現役みたいだから、ここから呼び名は変わらないだろう。
ちなみに、兄及び姉となる人達との顔合わせはとっくに済んでる。皆が皆して猫可愛がり状態だったので、まぁ、その、何と言うか、結局【才幼体】のままここまで来たのは正解だったんだろうな、って……。
残りレベル的にはかなり少ないのだが、どうもそのあとちょっとが進まなかったんだよな。他のスキルのレベルは上がるので、種族レベルが凄い事になっている。
「……。もしかして、正式に名前を付けて貰う事が進化条件だったりするんでしょうか」
とりあえずイベントは実質結果待ちだし、進化しても問題ないっちゃ問題ない、な?
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