第843話 25枚目:探索と問題

 さてまず「築城の小槌」による侵入経路の作成だが、一応上手くいったに分類してもいいんじゃないだろうか……? という感じの結果になった。

 というのも、まずお城と言うか、そこそこ設備の充実している砦は作れたんだ。建物が出来たから振り落とされるという事も無く、何気につるつる滑って落ちやすい「沈め捕える無温の氷晶」の背中に安全な場所が出来た。これは良い。

 で、しっかりと地下室とそこへの通路をイメージして、それは反映されていたんだが……どうやら継続的にダメージが入っていくらしいんだよな。異物として排除される事には違いが無いらしい。


「まぁ、時間制限がついているとは言え、内部への侵入経路とその直前の安全地帯が出来たのは良い事です」


 ちなみに【飛行】を使って「沈め捕える無温の氷晶」の口の中に砦を作ってみたら、すぐに噛み砕かれた。しっかりと魔力を込めて思いっきり大きなお城を作ったら、しばらく口を閉じれなくはなっていたけど、最終的には噛み砕かれたな。

 なので体内に「築城の小槌」で砦を作る事が可能な事も確認できた。もっとも、それがどれだけ持つかどうかは分からないけど。それはこれから確認していくしかないだろう。

 なお外からうっすら見えた建造物のような物は、「沈め捕える無温の氷晶」の内部を走る通路だったらしい。他にもあるかも知れないけど、内部を探索するのが正規ルートというのは間違いなさそうだ。


「そういえば、こいつは最初から体力バーが青いんですね」

「そう言われればそうだな」


 まぁ減ってるかどうかと言われたらさっぱり分からないんだけど。今? 口の中にお城を乱立させているよ。口が封じられるという事は、足元を調査する召喚者プレイヤーの邪魔が出来なくなるって事だからね。

 できればそのまま顎を外してしまえと思いながら、「竜鉄塊」へのリソース投入をちょっと抑え気味にしてガンガンお城を建設している。もちろんエルルが近くに居て、いつでも緊急脱出できるようにした上で、だけど。


「……そう言えばお嬢。確か、凍った物なら何でも砕けるハンマーとか無かったか?」

「ありますけど、他の人がほぼ同じ効果のハンマーを使った結果、魔力が足りなくてハンマーの方にダメージが入ったそうですよ」

「なるほど、それはダメだな」


 相手が氷の塊って事で、既に試してはみたらしいんだけどね。結果はこの通りって奴だ。流石にレイドボスを一撃死させるような性能はあっちゃダメだろう。元々がそこから派生したレイドボスの報酬だから、効果が通り辛くても疑問は無いし。

 とりあえず、私はこのまま巨大な氷で出来た狼の口を封じながら、その内部探索の進み具合に応じて砦、というか侵入経路を追加していくのがお仕事となる。後は、何かあって侵入経路が一気に壊された時のリカバリーか。

 しかし、体内(?)が安全に進める上にちゃんと通路があるって親切設計だな。「凍て喰らう無尽の雪像」にはそんなの無かったし。やはり難易度調節だろうか。


「……もしくは、通路自体が罠、とかですかね」


 自分でも疑り深くなってるなーとは思う。思うが、前例があり過ぎるから仕方ない。罠なんてなかったらそのまま攻略してしまえばいいんだし。

 流石にシステムは誤魔化せないから、青いバーが出てるって時点で、最初から本体にダメージが通る仕様にはなっている筈だ。……うん。流石にここまで来て、色の組み合わせを反転させてる、とかはない、と、思う。たぶん。

 ……後は未救出の住民が何処にいるかだが、順調に行くならこの巨大な氷でできた狼の何処かから見つかる筈だし。内部探索が正規ルートで通路まで用意してあるって事は、その先にいる筈だし。


「で、探索した先でギミックを解けば、外部からの大火力や神の力による攻撃が通るようになる、とかいう感じになるのが王道と言うか、鉄板ですよね……」


 特級戦力わたしの出番というか、火山の女神のしっかり鬱憤を晴らしておいてもらわないと後が怖いからな。元凶なんだからしっかりと的になって貰わなければ困る。

 ……ただ、ちょっと問題があるとすれば。既に想像がついている通り、この狼の中から住民の人達が見つからなかった場合と。



 レイドボスの名前に、「異界の」の文字が無かったから、もしかしなくてもまだ居るんじゃないかな……って事だ。

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