第823話 24枚目:探索経過
ダンジョン【酷寒の凍檻・封】に突入したのは日曜日の夜のログインだ。月曜日は平日であり、テスト直前最後の授業と言う事で、クラスも大変ピリピリしている。……まぁ高校3年生の、1学期期末試験だからね。
なので私も生存報告レベルでしかログインできていない訳だが、どうやら私はダンジョンの外に無理に出ず、内部にある仮称勾留フラグを剥がす部屋に常駐する事になったようだ。
と言うのも、まず一番大きい理由が、私の持つ領域型スキル【王権領域】。ダンジョン内部では、北国の大陸に居る動物神についてきて貰うと使って貰える特殊能力というものがあるのだが、これがその範囲内だと強化されるのだ。
「後はまぁ、この部屋自体が重要だから、エルルかサーニャに常駐してもらうには私が居続けるのが良いという事と、私の短い
私だって探索したいんだが、ここでゲームに集中してしまうと、後が大変な事になるからな……具体的には、今以上にゲームが出来なくなる。
10日程ゲームを我慢して今まで通りのログインを続けるか、ここで何日かいつものログインをして、それ以降のログイン時間が半分以下になるか、という選択だ。私の親はその辺きっちりしているので、マジで何らかの仕組みで時間に制限が付けられる。
「それだけは避けなければなりませんからね……」
さて私のリアル事情はともかく、クランメンバー専用掲示板で共有されているイベント状況だが、どうやらもう2ヵ所野良ダンジョンが発見されたようだ。どちらも名前は【酷寒の凍檻】の後ろに文字が付いている形であり、それぞれ「雪」と「凍」らしい。
現在分かっている野良ダンジョンの難易度としては、「氷」<「雪」<「凍」<「封」となっているらしいが、どうやらまだ1ヵ所か2ヵ所ぐらいは野良ダンジョンがあるのでは? というのが検証班の推測らしい。何でかは知らないが、なんかそれっぽい資料がどこかから出てきたんだろう。
このイベントは水曜日からスタートしているので、今週の火曜日が終わったら前半が終了だ。発見ペースとしては、まぁ、一応悪くは無い筈、だな? 多分。
「……まぁ、残りのイベントダンジョンの難易度にもよりますけど」
で、私が常駐している【酷寒の凍檻・封】だが、どうやらここは進行度が個人で管理されているらしい。具体的には、あの見た目に見えた8重の防壁、あれがやっぱり階層の数を表していて、その階層を抜けたかどうかの判定が
で、手前の階層を抜けなくては奥の階層に挑めない上に、兎の動物神の特殊能力で緊急脱出する(脱兎あたりから来ているのだろう)と、一番最初の階層から挑まなければならないそうだ。
そして階層を抜ける手段としては、ダンジョンをぐるっと回って鍵を集めるタイプ。そう、面倒くさいあれだ。幸いと言うべきか、その鍵は一度集めれば緊急脱出しても再度集める必要はない。
「2度目以降は最短コースを通っていけるという事ですね」
なお、鍵を集めなければ次の階層に行けないのだが、熊の動物神が同行してくれている場合は、1度なら鍵を集めていなくても次の階層に行けるらしい。まぁ何度も挑戦するなら鍵を集めた方が後が楽なんだが、それでも最短ルートを早く割り出せるって言うのは大きいな。
そして現在【酷寒の凍檻・封】の攻略状況は、5層を探索中だそうだ。全体の半分を越えた所で、ここで住民も対象となる小部屋のギミックが登場したらしい。あるだろうなとは思っていたが、やっぱりな。
……ただまぁ、ギミックの名前が不穏と言うか、想像通りというか……。
「……最初の層で出てきたギミックが「勾留室」って時点で何となく分かっていましたけど……」
2層目が「留置室」、3層目が「抑留室」、4層目が「収監前室」、5層目が「拘置室」と……うん。段々意味が悪化してるんだよな。牢獄の見た目からは想像通りなんだけどさ。
4層目に関してはちょっと法則が違うように見えるが、収監室だとおかしいから「収監の為の準備室」って意味って事なんだろうか。いずれにせよ、気持ちの良い意味ではない。
ちなみにギミックの内容としては、強制チーム分けからの総当たり勝ち抜き戦、というのは変わらないらしい。ただ奥に進むにつれて、武器縛りや属性縛りと言った条件が付け加えられるようだ。
「5層目のギミックに至っては、ステータスの差によって、ハンデという名の状態異常が強制付与されると来ましたか……」
今の所、部屋自体のギミックは罠扱いではないらしく、解除できないらしい。だから救済策として、動物神の方々にお供えしてお願いして運んでもらえれば部屋から出れる事と、階層の何処かにその部屋から出られない状態を解除する部屋がある事は確定しているとみてよさそうだ。
まぁ私はまだリアル事情で時間が取れないから、ログインしている間は【王権領域】を全力で展開しながらクランメンバー専用掲示板で最新情報を見る、ぐらいしか出来てないんだけど。
……早くテストが終わってほしいような、もうちょっと準備時間が欲しいような。
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