第799話 23枚目:雪雲対策

 運営のイベント難易度設定はいまさら言っても変わらないので、いかにして雪雲を処理できるかというのが問題だ。明日、つまり土曜日に入ったら、更に雪雲が増える……モンスターを討伐するスピードは上がるんだから。

 とりあえず私が作った巨大な氷は、現在こちらの大陸に残っている召喚者プレイヤーが総出で氷のブロックとして削り出し、防衛陣地の増築に使っているらしい。それでも大きさが大きさなので、相当かかりそうとの事だが。

 とは言え、現在のペースではあっという間にまた敵性のある雷が発生するだろう。私が開けた大穴も、既に半分ぐらいになっているし。困ったな。


「と言っても、雪雲が大陸の上にある以上、氷の塊は大陸の上に落ちますしね。かといって、海の方へ弾けばそれはそれで高波が発生してしまいますし、その後も邪魔です」


 せめてもの時間稼ぎで水属性の初期魔法を連打し、そこそこの大きさの氷の塊を落としてはいるが、まぁ焼け石に水だろう。いっそ一定範囲の気温を下げる魔法を広域展開して、雪の形で落としてしまうか? でもそれだと除雪が間に合わないな。

 んんー、と考えていると、カバーさんからのウィスパーが届いた。……うん? 雲に対して各属性の魔法を撃ってみて欲しい? 竜都の西側に移動して? まぁ確かにあそこが一番被害が出ないだろうけど。

 雪雲の下に移動して、そのまま場所を調節する。そこから飛び上がって雪雲の上に戻り、一定間隔で各属性の魔法を雪雲に対して撃ち込んでみた。もちろん貫通する系統の奴はなしだ。着弾してその場で爆発する奴にした。


『ちぃ姫さん、ありがとうございます。ところで、4番目に撃った属性は何でしたでしょうか?』

『あれは火属性ですね』

『ありがとうございます。では、8番目に撃った属性は何でしたでしょうか?』

『そっちは氷属性です』

『なるほど、ありがとうございます』


 どうやらその2つの属性で何か変化があったらしい。雲の上からでは何も分からなかったけど。

 しばらくするとカバーさんからメールが来て、氷属性の魔法だとドカ雪が降って、火属性の魔法だと雨が降ったらしい。そうなるんだ? 魔法の作用なのか、雪雲自体が何か違うのかは分からないけど。

 まぁそういう結果が出たので、司令部は「第一候補」にも相談して、雪雲を雨とドカ雪の形で消費する方向になったのだそうだ。何故ここで「第一候補」が出てくるのかと言うと、ほら、雨を降らせるなら、下が池や湖だった方が良いじゃない?


「で、ワイアウ様の出番になる訳ですね」


 つまり、以前ひょうたんに詰まっていた女神様が活躍する訳だ。まぁ、あの方がこの大陸北側における水の流れを司ってるようなもんだからなぁ。ドカ雪の方は雪玉を作る場所の近くで降らせるんだろうから加減も必要だし、逆に雨の方は川を伝って海に流してしまえばいいから遠慮が要らない。

 てことは、『魔女の箒』の人達が雪担当で、私が雨担当って事になる筈だ。なら神様の協力を仰ぐのは何も間違ってないんだよな。主にその規模の上限と周辺への配慮に関して。

 それにこれがファンタジー世界の不思議で、北国であっても割と雨は降るらしい。何故かって言うと、湧き水タイプじゃなくて、ため池タイプの湖がそこそこあるらしいんだ。検証班によれば。


「で、その辺りの連絡係に、精霊さんが来る筈、と……」


 メールを閉じて周りを見回すと、北の方からぷかぷかと、飛ぶというより漂う感じでコップぐらいの水の塊がやって来るのが見えた。あれだな。たぶん。

 精霊さんに守りをかけて貰う時点で【魔力練化】はOFFにしているので、こちらから近寄って迎えに行く。そのまま話を聞いてみると、この水の塊が案内役兼連絡係の水の精霊さんで良いらしい。

 ぷかぷかと浮いたまま矢印の形になってくれたので、この方向に進めばいいようだ。


「さて問題は、どれくらい降らせてもいいかですが……継続性と削るペースを考えると、風の足場に火属性の壁魔法でも設置すればいいですかね?」


 流石に水がそのまま浮いている形の精霊さんを捕まえて高速移動する訳にも行かず、移動はのんびりしたものになる。まぁ出力は高すぎて困るぐらいだから、多分大丈夫だろう。

 ……明日までに何とかなるといいな? 何とかするつもりではあるけど。

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