第789話 23枚目:対策と結果

 とりあえずカトリナちゃんと護衛の人達には、色々な諸事情で現在厳戒態勢で、罠とかが仕掛けまくってある上に、急な事だったからお客様に反応しないように出来ていない事を説明し、不用意に出歩かないように何度も念を押しておいた。

 かなり不満げな護衛の人達だったが、中には私基準の威力の罠もあるから本当に気を付けるように、と言ったらざっと顔色を変えて何度も頷いていたから、まぁ大丈夫だろう。嘘は言っていないし。


「いやー、あの爆発騒ぎで終わりとは思ってなかったけど、こうくるかー!」

「全くです。何かやってるとは思っていましたが、最初の大陸の方だとは」

「つってこっちに集中したらあっちで何かやらかすよな!」

「でしょうね。全く面倒な」


 で、大急ぎで戻って来てくれた「第四候補」と共にカトリナちゃんと護衛の人達が快適に過ごせるように客室及びその周辺に手を入れる。具体的には私のリソースで「第四候補」がドールを作って、食事の準備や動いていい範囲の案内が出来るようにした。

 動いていい範囲は、基本的には奥に移動してもらった客間とその周辺だ。部屋を複数使えるようにすることで、ストレッチ程度なら身体を動かせるようになった筈である。

 他にも「第一候補」に指示を仰ぎながら簡易祭壇を設置した祈る為の部屋を用意したり、後は神獣親子のお世話用品だな。何せ基本動物なので、人間用の設備だけでは足りないのだ。


「……ところで「第四候補」」

「うん? どした?」

「あれ、白鳥でしたよね?」

「白鳥だったな! ちょっと小さかったけど!」

「【鑑定】通りました?」

「通んなかった!!」


 ただ、その神獣がまぁ、うん。ちょっと思うところある種類だっただけで。カトリナちゃんは親子で、つまり番と雛とが入った籠を抱えていたようなので、多分大丈夫だとは思うんだけど。

 一応部屋についている簡単なお風呂の1つを水鳥用のプールとして使えるようにしておいたので、普段はそこに放しておけばいいんじゃないかな。もちろん食事は人間用と白鳥用の両方を用意してと。

 後は、何か不満や要望があったら時用にメモを備え付けておいて、何かあったらドールに案内させて書いて貰えばいいだろう。流石に何年も居座るつもりじゃないだろうし。


「……流石に数ヶ月で立て直せますよね?」

「それはリアルで? 内部時間で?」

「内部時間で。だってリアル8月に入ったらどうしようもなくなりますし」

「確かに。流石に何とかなると思いたいとこだ!」


 恐らく8月には次の大陸に行く為の大一番がある。だから、それまでには何とか解決して帰って貰いたいんだが……今回は純粋な破壊工作だからな。散り散りになったという他の偉い人達の動き方次第みたいなところもあるだろうし、そもそもカトリナちゃんと神獣の白鳥が無事だって事をどうやって伝えるんだって話でもある。

 連絡自体はカバーさん達がどうにかしてくれるだろうが、「第一候補」も北国の大陸で忙しくしてるしな。かと言って、カトリナちゃん達の警護の為だけにエルルかサーニャを呼び戻す訳にはいかない。巨大な流氷がいよいよどうしようもなくなるから。


「ほんっとうに、こっちが最大級に嫌がるタイミングで仕掛けてくるんですよね」

「戦略的には大正解なのがまたな!!」


 とりあえず相談の結果、私の所ではショーナさんを呼び戻し、「第五候補」からは元海賊の人達を呼び戻して警戒に当たって貰う事にした。もちろん交代制で、その順番も今カバーさん達が考えてくれている筈だ。

 もちろん私の方から、各島にいる霊獣と属性精、及び竜族の人達への事情説明はした上でだ。何気にセキュリティとして優秀なんだよな、属性精達。霊獣とタッグ組めばそこそこ強い魔法みたいなものが使えるっぽいし。やっぱり根っこが精霊なのか、無限魔力だし。

 もちろんその後でルールにも確認しに行ったし、とりあえず出た結果を受け取りに行った研究所でも説明をしておく。魔族の人達も、研究がメインとは言え、大抵の相手なら自衛ぐらいは出来るから。


「で、これが液体火薬の結果と。ありがとうございます」

「いやぁ、中々これはこれで興味深い結果となりましたので」


 ざっくり特性と特徴、あとは使われている可能性の高い材料が書き連ねられた紙の束を受け取る。これをカバーさん達に届けるのが今回の本題だ。

 ……なるほど、他の物、特に果汁を混ぜると著しく劣化するのか。面白い特徴があるな。後は、かなり高純度でないと爆発しなくなる。かと言って、そのまま飲んでも赤ん坊でもない限りは腹を下す程度の毒性しかない。これなら飲み物への混入は考えなくて大丈夫かな。

 その代わり匂いも味もしないし、日光では劣化しない。保存性は抜群だし、紛れ込ませるのにはうってつけって訳だな。そして何より、その爆発力が問題だ。


「……近くにあれば連鎖して爆発する上に、一定時間内に爆発した量が多ければ多い程威力が上がっていくとか……」


 どうやらコンボ能力のある火薬だったようだ。ちょっと何を言っているのか自分でも分からないが、これが一番端的だろう。多分。

 さて、それじゃ北国の大陸に戻ろう。……そろそろ、巨大な流氷も岸に流れ着く頃だ。

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