第783話 23枚目:爆発の原因
そこから内部時間で2時間ほどすれば、北国の大陸北側の防衛陣地は、クレーターをある種の緩衝地帯とする事で再構築が完了したようだ。エルルとサーニャが【人化】を解いて大陸南側に迫る巨大な流氷へと向かうのが見えた。
となると、私も生産作業に戻るべきかと思ったのだが、とりあえず氷の大地付近まで戻った時にお願いされたのは、上空から巨大な流氷に、「必凍状態」を付与する雪玉を投げつけたらどうなるのか確認して欲しい、との事だった。
まぁ確かにまだ残ってるし、魔法とは違うから、うまくいけば超遠距離から削れるけども。と思いつつ、インベントリから単独で1個を取り出して振りかぶり、投げつける。うん、流石私。白いレーザーみたいに雪玉が飛んでった。
「おわっ!?」
……そして氷の塊になって、跳ね返って来た。そうなる?
空気の足場を蹴って緊急回避したが、一体あの氷の塊は何処まで飛んで行ったのか。……とりあえず、氷の大地の更に遥か向こうまで飛んで行ったので、現状
恐らく雪玉の反射を回避して巨大な流氷を見てみると、一応、雪玉をぶつけて凍った分は削れているようだ。しかし要回避か。私だけならステップ回避の訓練だ、と喜んで投げまくりにかかるところだが……。
『攻撃の反射を確認しました。やはり超遠距離からの手出しは控えた方が良さそうですね。ちぃ姫さん、ありがとうございました。一度戻って来ていただければと思います』
『分かりました。お札の生産に戻ればいいんですよね?』
『はい、よろしくお願いします』
まぁストップがかかるよな。仕方ない。
しかし謎なのは、氷のブロックにしか見えない爆弾のブロックだ。雪玉に見える起爆剤もだけど。一体どういう仕組みになってるんだ? もちろん、フリアドががっつりなファンタジーって事を考えると、それこそどんなトンデモ技術が出てきてもおかしくないんだけど。
とはいえ、あれだけ検証班の人達が色々クレーターの真ん中で調べていたんだ。流石に何の情報も無いって事は無いだろう。イベントが終わった辺りでカバーさんに聞いてみよう。
「しかし、仕掛けてきましたね。これで終わりとも思えませんし、警戒は必要……にしても。気のせいか、爆弾の試運転みたいな部分がある気がするような……」
引っ掛かる部分が無いと言えば嘘になる。嘘になるが、何が引っ掛かるかは分からないから言葉にしようがない。何せあのゲテモノピエロの狙いが分からないからな。こっちにとっての最悪って事以外は。
生産作業に入りながら一応クランメンバー専用掲示板を開いてみるが、まだあの爆弾ブロックの情報は載っていなかった。って事は、検証中か、それとも文字では残せない程ヤバい情報だったかのどっちかか。
と言う事は『アナンシの壺』のまとめページにも載ってないな。見れる相手に制限がかかる専用掲示板の方が詳しくて新しい情報が載ってるし。
「それにしても、中に何かが入ってるとか、屈折率を利用して誤魔化してるとかだったら、違和感の1つも覚える筈なんですけど。完全に氷でしたよね。検証班の人達の動きを見ても、他の氷のブロックと変わらない反応を見せていましたし」
とても気になる。主に嫌な予感がするって意味で。まぁあのゲテモノピエロが噛んでる時点で良い予感はしないんだけど。そもそも私が良く当たるのは悪い予感限定だ。もうちょっと良い予感だってしてもいい筈なんだけどな。
お札作成も流石に慣れたもので、軽く考え事をしながら程度ならミスはしなくなった。深く考え込んで、お札作成がついでになると時々間違えるけど。お札作成がメインの間は大丈夫だ。
氷のブロック。氷。でも爆発する。ってことは火薬だ。完全な氷が、爆薬として機能する。……うん。さっぱり分からん。
「そもそも、あの雪玉に似せたあの白いボールが何なんだって話ですしね」
あれをぶつけたら爆発していたから、あれがきっかけもしくはトリガーである事は間違いない。のだが、具体的にどうして爆発が起こっているかは遠目から見ているだけでは分からなかった。
ただ、他にはどんな魔法でも物理攻撃でも氷のままだったのが、あの白いボールをぶつけた時だけは爆発するという感じだったのは見えていた。と言う事は、やっぱりあの白いボールが特別なのだろう。
……うーん、やっぱりちょっと情報が足りないな。
「しかし、あの爆弾のブロックも、雪玉みたいな白いボールも、単独では脅威では無かった訳ですよね? だから普通に紛れ込んでいたんでしょうし。それが、爆弾のブロックに白いボールを投げつけた時だけ爆発する、と……」
大変制御が易しく便利になっているが、使い方が全力で悪いんだよな。それこそ鉱山の採掘とか建物の解体とかに使えばいいのに。もしくは災害で出来たがれきの除去。
ここまで制御できるんなら、素直にモンスターに対する武器の1つとして使ってもいい。大きさの割に強い爆発力があったようだから、それこそ20㎝四方ぐらいの氷のブロックでも十分な火力になるだろう。大きさに比例して爆発力が上がる、とかいう特徴が無ければ、だが。
……いや、氷は氷で使い辛いか。北国の大陸周辺でなければ、普通に溶けるだろうし。
「溶ける? いえ、氷なんだから溶けますよね? というか、水を凍らせたものが氷と呼ばれる訳ですから……」
うん? と自分の考えに引っ掛かりを覚え、口に出して整理していく。そりゃそうだ。水を凍らせたものが氷だ。シロップを凍らせたものも氷って呼ぶから、液体を凍らせればそれは全部氷になるよな?
「…………まさか」
もしかして。
とても単純に、安直に考えれば、だが。
『バッドエンド』は――――液体火薬の生成に成功した、のか?
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